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WRC:勝田貴元、ラリー・チリで2度目のWRC2制覇も「大きく成長しないとトップの選手とは戦えない」

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WRC:勝田貴元、ラリー・チリで2度目のWRC2制覇も「大きく成長しないとトップの選手とは戦えない」

 トヨタの『TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラム』により海外ラリー参戦中の勝田貴元が、WRC世界ラリー選手権初開催となるラリー・チリでWRC2クラスの優勝を飾った。

 WRC2はWRCのサポートシリーズであり、F1に対するFIA-F2に近い位置づけ。クルマはワールドラリーカー(WRカー)に次ぐパフォーマンスを備えるR5車両で、勝田は今年もフォード・フィエスタR5をドライブしている。

WRC:第6戦チリのWRC2制した勝田貴元「将来的にはより速く、そして力強く走れるようになる」

 勝田は本格参戦2年目だった2018年2月に、スノーイベントのラリー・スウェーデンで初優勝。今回のチリは、キャリア2度目のWRC2優勝となった。

 WRCとしての開催は初めてだが、ラリー・チリのステージはチリ国内選手権や2018年のWRC立候補イベントで過去に何度も使われている。

 そのため、勝田のライバルである多くの地元選手たちはステージを知り尽くしている。対する勝田はチリを訪れること自体が初めてであり、当然、ステージを走ったことはない。そのため、レッキで初めてチリの道を走行し、たった2回の低速走行でペースノートを完成させなければならなかった。

 しかし、勝田がレッキをおこなった際はステージのあちこちで濃い霧が発生し、コーナーの先をクリアに見通せない状況だった。

 それゆえ、レッキを終えた勝田は「正直、ペースノートの完成度に不安があります。ところどころに難しい“罠”のようなコーナーがあり、それを見落とすことなくきちんとノートに記すことができているのか、いまひとつ確信が持てていません」と、少し不安そうだった。

 とはいえ、チリのステージは森林地帯のスムーズなグラベルロードが主であり、全体的にハイスピードなコーナーが多く、フィンランド育ちともいえる勝田にとっては本来相性がいいはず。

 勝田は「路面が非常に荒れていたアルゼンチンよりは攻めた走りができると思いますので、今回はただ経験を積むだけでなく、しっかりと結果も求めていきたい」と展望を述べていた。

■2019年でもっとっも充実した内容だったラリー・チリ。一方でさらなる改善点も
 一部に霧がでるトリッキーなコンディションでスタートした注目のSS1、勝田はベストタイムでまずラリーをリードした。

 デイ1では計3本のベストタイムを刻んだが、午後のステージで硬めのハードタイヤを選んだことがマイナスに作用してしまう。充分なグリップを得られず、WRC2クラス2番手にとどまった。

 しかし、デイ2では本来のスピードを発揮し、6本のSSのうち、4本でベストタイムを刻むと首位に浮上した。地元の強豪アルベルト・ヘラーに12.8秒差をつけた。

 ラリー最終日も勝田はベストタイムで差をひろげ、その後、ヘラーのクラッシュアウトで勝利を決定づけた。最終的には全16本のSSのうち、8本のSSでベストタイムを記録。2番手に3分6秒という大差をつけて圧勝した。

 決して簡単ではない、むしろ難しいステージコンディションだったが、チリでの勝田の走りには一貫性があった。大きなミスはなく、路面に合わないハードコンパウンドを履いて充分なグリップが得られなかったときも、冷静さを失わずに遅れを最小限にとどめた。

 ラリー全体のマネージメントという点では非常に大きな成長が感じられ、今シーズン一番の充実した内容だったといえる。ただし、純粋なスピードに関してはさらなる改善が必要だ。

 それは、今季よりマニュファクチャラーが登録した選手が対象となる『WRC2プロ』というカテゴリーが新設されたためだ。このカテゴリーには強豪選手数名がエントリーしているが、いずれもマシンは勝田とおなじくR5車両であり、プロも含めたR5マシン全体の結果をみると勝田は4位。プロ優勝のカリ・ロバンペラとのタイム差は約5分40秒と大きく開いており、それを考えるとWRC2での優勝を手放しで喜ぶことはできない。

 その事実を誰よりも認識しているのは勝田自身だ。優勝を喜びながらも、「毎日、ステージのキャラクターが大きく変わりとても難しくて、多くの課題が見つかったラリーでした。さらに成長しなければ、トップクラスの選手とは戦えないと実感しました」と謙虚だった。

 勝田は、一部のステージではロバンペラや、元WRCワークスドライバーのマッズ・オストベルグに匹敵するタイムも出している。つまり、すでに一発の速さを備えていることは間違いない。

 その速いタイムをすべてのステージで安定してだせるかどうかが、彼らトップクラスの選手との違いであり、勝田にまだ足りていない部分である。

■もっとも重要なのはラリードライバーとしてどこまで成長できるか
 ステージで走行を見ていて感じたのは、勝田の走りがアンダーステア気味だったことだ。曲がらないクルマをなんとか曲げようと苦労しているように見えた。基本設計が古いフィエスタR5は、ライバルのシュコダ・ファビアR5や、シトロエンC3 R5と比べると、アンダーステアがやや強いといわれている。

 また、WRC2プロの面々がミシュランタイヤを履いていたのに対し、勝田はピレリタイヤを履く。昨年までグラベルラリーではミシュランを使っていたが、今季はタイヤが大きく変わり、その点でもやや苦労しているようだ。

勝田は、「たしかに、ピレリの良い部分をまだ完全には引き出すことができていません。今後はタイヤに対する理解を深め、性能をフルに引き出せるようになったら、もっと速く走れるようになるとおもいます。そういったタイヤの使い方やセッティングに関しても、これからさらに勉強していく必要があります」

 勝田の成長曲線は決して急激ではないが、確実に上を向いている。1戦ごとに着実な成長がみられ、結果もついてきている。

 今回の優勝でWRC2のドライバーズランキングでは2位に浮上した。しかし、勝田は「タイトル争いはそれほど重視していません」と言い切る。

 彼がもっとも重要だと考えているのは、今シーズンが終わった時点で、ラリードライバーとしてどこまで成長できているかだ。勝田の次なる戦いは、5月下旬のフィンランド国内選手権『リーヒマキ・ラリー』となる。

 このラリーで勝田は、トヨタ・ヤリスWRCによる今年2回目の参戦を果たす。前回はスノーイベントで、降り積もった深い雪が大きな抵抗となり、思うようにタイムが伸びないなかで辛勝した。

 グラベルイベントとなるリーヒマキ・ラリーでは、果たしてどのようなパフォーマンスを示すのか? リーヒマキ・ラリーにはライバルである若手フィンランド人のヤリ・フットネンも、ヒュンダイi20クーペWRCでの参戦を表明している。

 ワールドラリーカーによる対決。勝田にとっては負けられない1戦となる。

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