■ポイントは「カワイイ」から「使いやすい」にシフト
1970年代後半になると、マイカーの普及が進んだことで女性ドライバーも増加し、国内自動車メーカーは女性に向けたメッセージを多く発信するようになりました。
不人気にもほどがある!?ビックリするほど売れていない軽自動車5選
マツダは1977年に発売した4代目「ファミリア」のCMに元祖ハーフモデルで女優の秋川リサ(当時は立木リサ)を起用し「リサのお気に入り」とナレーションを入れたり、トヨタは初代「ターセル/コルサ」のCMに「百恵の赤い靴」のコピーとともに当時人気絶頂のアイドル歌手だった山口百恵を登場させました。
さらに、専用内装やボディストライプを施したターセル/コルサの特別仕様車「百恵セレクション」を発売するなど、女性がクルマを所有する時代の到来を加速させました。
1980年代になると、スズキはモデル・歌手・女優として若い女性の「憧れのお姉さん」的存在だった小林麻美を「アルト」のCMに起用。白いボディにピンクやグリーンのパステルカラーのバンパーを装着し、当時流行だったタイトスカートでも乗降がしやすい「回転ドライバーシート」を装着した「麻美スペシャル」を市場に投入します。
その後も女性をターゲットとしたクルマは多数あり、とくに軽自動車を中心に現在も展開しています。
そこで、女子目線で使い勝手のよさも考慮したとクルマ5車種を紹介します。
●ホンダ「N-WGN」
2013年に登場した初代ホンダ「N-WGN」は、軽自動車規格のミニバンともいえる軽ハイトワゴンで、広い室内と高い基本性能が評価され人気車種となりました。
現在販売されているN-WGNは2019年8月に発売された2代目となり、先代同様に標準仕様の「N-WGN」とドレスアップモデルの「N-WGN Custom」が用意されています。
N-WGNのウェブサイトには、女性が運転しているグラフィックが多く使用され、いちばん最初に目に入るのが「みんなにちょうどいい運転席。」と記されたキャッチコピーです。
「テレスコピック&チルトステアリング」や「運転席ハイトアジャスター」、腰の上下動が少ない位置に設定して体の負担を少なくした座面の高さなど、使いやすさをアピール。
荷室は床が低く2段になっており、上段はスーパーなどのショッピングカートに合わせた高さに設定されているなど、日常使用での細かな配慮も忘れていません。
また、「Honda SENSING」などの予防安全性能の解説も、女性に向けたメッセージになっており、パーキングセンサーやタイヤ角度モニターなど、運転サポートも充実しています。
搭載されるエンジンは最高出力58馬力の直列3気筒と、64馬力を発揮する直列3気筒ターボで、使用状況に合わせて選択が可能。
全高1675mmと高すぎないボディながら広い室内を実現し、最小回転半径は4.5mと使い勝手も良さそうです。
N-WGNのベーシックグレード「G・Honda SENSING」(2WD)は車両本体価格127万4400円。高速道路の渋滞中などで運転がラクになる「渋滞追従機能付ACC」(アダプティブ・クルーズ・コントロール)なども標準装備されていますので、この価格はお買い得といえます。
●ダイハツ「ミラ トコット」
1979年にスズキが初代「アルト」を発売すると驚異的な低価格で大ヒットとなり、ダイハツも「ミラ クオーレ」を追って発売。
アルトが割り切った低価格車であることを最大の武器にしていたところに、ミラ クオーレはちょっと洒落た外観で登場すると、女性を中心に人気となりました。
常にアルトの競合車種として進化してきた「ミラ」シリーズですが、多様化するユーザーニーズへの対応のため「ミライース」や「ココア」を発売し、現在は2018年に発売された「ミラ トコット」が女性に人気となっています。
ミラ トコットはダイハツ初となる女性を中心としたプロジェクトによって開発されました。
デザインはカワイすぎず親しみがあり、飽きのこない表情のフロントフェイスや、四角いボディのなかで映える丸いヘッドランプ、角のとれたほどよい丸みの外観など、緻密に考えられています。
豊富なボディカラーやメーカーオプションの「デザインフィルムトップ」(キャンバス地調/アイボリー)、オプションの「エレガントスタイル」と「スイートスタイル」などがオシャレ度を上げています。
エンジンは最高出力52馬力の660cc直列3気筒を搭載。全長3395mm×全幅1475mm×全高1530mm、ホイールベース 2455mmのボディで最小回転半径は4.4mと、狭い十字路や駐車場などでも楽に取り回しできますが、さらにフロント4個/リア2個で接近お知らせ表示付きの「コーナーセンサー」や、クルマを真上から見ているような映像を映す「パノラマモニター」など、女性には嬉しい装備で運転をサポートします。
また、開発中に男性には十分に軽いパワーステアリングを、社内の女性モニターの意見でさらに軽く設定しなおしたという逸話があり、男性では気が付かなかったような点も考慮したといいます。
ミラトコットのベーシックグレード「L」(2WD)の価格107万4600円(消費税8%込、以下同様)です。
●スズキ「アルト ラパン」
2002年のデビューから人気車種となっているスズキ「アルト ラパン」は、軽セダン「アルト」をベースに、内外装のデザインを若い女性をターゲットとした派生車です。
アルトがモデルチェンジによって実用車らしさを前面に出したことで、女性ユーザーの減少を招いてしまいましたが、アルト ラパンの登場で、再び女性ユーザーを増やすことに成功しました。
現在販売されているアルト ラパンは2015年に登場した3代目ですが、初代からの箱型フォルムを踏襲しつつも角を取って丸みを帯びた「まるしかくい」ボディに一新されました。
ユーザーの9割が女性といわれているアルトラパンに設定されているボディカラーはメタリックやパール系で、ツートーンも設定するなど、いまどきのトレンドが反映されています。
また、肌や髪に優しい「ナノイー搭載エアコン」(グレードにより設定)や、紫外線と赤外線をカットする「プレミアムUV&IRカットガラス」、運転席と助手席に「バニティーミラー」を用意。
内装はシンプルなデザインながら、ダッシュボード上部をテーブル状にして、助手席でメイク時に物を置けるように配慮するなど、部屋感覚で使えるように考えられています。
さらに、スピードメーターにある「マルチインフォメーションディスプレイ」には、エンジン始動時にうさぎのキャラクターが表示され、アニメーションと音声で各種車両情報を伝え、誕生日や季節のイベントの日には、その日にちなんだメロディも再生される機能も搭載するなど、遊び心も満載。
エンジンは最高出力52馬力の直列3気筒を搭載し、車両重量650kg(グレード「G」2WD)と、スズキならではの軽量ボディには十分なパワーです。
アルト ラパンのベーシックグレード「G」(2WD)の価格は110万7000円となっています。
■じつは女性向けのクルマは万人にも使いやすいクルマ!?
●日産「マーチ」
1982年に初代がデビューした日産「マーチ」は、当時人気絶頂だったアイドル歌手の近藤真彦をCMキャラクターに起用し、「マッチのマーチ」や「スーパーアイドル」のキャッチコピーも話題となり、ヒット作になりました。
現在のマーチは2010年に登場した4代目ですが、商品紹介のウェブページに登場する人物はほぼ女性です。掲載されているコピーも「乗る人がかわいくみえる多彩なボディカラー」や「運転をサポートするフレンドリー装備」「かわいいを引き出す、11色」など、明らかに女性をターゲットにPRしています。
エンジンは最高出力79馬力の1.2リッター直列3気筒を搭載し、車両重量940kg(グレード「S」)の軽量ボディを軽やかに走らせます。
ボディサイズは全長3825mm×全幅1665mm×全高1515mm、ホイールベースは2450mmのコンパクトボディで、最小回転半径は4.5mと、住宅地の狭い路地などでも不自由はありません。
グレード別の設定ですが、駐車時に前進とバックを繰り返してタイヤの向きがわかりづらくなったときに、メーター内のディスプレイに、タイヤの向きやハンドルの切れ角、進行方向を表示する「タイヤアングルインジケーター」を装備。
また、小柄な人でも運転しやすい「運転席シートリフター」と「チルトステアリング」、周囲をきちんと見わたせる広びろとしたガラスエリア、誕生日などの記念日にディスプレイにメッセージを表示する「フレンドリーメッセージ表示機能」なども、女子目線の機能でしょう。
マーチのベーシックグレード「S」(2WD)の価格は115万1280円ですので、買い物や送り迎え用のセカンドカーとしても嬉しい価格です。
●トヨタ「パッソ」
2004年に登場したトヨタ「パッソ」はCMに女優の吹石一恵を起用し、キャッチコピーは「プチトヨタ」です。「ヴィッツ」がモデルチェンジで全幅を拡幅したことにより、現在はパッソがトヨタのエントリーモデルとなっています。
現行モデルは2016年に発売された3代目で、トヨタのウェブページを開くと、大きく「オシャレパッソ」のキャッチコピーが掲載され、ツートーンも選べる個性あふれるカラーバリエーションなども、明らかに女性をターゲットにしたクルマであることが伺えます。
とくにクラシカルな意匠の「MODA」シリーズでは、シンプルでありながら目を引く外観や、カッパー色を効かせた質感の高い内装など、ベーシックなコンパクトカーでありながらもオシャレ度は高くなっています。
最高出力69馬力の1リッター直列3気筒エンジンはパワフルではありませんが、車両重量910kg(グレード「X」2WD)のボディには十分なパワーで、市街地ではストレスなく走ります。
ボディサイズは全長3650mm×全幅1665mm×全高1525m、ホイールベースが2490mmのコンパクトボディで、最小回転半径は4.6mです。
駐車時に役立つ「パノラミックビュー&バックカメラ」や、フロント4個/リア4個で接近お知らせ表示付きの「コーナーセンサー」などの運転アシスト機能や、紫外線の強い季節でも気軽にドライブを楽しめるように、日焼けの原因となる紫外線を約99%カットするフロントドアとリアドアのガラスなど、安全面のみならず、同乗者のことも考えられた装備が充実しています。
パッソのベーシックグレード「X」(2WD)の価格は117万7200円です。
※ ※ ※
1959年にデビューした初代日産「ダットサンブルーバード」には、女性オーナードライバー向けの特別仕様車「ファンシーデラックス」がラインナップされていました。
このファンシーデラックスの専用装備は、レモンクリーム系とピンク系のボディカラーと同色のホイール、助手席サンバイザー内蔵の化粧ポーチ、ビューティランプ、オルゴール付きウインカースイッチ、シートアジャスト量の拡大、スリッパータイプのアクセルペダル、リアシート上部のコートハンガー、フロントシート横の傘立て、Bピラーの一輪挿しなど、30点以上に及びました。
こうした装備のなかには、後に女性向けではなく標準化されるものもあります。使い勝手のよさを追求するアイデアは、性別に関係ないということでしょう。
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