「高効率な“直噴”エンジンを搭載」。最近、新車が出るとよく聞くフレーズだ。エンジンの小排気量化がトレンドとなり、今やターボエンジンは、ほぼ全てが直噴化。何となく「直噴でないエンジンは時代遅れだろう感」さえ漂っている。でも、直噴エンジンが普及したのは、ここ10年ほどの話で、軽自動車に至っては現在搭載車ゼロ。直噴エンジンは本当に“言われているほどいい”のだろうか?
文:松田秀士
レースカーですら最近までほぼ非直噴エンジンだった!!
F1では2014年以後の1.6L、V6ターボエンジンで直噴化(写真は2017仕様のホンダRA617H)。スーパーGTも同年から直噴ターボとなったが、それ以前のエンジンは直噴ではなかった
流行りですねぇ! 直噴エンジン。最新の技術です。直噴と聞くとなんとなく偉そう。日本人こういうの大好きですよね、例えば「NASAで開発された~~」とか。賢そうなものにやられちゃうんです。
ボクがF3000やインディカー、スーパーGTを走っていた2012年ぐらいまでのレーシングカーにはほとんど直噴はありませんでした。
唯一、ル・マンなどの耐久レースを走るディーゼルエンジンを搭載したレーシングカーは直噴でした。そう、ディーゼルエンジンは直噴なのです。
つまり、そういった特殊なレーシングカー以外は、全て直噴ではない『ポート噴射』でした。覚えておいてください、直噴の対義語はポート噴射です。
ポート噴射は昔からある、ガソリンと空気を混ぜて混合気を作るシステムです。エンジンの中のピストンとかがある場所を燃焼室といいます。ピストンが下がった状態のときに、ガソリンと空気の混合気を溜めておく筒(シリンダー)の部分が燃焼室。この燃焼室の直前、燃焼室を密閉するバルブがある直前の『吸気ポート』というチューブ状の場所にガソリンを噴射して、空気と混ぜて混合気を作り燃焼室内に送り込むシステムをポート噴射といいます。
つまり、ポート噴射では燃焼室内に送り込まれる前に混合気がすでに形成されているのです。
直噴エンジンのメリットは『燃費』
シビックタイプRの直噴ターボエンジン。シリンダー内にガソリンを直接噴射することを直噴という
では、直噴エンジンとはなんぞや? です。
直噴は、ポート噴射とは違って、エンジンの燃焼室内に直接ガソリンを噴射して混合気を作るシステムです。直接噴射するから、直噴。賢そうに聞こえて、ぜんぜん賢くない、そのままのネーミングです。
では、どうして直噴が流行りなのかというと、ズバリ、燃費が良くなるからなのです。燃焼室内でガソリンと空気の混合気(ガス状)を作るのに、理論上もっとも適したそれぞれの割合があります。これを理論空燃比というのです。なんだか論文のようになってきましたね。嫌ですね。でもちょっと我慢してください。
ガソリンの理論空燃比は、ガソリン1に対して空気が14.7とされています(理論空燃比14.7:1)。つまり、この状態でガソリンと空気が均等に混ざった状態でエンジンの燃焼室内で燃える(爆発)すれば、もっとも効率が良いわけです。
皆さんが肺を膨らませて空気を吸い込んで息をするように、ピストンが下がるときに発生する『負圧』によって燃焼室内にガソリンと空気の混合気が吸い込まれます。
そして、今度はそのピストンが上昇して圧縮し、その後プラグが火花を散らして点火して爆発が起こり、その力でピストンが押し下げられパワーになります。
面白いことに、このピストン上昇による圧縮を強くすればするほどに、パワーは上がります。しかし、圧縮を強くすればするほど『デトネーション』と呼ばれる異常燃焼が起き、エンジンは壊れてしまう。
これは、あらかじめ混合気となったガスを圧縮するので、圧縮熱によってコントロールできない自然着火が起こるために異常燃焼が起きてしまうため。夏場など、エンジンからカリカリという音が聞こえることがありますが、あれが異常燃焼です。音のフィーリングからノッキングなどとも呼ばれていますね。
流行の小排気量ターボに直噴が多い理由
VWゴルフが火付け役となったダウンサイズターボは、ほぼ全て直噴。ポート噴射はルノートゥインゴに搭載の0.9Lターボや国産ではWRX STIのEJ20ターボなど一部を残すのみだ
ところがデス。直噴は、燃焼室内に直接ガソリンを、まるで霧吹きで吹きかけるように噴霧します。ピストンが上昇して圧縮するのは基本的に空気だけです。エンジン回転数やアクセルの踏み具合など、その時の運転状況に合わせてガソリンを噴射するタイミングと量を適正化してやれば、空気はうんと圧縮できるわけです。そう、圧縮を強くしてもエンジンは壊れにくいのです。
だから、少ない排気量でもパワーを出せ、もともと空気を圧縮して燃焼室内に送り込むシステムのターボと組み合わせることで、よりパワーと効率を生み出せるのです。つまり、燃費が良くなる。
ここを、もう少し解説すると。ポート噴射方式でターボを使う場合は、あらかじめターボで圧縮された空気とガソリンを混合するので、より異常燃焼が起きやすく、その予防のためにピストンが圧縮する圧力を弱くしています。
ところが直噴であれば異常燃焼のリスクが小さいので、圧縮を強いままで良いのです。だから、直噴とターボの相性が良いと言われるわけです。それと、燃焼室内に直接ガソリンを噴射するので、気化熱によってピストンやバルブを冷やすことができ、一石二鳥。やっぱりなんか、直噴って賢いです。
直噴の弱点は? 軽に採用されないのはなぜ?
2003年発売のワゴンRには軽初の直噴ターボエンジンが搭載されていたが、2017年現在、軽の直噴エンジン車は存在しない
しかし、直噴にもデメリットがあります。ガソリンを高圧縮するポンプや、燃焼室内の熱に耐えるインジェクターなどコストが上がります。軽自動車に採用されないのはこのあたりが大きいでしょう。
さらに、吸気バルブを通るのは空気のみなので、『オーバーラップ』と呼ばれる吸気バルブと排気バルブの両方が開いてしまう瞬間において、燃焼ガスが吸気バルブに吹き返してきます。これが度重なると、吸気バルブに煤が溜まり効率が悪くなる。
特に、直噴は燃焼室内に混合気を噴霧するので、ガソリンと空気の混ざる時間が短く、その結果、燃えカスが発生しやすい、というデメリットにも由来します。
ところが、ポート噴射は吸気バルブに入るときに、すでにガソリンとの混合気ができているので、ガソリンを常に洗い流してくれて綺麗です。
さて、車に詳しい人はもうお解りでしょう。直噴とポート噴射の両方を採用したデュアル噴射というシステムがあるのを。それぞれのメリットとデメリットを分担した、いちばん賢いエンジンといえるのかもしれませんね。
RC350に搭載の3.5L、V6エンジンは直噴とポート噴射を併用したデュアル噴射のはしり。最近増えつつあるいいとこ取りの技術だ
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