使い勝手の良さや走破性の高さ、あるいは大きなボディがもたらす安心感から人気が続くSUV。一方で特に欧州ではいまだワゴンモデルの支持率も高いという。その理由はやはり背の低いクルマゆえの安定感の高さ、フットワークの良さにあるのは間違いないが、そこに確かなオフロード性能が加わればまさに鬼に金棒ではないだろうか。そんなベストバランスの一台が、先頃日本に上陸した「メルセデス・ベンツCクラス オールテレイン」である。
オフロードでもオンロードにも対応するベストバランスな一台
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メルセデス・ベンツの屋台骨を支えるCクラスの第3のモデルとして登場したオールテレインは、同ステーションワゴンをベースとしたいわゆるクロスオーバーモデルだ。専用サスペンションを備えて最低地上高を高めつつ、エクステリアには前後バンパー下にボディ保護用のアンダーガードを与え、フェンダーアーチ部分にも樹脂製のクラッディングパネルを装着するなどしてSUVテイストを強めている。これらの仕立てはもちろん単なる飾りではなく、悪路走行を考えてのもの。ワークブーツがタウンユースのファッションとして確立されているように、これはこれでひとつの機能美とも言え、Cクラス・ステーションワゴンの優雅さを損なうことなく見事に調和している。
実際、そのスタイリングは決して仰々しいものではなく、街中もアウトドアフィールドにもよく似合う。地上高は標準型ステーションワゴンより40mm高められていることもあって、ちょっとした段差を気にせずに乗り越えることができるほか、たとえば轍の深い雪道や岩が転がる河原等でもボディ下面を擦ることなく歩んでいける。加えてこのオールテレインではメルセデスお得意の“4MATIC”4WD機構が備わるのはもちろん、雪道や砂利などの滑りやすい路面でも確実なトラクションが得られるようにエンジンやトランスミッション等を制御する“OFF ROAD”と“OFF ROAD+”というふたつの走行モードが追加されているのが新しい。さらにはオフロードでの低速クルーズコントロールとも言える“ダウンヒルスピードレギュレーション”も用意されるなど、メルセデスの本格派四駆として人気の高いGクラス等で培われた技術がこのオールテレインでも生きている。決して名ばかり、スタイルばかりではないところが完璧主義のメルセデス・モデルらしいところだ。
そんな頼もしさ溢れるオールテレインは、オンロードでのフットワークも上々だ。その一番の理由はやはり、一般的なSUVとは異なる走行安定性の高さ。高速でも一般道でも、はたまたワインディングロードでもボディ上屋の動きに不安なところはまったくなく、通常のCクラス・ステーションワゴンと同様に安定した姿勢を保ち続ける。運転という行為から得られる爽快さはSUVの比ではなく、速度が高まるごとに安定性が増していくのも頼もしく、高速の長距離移動も楽々こなしてくれる。
そんな安楽さを存分にサポートしてくれるのが、オールテレインに搭載される2ℓ直列4気筒ディーゼルターボだ。このユニットは9速ATのトランスミッションハウジング内に電動モーターを組み込んだマイルドハイブリッド(ISG)仕様となっていることもあり、低速域から十分以上のトルクを滑らかに生み出し、ストレスを感じさせることのない高いドライバビリティを披露してくれる。いざとなればアダプティブクルーズコントロールやレーンキープといったSクラス譲りの先進運転支援システムの力を借りての安楽な走行も可能だ。つまり路面状況を厭わないオールテレインであるばかりか、フォーマルなシーンでもつつましく存在感を発揮する、オールシチュエーションで活躍できるのがこのモデルの真骨頂と言えるだろう。SUVに比肩するアクティブさに加えて、ステーションワゴンらしい軽やかなフットワークとスタイリッシュさを兼ね備えたCクラス・オールテレインは、モノや遊びの本質を知る人こそ選ぶべき一台。決して見せかけではない、長く愛せる道具としての本物の魅力と実力が宿っている。
SPECIFICATIONS
メルセデス・ベンツ C220d オールテレイン
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,760×1,840×1,495mm
車重:1,870kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:9速AT
エンジン:直列4気筒ディーゼルターボ 1,992cc
エンジン最高出力:147kW(200PS)/3,600rpm
エンジン最大トルク:440Nm(44.9kgm)/1,800~2,800rpm
モーター最高出力:15kW(20PS)
モーター最大トルク:208Nm(21.2kgm)
価格:7,960,000円(税込み)
問い合わせ先:メルセデス・ベンツ 0120-190-610
これまでEクラスにのみ用意されてきたオールテレインがCクラスにも加わった。Cクラスのワゴン系で4WDが選べるのはこのモデルのみ。シチュエーションを問わず重宝する一台になることは間違いない。
インストルメントパネル周りのレイアウトは他のCクラスに準ずる。走行モード切り替えのDYNAMIC SELECTには通常のECO/COMFORT/SPORT/INDIVIDUALの他にオフロード用の2種が加わった。
後席は身長178cmの乗員でも無理なくくつろげるスペースが確保されている。試乗車は本革シートやサンルーフなどで構成される“レザーエクスクルーシブパッケージ”(オプション)が奢られている。
荷室はフラットで開口部も大きいため使いやすい。通常時の容量は490ℓ、後席を倒せば1510ℓまで拡大できる。荷室壁面にはエコバッグなどをぶら下げられるフックや後席可倒用スイッチが備わる。
タイヤサイズは245/45R18インチ。アフターマーケットでも多くの銘柄が選べるサイズだ。このタイヤ径と専用サスペンションの組み合わせにより、最低地上高は通常の110mmから150mmに広がった。
低速域ではややつっぱり感も感じられた乗り心地は、速度を増すごとにしなやかに変化していった。初期モデルゆえの個体差とも言えるが、距離を重ねていけばさらに洗練度はさらに増していくに違いない。
TEXT:桐畑恒治(AQ編集部)
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