SRのサイドカバーにさりげなく明記されたSINCE 1978の文字。どこか微笑ましく、そしてちょっぴり誇らしげにも感じられる。もう40年も前からこのスタルで市販されているロングセラーモデルが平成28年排出ガス規制をクリアして11月22日より新発売される。REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ヤマハ・SR400……572,400円~
【ベスパ】セイジョルニは新エンジン、プリマベーラは新色、スプリントは……。
進化という名の下に目まぐるしい変貌を遂げていく多くの製品群の中にあって、SRはまさに異端児だ。細部やカラーリングは別として、基本的には、筆者がまだモト・ライダー誌の編集部員だった大昔に目にした当初のスタイルと何ら変わりがないのである。
ハイパワーマルチへの憧れが全盛だった時代に放たれたビッグシングルスポーツというカテゴリーは当時でも懐古的ではあったが、ライバル無き存在として注目度はかなり高かった。少しだけ補足しておくと搭載エンジンはエンディーロモデルのXT500で開発された物。当然SRは500も存在し併売されたが免許制度の関係で400が主力商品となる。これまでキャストホイールの装着やあえてドラムブレーキの採用等、そしてキャブレターからインジェクションへの変遷は経てきているが、見た目はまさに当初のまま。現在は400のみの販売となっている。
余談ついでにSRの商品開発は、モト・ライダー誌がかつて企画し、長島英彦さんの手でオリジナル製作されたロードボンバーの存在抜きには語れないだろう。あまりにも大きかった同誌読者の反響が、SR発売への引き金になったことは間違いないからだ。この話題はいずれまたモーターファンjpでも掲載する機会が訪れると思っている。
バイク然としたオーソドックススタイル
さてSR400は、どこを見てもオーソドックスな設計装備で成り立っている。スタイリングしかり、スチール製セミダブルクレードルフレームや前後スポークホイール、エンジンは空冷のSOHC。始動方法は今や絶滅状態にあるキック方式。「何それ」?と思う人も少なくないだろう。
頑固という言葉は相応しくない気がするが、昔から変わらぬ一徹な主張を込めた造りにはシンパシーを感じられるから不思議だ。走りの性能やスペック勝負、ましてや斬新な要素には一切無縁のところに、SRの個性とSRならではの魅力が潜んでいるのである。
走らせるのに、先ずはキック始動というセレモニーが必要。流石に電子制御の燃料噴射だけに、キック一発で目覚めてくれた。ライダーとして古い感覚を持ち合わせている筆者にとっては、心の中で「ヤッター」!とひりほくそ笑む瞬間がそこにある。ちなみに暖機後の再始動では少々手こずるシーンもあったが、それでもフルストローク3回程度のキックで始動でき、マスツーリングで一人置いてきぼりになる事もないだろう。
心地よい4000rpmの鼓動感
初代SR500のパンチ力を知る筆者にとって SR400は少々非力に感じられる点に不満を覚えた事があったが、新型の印象は実用域での出力特性が豊かに調教されていて、スロットルレスポンスにトルク不足は感じられない。かつ、とても扱いやすいものだった。
高回転域まで引っ張ると回転に比例して震動も多くなるので、だいたい4000rpm前後までを駆使していくと穏やかで快適な乗り味を享受できる。 軽やかに、しかしトルクに十分な太さが感じられる鼓動との語らいが妙に心地よい。一言でいうと落ち着いた乗り味なのだ。
最大トルクの発生回転数は3000rpm。それだけでもSRが希有な存在であることがわかるだろう。アクセルをワイドオープンする事なく、早め早めにシフトアップしても加速感は衰えを知らない。逆に言うと思い切り引っ張ってもそれほど速くはないのだが、トトトッとさり気ない加速感の中に逞しい底力がある。心に大きなゆとりを持てる感じなのだ。
重すぎない車重と素直なハンドリング。タンデムツーリングにも快適な乗り味が得られる適切なライディンポジション。気が向いた時に気の向くまま散歩気分で心地よい風を浴びに行く。そんなシーンにピッタリのバイクだ。お互いが良く分かり合えた相棒の様な感覚で永く付き合える点に改めて独特の魅力が感じられた。
足つきチェック(ライダー身長170cm)
ディテール解説
●主要諸元
認定型式/原動機打刻型式2BL-RH16J/H342E
全長×全幅×全高2,085mm×750mm×1,100mm
シート高790mm
軸間距離1,410mm
最低地上高130mm
車両重量175kg
燃料消費率
国土交通省届出値 定地燃費値40.7km/L(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値(クラス)29.7km/L(クラス2 サブクラス2-2) 1名乗車時
原動機種類空冷・4ストローク・SOHC・2バルブ
気筒数配列単気筒
総排気量399cm³
内径×行程 87.0mm×67.2mm
圧縮比8.5:1
最高出力18kW(24PS)/6,500r/min
最大トルク28N・m(2.9kgf・m)/3,000r/min
始動方式キック式
潤滑方式ドライサンプ
エンジンオイル容量2.40L
燃料タンク容量12L(「無鉛レギュラーガソリン」指定)
燃料供給方式フューエルインジェクション
点火方式TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式12V,2.5Ah(10HR)/GT4B-5
1次減速比/2次減速比2.566(77/30)/2.947(56/19)
クラッチ形式湿式, 多板
変速装置/変速方式常時噛合式5速/リターン式
変速比1速2.357/2速1.555/3速1.190/4速0.916/5速0.777
フレーム形式セミダブルクレードル
キャスター/トレール27°40′/111mm
タイヤサイズ(前/後)90/100-18M/C 54S/110/90-18M/C 61S (前後チューブタイプ)
制動装置形式(前/後)油圧式シングルディスクブレーキ/
機械式リーディングトレーリングドラムブレーキ
懸架方式(前/後)テレスコピック/スイングアーム
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプハロゲンバルブ/12V,60/55W×1
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