■日産とドコモが連携してオンデマンド配車サービス実証を実施
日産は、「電動化技術×自動運転技術による挑戦~社会を前進させるモビリティ~」と称して、2021年9月9日にメディア向けのオンライン説明会を開きました。
これは、日産が同年7月19日に発表した、NTTドコモと連携したオンデマンド配車サービス実証を踏まえたものです。
日産が横浜(神奈川県)で自動運転サービス「Easy Ride(イージーライド)」実証試験を最初に始めてから3年半近くが経ちました。
Easy Rideとは、日産の商用EV「e-NV200」をベースに、DeNAと連携して共同開発した自動運転車です。
横浜のみなとみらい地区や中華街などで実際にお客さんを乗せて、これまで2018年と2019年に期間限定で実証試験をおこなってきました。
3回目となる今回の実証試験では、2021年9月21日から10月30日までの期間、午前8時半から午後4時まで、合計4台の自動運転車を走行させます。
特徴は、NTTドコモが全国21都道府県で展開する「AI運行バス」を利用する点です。
AI運行バスは、その名の通り、スマホのアプリで乗降リクエストを得た情報をAI(人工知能)を使って最適な乗り合わせを判断し、車両配車と運行指示をおこなうシステムです。
AI運行バスの基盤技術は、公立はこだて未来大学の学識者らが中心となって研究してきたもので、同大学の学内ベンチャーとして起業した「未来シェア」がシステムを開発しました。
その後、未来シェアはNTTドコモとAI運行バスとして協業し、全国各地の都市部や地方部のさまざまな環境下で実証試験をおこない、一部では実用化されています。
日産はこうしたスマホアプリを使った汎用性の高いサービスをEasy Rideに実装することで、Easy Rideの実用化に向けた課題の洗い出しをおこなうといいます。
また、自動運転車側についても、これまでの研究開発の実績を踏まえて規制当局とすり合わせた結果、車内に乗車していたシステム管理のオペレーターと、車両後方から追従する伴走車を排除。
セーフティドライバーひとり乗車の自動運転レベル2での運用とし、これまでオペレーターがおこなってきた自動運転での判断と監視の機能を組み込んだECU(制御コンピュータ)で対応します。
乗降地も、先回の実証実験での15か所から2か所増やすことで、より待ち時間の少ないサービスの実現を目指します。
■これからの日本はみんなにやさしい移動手段が必要
直近で自動運転バスや自動運転タクシーの話題といえば、東京2020パラリンピック大会の選手村で起こった接触事故が頭に浮かぶ人も少なくないでしょう。
本事象の当該車両「e-Palette」の製造者であるトヨタの豊田章男社長は、2021年9月9日に実施された日本自動車工業会の会長定例会見でこの点にも触れています。
現場検証は、これからおこなわれると承知しているとしたうえで、自動運転の実用化に向けては、クルマ、インフラ、歩行者が三位一体となった安全技術の確立が不可欠であるとの認識を示しました。
自工会としては今後、自動運転の安全性の基準化に対する提言をおこなっていきたいといいます。
今回の日産のオンライン説明会で、筆者(桃田健史)は自動運転サービスカーの安全性について聞きました。
これに対して日産は、安心安全な自動運転の実現に向けて「一足飛びではなく、一歩一歩、できるとこからおこなうことに尽きる」として「さまざまな場面を想定して、設計できないようなシステム設計はしない」という回答でした。
これまで量産車向けプロパイロットやEasy Rideを含めた自動運転技術の開発を地道におこなってきたメーカーとして、素直な思いを語ってくれたと思います。
このほか、今回の日産のプレゼンテーションでは、EVやe-POWER搭載車を気軽に使えるシェアリングサービス「e-シェアモビ」の使用実績も紹介しています。
会員数は2万人を突破。30代以下が全体の50%、また全体の62%が自家用車を保有していない人だといいます。
また、e-シェアモビの活用例として、地方自治体や企業が平日の日中は業務で使用し、夜間や週末などは一般向けに対応するなど、クルマの稼働率を上げることに成功している事例もあります。
こうしたサービス事業の責任者は「所有とシェアリングの比率が今度どのように変化するのか(正確な)予測に至る段階でない。さまざまなソリューションでの実証をしながらこれからも考えていく」と現状と今後について示唆しました。
今回の横浜でおこなわれる第3期Easy Ride実証試験は、場所としては観光目的が多い都市部ですが、地方部での公共交通の減少や物流事業でのドライバー不足など、日本が抱えるさまざまな社会課題を解決するためのひとつの方策という位置付けです。
今回のプレゼンテーションの冒頭、次のような言葉を日産は社会に対して投げかけました。
「これから先の日常を考えたとき、環境にやさしく、維持していくこともやさしい、みんなの移動手段が必要だと思う」
自動運転はけっして、打ち出の小槌ではなく、社会変化に対応するための手助けのひとつなのだと思います。
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