2021年12月20日、ダイハツは軽商用車の主力とされるアトレーとハイゼットカーゴが17年ぶりにフルモデルチェンジを行い、ハイゼットトラックもマイナーチェンジを実施した。
先代アトレーは、ハイゼットカーゴをベースに開発された5ナンバー車のワゴンだったが、新型は4ナンバーの商用車になった。初期のアトレーと同様、ハイゼットカーゴの上級シリーズに位置付けられる。そして後席の後部を天井のない荷台に変更したデッキバンにも、上級モデルのアトレーが用意される。
現代の「AE86」か!? カスタム好きに今なお愛されるダイハツ エッセ5つの魅力
今回は、発表会場に展示されていた、実車の新型アトレー/ハイゼットカーゴ/ハイゼットトラックに乗り込み、子細なチェックを行ったので解説していきたい。
文/渡辺陽一郎
写真/佐藤正勝
[gallink]
■なぜアトレーは5ナンバー乗用ワゴンから4ナンバー商用バンに回帰したのか?
5ナンバー乗用ワゴンから4ナンバー商用バン、ハイゼットカーゴの上級版となったアトレーの最上級グレードRS。車中泊などアウトドアブームを見据え、ラゲッジルームを重視した結果、4ナンバー商用バンとなった
ラゲッジ上部に注目、こんな上まで積めるんです。車体構造のスクエア化によりクラス最大の荷室長1915mm、荷室幅1410mm(4名乗車時)、荷室高1250mmを実現。最大積載量は2名乗車時350kg、4名乗車時250kg
Cピラー以降が荷台となるアトレーデッキバン。最大積載量は250kgで汚れモノなどの積載に便利
まずはハイゼットカーゴの上級シリーズに位置付けられるアトレーの最上級グレード、RSを確認したい。アトレーの外観はハイゼットカーゴと基本的に同じで、空間効率の優れた水平基調のデザインだ。
フロントマスクにはメッキグリルを装着した。外観の印象は、5ナンバー車として届け出される先代アトレーワゴンとほとんど変わらない。
バンパーは上下に分割され、下側を擦った時は個別に交換できる。修理費用を抑えることにも配慮した。
アトレーRSのインパネ。6.8インチと9インチの2つのディスプレイオーディオが選べる。ステレオカメラ装備の最新スマアシに進化
外観と同様、インパネの周辺も上質に仕上げた。ステアリングホイールなどにはメッキパーツも使われ、商用車という印象はない。
アトレーRSとアトレーデッキバンには、車間距離を自動制御できるアダプティブクルーズコントロールも装着され、このスイッチもステアリングホイールの右側部分に内蔵される。
インパネの両端にはカップホルダーが備わり、助手席の前側にはトレイと買い物袋などを引っ掛けるフックを装着した。全高が1890mmと高いので、頭上の空間も広く、フロントウインドウの上側にはオーバーヘッドシェルフも備わる。収納設備を豊富に採用した。
荷室を広げるために、従来型と同じくエンジンは前席の下に搭載している。この影響で前席は床と座面の間隔が離れており、運転姿勢としては、ペダルを上から踏み降ろす感覚になる。
アトレー、ハイゼットのフロントシートの座り心地は快適で着座位置は高い
シートの座り心地は、前席は快適だ。背もたれの下側と座面の後方を硬めに造り込み、乗員の着座姿勢も乱れにくい。
着座位置が相対的に高いので、インパネやサイドウインドウの下端は、ドライバーの視線に対して低めに抑えられる。そのために前後左右ともに視界が良い。
これはさまざまな軽商用車に共通する特徴だが、新型はボディサイドの上に向けた絞り込みを抑えたので、左右方向の広がり感覚も増している。先代型以上に開放的になった。
着座位置が高めだから、乗降性はタントなどの乗用車に比べると少し下がる。それでもシートの真下に前輪が位置するハイゼットトラックに比べると、乗り降りはしやすい。
着座位置が高いため、乗降性はタントなどに比べると少々悪い
先代のアトレーワゴンでは後席に座る乗員の膝先空間が握りコブシ3つ半だったが、ラゲッジ重視の商用バンになった新型アトレーでは、握りコブシ1つ少々に留まる
2列目シートを畳んだ状態の荷室長は1820mm、荷室幅は1410mm
アトレーで注意したいのは後席だ。乗用車から商用車に規格が変わったことで、足元空間が狭まった。商用車とするには、後席よりも荷室の面積を広く確保する必要があり、後席の取り付け位置が前寄りになるからだ。そのために足元空間が犠牲にされている。
身長170cmの大人4名が乗車した場合、5ナンバー車だった先代アトレーワゴンでは、後席に座る乗員の膝先空間が握りコブシ3つ半に達していた。それが新型アトレーでは、握りコブシ1つ少々に留まる。
しかもエンジンを前席の下に搭載して後輪を駆動するから、後席は前席と違って床が高い。先代型の後席では、足元空間が広いために足を前方へ投げ出す姿勢を取れたが、新型ではそれができない。膝が持ち上がって腰は落ち込み、膝を抱える窮屈な姿勢になる。乗員の大腿部は後席の座面から離れてしまう。
ハイゼットカーゴとアトレーは、ボディの側面とリアゲートの形状を変更した。ボディやドアパネルの上に向けた絞り込みを抑え、直立させることで、車内の上側の容量を拡大。ラゲッジ容量は1275L
後席の快適性よりもラゲッジの広さを優先したため、車中泊に最適な軽バンになった
なぜ後席が窮屈な4ナンバーの商用車に変更したのか。開発者に尋ねると以下のように返答された。
「後席を使うお客様の多くは、純粋な乗用車のタントを購入される。そのために先代アトレーワゴンの使われ方を見ると、90%のお客様は、後席を格納して荷室としていた。そうなるとアトレーも、ハイゼットカーゴと同様、350kgの最大積載量をアピールしたい。そこで後席が狭まっても4ナンバーの商用車に変更した」。
■車検期間が異なるので要注意
ただし4ナンバーの商用車には、後席が狭くなること以外の注意点もある。まず車検期間が異なる。軽乗用車は届け出が行われた後、最初の車検は3年後だが、軽商用車は2年後と短い。
小型/普通商用車と違って、車検を毎年受ける必要はないが、最初は違いが生じる。例えば購入後5年弱で売却する場合、軽乗用車なら車検を受けるのは1回だが、軽商用車では2回になる。
任意保険にも注意したい。保険によっては、商用車の場合、21歳/26歳未満不担保といった年齢条件を付帯できないことがある。
年齢条件によって保険料を引き下げたいユーザーは、年齢条件の有無による不利が生じないかを確認したい。その代わり軽自動車税は、自家用軽乗用車は年額1万800円だが、自家用軽商用車は5000円と安い。
身長170cmの筆者が寝っ転がってみた。フルフラットになるので車中泊の使い勝手は抜群
後席を格納する時は、ヘッドレストをはずして背もたれを前側に倒した後、前方へ落とし込むように格納する。そうすると平らな荷室が広がり、2名乗車時の荷室長は1820mm、荷室幅は1265mm、荷室高は1215mmとなる。
さらに新型では、前述の通りボディパネルの上に向けた絞り込みを抑えて、シートベルトの金具など、車内の出っ張りも減らした。
後席のサイドウインドウの開閉方法も、上下にスライドさせる方式から、ウインドウを外側へ少し張り出させる方式に変更した。これらの細かな変更により、荷室の側面や床の突起が抑えられ、大きな荷物の収納性が向上している。
後席のサイドウインドウが外側へ少し張り出させて開く方式に変わると、サイドウインドウを開けたことによる開放感は不十分だ。それでも後席の使用率は10%だから。荷室の突起を減らすことを優先させた。
荷物の取り付け、棚やネットを装着する時に役立つユースフルナット(車内に装着された差し込み用の穴)は、従来に比べて約2倍に増やした。全車に17個が標準装着され、ハイゼットカーゴのデラックスやスペシャルには31個が備わる
荷物の取り付け、棚やネットを装着する時に役立つユースフルナット(車内に装着された差し込み用の穴)
荷室の側面や上側には、ユースフルナットが装着される。捩じ込み式の穴で、棚やネットなどを装着する時に便利に使える。この穴の数もグレードによっては2倍に増やし、アトレーなどは17個、デラックスとスペシャルは31個と多い。
ハイゼットカーゴは、アトレーのベーシックなグレードだから、基本的な作りは共通だ。ただしデラックスやスペシャルの後席は、シンプルな作りになり、ヘッドレストも装着されない。前後席の間隔や後席の足元空間はアトレーと同じだが、ほとんど補助席に近い作りになる。
ハイゼットカーゴデラックス。ボディカラーはトニコオレンジメタリック
ハイゼットカーゴデラックスのインパネ
■マイナーチェンジを受けたハイゼットトラックはデフロック付きCVT用搭載
ハイゼットトラックはフルモデルチェンジをする必要もないほど熟成を重ねており、今回のスーパーデフロック付きのFR用CVT搭載でほぼ完成形だという
ミカン箱をフルに積んだ状態のハイゼットトラックの荷台
マイナーチェンジを受けたハイゼットトラックもチェックした。シャシーは先代型と共通だが、フロントマスクなどはハイゼットカーゴに準じた形状に進化している。メーターやスイッチ類の視認性や操作性も向上させた。
ハイゼットトラックの4WDでは、従来は5速MT専用だったスーパーデフロックをCVTにも組み合わせた。極端に滑りやすい路面では、4輪駆動時にデフロックも作動させると、悪路走破力が向上する。
トラックは幅の狭い農道を走る機会が多く、直角に曲がる場所もある。そのために小回りの利きが重視され、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)を1900mmに抑えた。この効果により、最小回転半径は3.6mで小回りの利きは抜群だ。
アトレーとハイゼットカーゴのホイールベースは2450mmと長く、走行安定性と乗り心地では有利だが、最小回転半径は4.2mになる。それでも小回り性能は優れているが、ハイゼットトラックに比べると差が開く。
ただしハイゼットトラックでは、シートの下に前輪があるから、乗降性はいまひとつだ。スーツを着て乗るクルマではないが、乗降時に衣類が前輪に触れて汚れることも考えられる。アトレーやハイゼットカーゴに比べて、作業車の性格が強い。
とても軽トラとは思えないハイゼットトラックエクストラのコクピット
CVT車には、これまでMT車だけに搭載されていたスーパーデフロックを軽キャブトラック車で初設定し、ぬかるみなどで悪路走行をサポート
座り心地は悪くないハイゼットトラックエクストラのシート
■キャビンの広さはウリのハイゼットジャンボ
ハイゼットトラック販売の約20%を占めるハイゼットトラックジャンボはキャビンの広さを追求したモデル
ジャンボのシート後部には横幅1345mm、長さ175mmほどのスペースがある
ハイゼットトラックジャンボの頭上空間のスペースは広く非常に便利
ハイゼットトラックで注目されるのが、室内空間の上側を拡大したジャンボだ。ハイゼットトラックの販売総数の内、約20%をジャンボが占めて、人気のモデルになった。
ジャンボの全高は1885mmだから、スタンダードルーフに比べて105mm高く、頭上にはタップリした空間がある。
高い天井を生かして、ワイドなオーバーヘッドシェルフも装着され、収納性も優れている。室内空間を張り出させた上側は荷室長が短くなるが、下側の荷室面積は十分に広い。従って薄くて長い脚立などは積みやすい。
■軽商用としては異例の豪華装備を満載
安全装備については、現行のスマートアシストIIIから、ステレオカメラを使用した最新のスマートアシストを新採用。衝突回避支援ブレーキ機能をはじめ、衝突警報機能、車線逸脱警報、前後誤発進抑制、オートライト、ハイビームアシスト、全車速追従機能付きACC(アトレーのみ)など13種類(アトレーは14種類)の予防安全機能を搭載
軽商用車では初めての装備として、ルームミラーを液晶表示にしたスマートインナーミラーも採用した。商用車の場合、背の高い荷物を積むと、通常のルームミラーでは後方が見えなくなった
装備面では、安全装備のスマートアシストを進化させた。ハイゼットトラックも含めて、センサーとなるステレオカメラを刷新している。
従来の衝突被害軽減ブレーキの検知対象は、歩行者と4輪車だったが、新たに自転車やモーターサイクルにも対応できる。衝突被害軽減ブレーキの作動速度も引き上げた。
さらに車線逸脱抑制制御機能、路側逸脱警報、進入禁止や一時停止などの標識をディスプレイに表示する機能、ハイビーム状態を保ちながら対向車などの眩惑を抑えるLEDヘッドランプのアダプティブドライビングビームなども加わった。
運転支援機能としては、車間距離を自動制御できる全車速追従型クルーズコントロール、車線の中央を走りやすいように操舵制御を行うレーンキープコントロールなども用意した。
特に注目されるのが、クラス初採用のスマートインナーミラーだ。ボディの後部にカメラを取り付けて、その映像を液晶のインナーミラーに表示する。
この装備はアトレーやハイゼットカーゴにも用意されるが、ハイゼットトラックは特に利用価値が高い。トラックは背の高い荷物を積むことが多く、後方視界も妨げられやすいからだ。ハイゼットトラックをベースにした保冷車などは、荷台に大きなボックスを架装している。
通常のルームミラーは機能しないので、スマートインナーミラーが有効だ。ただしハイゼットトラックのスマートインナーミラーのカメラは、低い位置(リアナンバープレートの上側付近)に装着される。
カメラの角度を上向きにしてはいるが、後方を走る車両との車間距離が近い時は、後続車の下側しか映らない。その点でアトレーとハイゼットカーゴでは、カメラが高い位置に装着されるから、後続車のフロントマスクも分かりやすい。
軽商用車は、軽乗用車以上に競争が激しい。そのために荷室容量は歴代モデルによって突き詰められ、ほとんど差が生じない状態になっている。軽商用車の場合、全長/全幅/全高の規格枠が厳然と設定されているので、荷室の面積や容量は、もはやほとんど拡大できないのにだ。
そこでさまざまな使い勝手を工夫している。アトレーとハイゼットカーゴでは、荷室については出っ張りを抑えて、収納性をさらに向上させた。そして内装の質感、前席の座り心地、収納設備、安全装備などをバランス良く改善して、価格はタントのような軽乗用車以上に割安に抑えた。
価格はハイゼットカーゴが104万5000円~160万6000円、ハイゼットデッキバンが132万~170万5000円。アトレーが156万2000円~182万6000円。アトレーデッキバンが191万4000~206万8000円。ハイゼットトラックが90万2000~134万2000円、ハイゼットトラックジャンボが109万4500~145万2000円。
ダイハツは2021年1~11月に1ヵ月平均で1万2800台の軽商用車を販売した。スズキの9200台を大幅に上まわる。
この優位な立場を守ることも視野に入れ、新型アトレー/ハイゼットカーゴ/ハイゼットトラックは、渾身の開発を行っているのだ。
■各車種のエンジンスペック&WLTCモード燃費
●アトレーRS、X、デッキバン全車種(658cc、直3ターボ、64ps/9.3kgm、CVTのみ)
WLTCモード燃費:14.7km/L(FR、4WD)
●ハイゼットカーゴ
・クルーズターボ(658cc、直3ターボ、64ps/9.3kgm、CVT車のみ)
WLTCモード燃費:14.7km/L(FR、4WD)
・クルーズ、デラックス、スペシャルクリーン、スペシャル、デッキバンG、L(658cc、直3NA、5MT車は46ps/6.1kgm、CVT車は53ps/6.1kgm)
WLTCモード燃費:5MTのFR、4WD車は14.9km/L。FRのCVT車は15.6km/L
※市街地モード、郊外モード、高速道路モードは車種によって違いあり
●ハイゼットトラック(FR/4WD)
・スタンダード、ハイルーフ、ジャンボ全車種(658cc、直3、46ps/6.1kgm)
WLTCモード燃費:5MT車のFR、4WDは15.6km/L。CVT車のFRは16.5km/L、4WDは15.8km/L
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みんなのコメント
そして高い
視界で、もっと重要なAピラーによる死角についてはまったく触れられない渡辺陽一郎。
やっぱりずれてるんだよなあ。