■2015年の不正発覚からVWは輸入車ランキング2位以下へ
フォルクスワーゲン(VW)は、かつて輸入車の販売ナンバーワンブランドでしたが、2020年1月から7月の累計登録台数では、メルセデス・ベンツに次いで2位になっています(日本自動車輸入組合のデータ)。
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輸入車の登録台数を振り返ると、2000年から2014年まではVWが一貫して1位でした。
ところが2015年に、VWのディーゼルエンジン車に関する排出ガス検査の不正問題が北米で発覚。
当時日本国内でVWのディーゼルエンジン車は正規導入されていませんでしたが、不正が発覚した直後の2015年10月には、VWの国内登録台数が前年同月比で52%まで下がっています。
もともとVWのクルマづくりは、高い技術力と上質感を備えながらデザインなどは控え目です。ひけらかさない、信頼性の高い品行方正な商品開発が、日本でも多くのユーザーから共感を得ていました。
守るべきルールを破る不正が生じたので、日本のVWブランドも失墜したのです。VWの日本におけるブランド構築が成功していたからこそ、ユーザーの落胆が大きく登録台数も半減したといえるでしょう。
この後もVWの国内登録台数は、2015年11月が対前年比で32%のマイナス、12月も39%減り、2015年暦年では19%の減少で5万4766台になりました。
一方、メルセデス・ベンツは2015年に7%増えて6万5162台を登録。そのため、1位と2位が入れ替わったわけです。
2015年以降、輸入車登録台数の1位は、メルセデス・ベンツが守り続けています。
2位については、2016年、2017年、2019年にはBMWが入り、この3年間のVWは3位でした。
直近となる2020年1月から7月の累計台数は、1位がメルセデス・ベンツ(2万9595台)、2位がVW(2万525台)、3位がBMW(1万8318台)です。
なお、4位はアウディ(1万761)、5位はBMWミニ(1万143)ですが、上位5ブランドはすべてドイツ車で、登録台数を合計すると、正規輸入車全体の68%を占めています。
VWは、不正が発覚した2015年から2位以下という順位なので、いまだに不正問題の悪いイメージから抜けられない、ともいえるでしょう。
しかしVWが一貫して2位以下の理由は、それだけではありません。2010年以降、メルセデス・ベンツの国内登録台数が急増した影響も大きいといえます。
メルセデス・ベンツの国内登録台数は、2010年は3万936台でしたが、2015年には前述の6万5162台ですから、5年間で2倍以上に増えました。
VWの場合は2010年が4万6707台、国内販売がピークに達した2014年は6万7438台ですから、4年間で1.4倍には増えましたが、メルセデス・ベンツの倍増には及びません。
つまりメルセデス・ベンツの登録台数が急増している最中に、VWは不正問題で売れ行きを下げたため、明暗が大きく分かれて輸入車販売ランキングの1位と2位も入れ替わったわけです。
そして2010年から2015年に掛けて、メルセデス・ベンツの国内登録台数が2倍に増えた一番の理由は、売れ筋の新型車を積極的に投入したからです。
この時期のメルセデス・ベンツ販売に大きく貢献したのは、2013年に発売された先代型の3代目「Aクラス」です。それまでのAクラスに比べてルーフが低く、スポーティな5ドアハッチバックになりました。
2013年にはAクラスがVW「ゴルフ」やBMW「3シリーズ」に次ぐ売れ行きとなりました。
2014年には現行「Cクラス」も発売され、2015年はゴルフに次ぐ売れ行きとなりました。さらに2014年にはコンパクトなセダン&ワゴンの「CLA」も登場するなど、2015年には登録台数を伸ばしています。
昨今流行りのSUVでは、「GLA」なども販売促進に貢献しています。このように2010年代には、メルセデス・ベンツの新型車が日本でも活発に発売されました。
BMWも国内で販売する車種を増加。2010年にはコンパクトSUVの「X1」が導入され2015年にはフルモデルチェンジ。2011年と2019年の「1シリーズ」フルモデルチェンジしています。
さらに、「2シリーズアクティブツアラー」(2014年)や「X2」(2018年)、などFFベースのコンパクトモデルも導入され、売れ行きを着実に伸ばしています。
■ディーゼル車の有無でVWとメルセデス・ベンツに差が生じた
メルセデス・ベンツやBMMに比べると、VWは不正問題の前から新型車の投入が乏しかったです。
当時のVWのSUVは「ティグアン」とLサイズの「トゥアレグ」くらいで、ほかのドイツブランドに比べると、SUVの流行に乗り遅れている印象がありました。
そしてメルセデス・ベンツとBMWは、クリーンディーゼルを割安な戦略価格で投入しています。同排気量のガソリンターボと比べて、20万円程度の上乗せに抑えた車種も多かったです。
しかもクリーンディーゼルは、日本ではクリーンエネルギー自動車とされるので、購入時に納める自動車取得税(現在は環境性能割)や自動車重量税は非課税となります。
クリーンディーゼルターボの価格が約20万円高くても税金の差額で取り戻すことができ、実質的な出費はガソリンターボと同等になります。
とくに高価格な輸入車は自動車取得税も高額になるので、非課税のメリットは大きいといえます。
クリーンディーゼルターボは実用回転域の駆動力が高く、燃料となる軽油は安いです。購入時の出費がガソリンターボと同等なら、明らかにクリーンディーゼルターボが買い得で、車種によっては販売総数の7割から8割前後をクリーンディーゼルターボが占めました。
ところがVWは、北米で不正問題を生じたため、日本でクリーンディーゼルを発売するタイミングを逃してしまったのです。
当時、VWの販売店スタッフからは、次のような話が聞かれました。
「ディーゼルの不正問題が発覚し、商談が途中で立ち消えになったり、お客さまからVWのロゴさえ見たくないといわれたこともありました。
お客さまの信頼失墜は、販売現場の頑張りである程度カバーできますが、いまの時代にディーゼルがないのは辛いです。
輸入SUVでは、ディーゼルであることを条件に車種を決めるお客さまも多く、ガソリンだけでは購入の候補にもあがりません」
結局、不正問題でVWがクリーンディーゼルを導入するタイミングが遅れ、「パサート」に搭載して日本国内で発売したのは2018年2月でした。
VWはメルセデス・ベンツに比べると、SUVを含めた車種の充実と、クリーンディーゼルの搭載で差を付けられたのです。
※ ※ ※
メルセデス・ベンツの世界販売台数は、2010年は127万台、2015年は187万台、2019年は246万台と増えており、車種数も増加して日本国内の売れ行きも伸びています。
ただし販売規模が拡大するに従って、メルセデス・ベンツのブランドイメージも変わってきました。
コンパクトなAクラスや「Bクラス」、SUVは「GLA」「GLB」「GLC」「GLCクーペ」と増えて、車種構成も分かりにくくなりました。
いまはまだ、「Sクラス」「Eクラス」「Cクラス」を柱にしていた時代の高級な印象が残っていますが、今後はメルセデス・ベンツの位置付けが変わる可能性もあります。
売れ行きを急増させながら、プレミアムブランドの位置付けをいかに守るのか、「選択と集中」がキーワードになる時代に、メルセデス・ベンツは興味深い展開を見せています。
一方、VWもこのまま国内販売の2位、3位に甘んじているわけにはいかないでしょう。次期ゴルフでは1位奪回をねらって、新しい展開を見せるかも知れません。
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みんなのコメント
VWのディーゼルが不正後に明らかにカタログ値以下のダメダメエンジンに成り下がったからだよ。
タイミングとか信頼性とかってレベルの話じゃない。