いよいよ2020年初頭、国産コンパクトカーの未来を占う超注目の1台が登場する。そう、東京モーターショー2019の期間中に発表された、ホンダ・フィットの4代目である。
フィット4はグローバルで通用する新時代のコンパクトカーであるとともに、何よりも「心地よさ」にこだわって開発されたのが特徴だ。歴代フィットの大きな魅力、ライバルを寄せつけない広大な室内空間、圧倒的に広い後席、シートアレンジ性、荷室の使い勝手をもたらす独創のセンタータンクレイアウトを継承しつつ、どこか柴犬を思わせる!? これまでのフィットのシャープな目つきとは異なる、愛らしい、ほのぼのとした顔つき、存在感をたたえたエクステリアデザインを見ただけでも、新型らしさを実感できる。こう言ってはなんだが、フィット3のエクステリアデザインは、ずんぐりとした印象で、サイドのピンセットのようなキャラクターラインが好き嫌いを呼んでいたような気がする。
ボディーサイズは全長3995mmと5mmの延長にとどまり、全高は-10mm。つまり、より低く低重心になったということだ。
が、フィット4のエクステリアデザインは、開発陣いわく、「洗車がしやすい、360度、面でつながっているシンプルな面で構成されている」と言うように、カッコ良さより、親しみやすさある機能さえ備えているのだ。特に極細Aピラー(116mmから55mmに)は、新型のエクステリアのハイライトと言える部分で、クリーンなデザイン性、69度から90度に開いたパノラミックフロントウインドー、水平基調のインパネデザインとともに、前方、斜め前方の視界の良さに貢献。ワイパーを視界に入れないことで、すっきりとした爽快(そうかい)視界を確保している。
グレードも多彩になり最上級かつフィット初の本革シートをおごるLUXE、アクセントカラーが新鮮なフィットネス的キャラクターのNESS、上質感を高めたHOME、ベースグレードのベーシック、そして、フリードにも加わったばかりのSUVテイストを持たせたクロスター(フリードと違い、最低地上高+30mmを確保し、撥水(はっすい)シート、16インチタイヤ、ホイールアーチプロテクターも備えた本格グレード)がそろう。
インテリアもまた、心地よさがテーマ。心地良い視界、洗練されたインパネデザインと、グレードごとに異なる吟味された表皮、ロングドライブでも疲れにくいボディースタビライジングシート、2020年に登場するホンダのEV、ホンダeに採用されたものと同じ、視覚的の抜け感にも貢献する2本スポークステアリング、9インチナビ(ギャザズのOP)そしてエアコンユニットの小型化による広々とした足元スペース、そして電子パーキングブレーキの採用で可能になった、前席左右間に出現した、バッグなどが置ける、便利なテーブルコンソールの存在が特徴だ。メーターは表現力の高い大型TFT液晶を採用。そのあたりだけでも、新型らしさがひしひしと伝わってくる。
つまり、日常生活に寄り添う心地よさを演出する居住性、インテリアデザインもまたポイントとなる。特に室内空間のゆとりではヤリスをしのぎ、後席の広さ、着座感、多彩かつ大空間ラゲッジスペースを出現させるシートアレンジ性などにコンパクトカーの価値を求める人向けだろう。
ちなみに、筆者がもっとも気に入ったインパネの表皮は、質感、素材感に優れるクロスターの布地だった。
また、ホンダ初のホンダ・トータルケア・プレミアムなるオペレーターサービス、緊急サポートセンター(SOSコール)、ソフトバンクのSIMを使った車載専用通信機も新しい。
パワーユニットも刷新された。まずはi-MMDを大幅に小型化した(インサイトの同システムに対して)2モーターハイブリッドシステムe:HEV(イーエイチイーブイ)だ。1.5L、アトキンソンサイクルのDOHC VTECユニット+2モーターの構成で、i-MMDならではのモータードライブを基本とし、主に高速走行で威力を発揮するエンジンドライブ直結モードも備えている。街中では、ほとんどの場面でモーター走行を行うという。そのほかにも、ステップアップシフト、リヤ入力分離ダンパーマウントシステム、アルミ製ダンパーマウント、VGR(パワーステアリングのバリアブルギアレシオ)など、ホンダ最新の技術も満載だ。
ガソリンエンジンは今回、1.3Lに一本化。このことからも、売りはHVモデルと言えるかもしれない。
そうそう、HVシステム、HVバッテリーの小型化とともに、従来、トランク側にあったCPUをエンジン側に移動させたことで、クラストップレベルのラゲッジルーム容量を確保している点も、実用面で大きなメリットとなる。また、センタータンクレイアウトを採用する歴代フィットのパッケージ面での大きな特徴となる、ワンタッチによるダイブダウン格納をすることで、ラゲッジから続くフラットフロアを実現するシートアレンジも健在。リヤドアからアクセスできる、そのフロア高はフィット3では560mmだったものの、フィット4ではやや高まった印象(+30mm)。
その理由が、クラスを越えた座り心地を実現したという新シート=ボディースタビライジングシート。従来のダイブダウン格納、チップアップ機能はそのままに、先代のSバネ式からMAT面構造を採用し、骨盤を安定させる機能を持たせ、シートクッション厚はアコードのシート並みの、先代比で前席が対30mm、後席で+24mmの厚みとしている。そんなシートの厚みにより、後席格納時のフロア高が高まったというわけだ(歓迎すべきこと)。それでも後席格納時のフラットフロアの地上高は600mm以下。リヤドアからの重い荷物の出し入れや、ペットの乗降も楽々と言っていい。
筆者は数種類の表皮の前席に座ってみたが、表皮素材によってかけ心地、お尻の沈み具合(骨盤を安定させるのに重要)がけっこう異なることに気付いた(プロトタイプゆえか?)。多くの場合、体重65kgの筆者だと、本革シートは張りが強く、しっくりしないのだが、フィット4の本革シートは意外なほどお尻が沈み込み、しっくりと座れたのには驚かされた。
もちろん、新時代のコンパクトカー、ファミリーカーとして、専用車載通信モジュールによる「ホンダコネクト」を日本初搭載。コネクテッドサービス「ホンダトータルケアプレミアム」を開始するという。さらに、セキュリティーアラームの作動時には、ALSOKのガードマンを現場に急行させるサービスも用意しているから心強い。ヤリスにあるヘルプネット=SOSコールも、オプションで用意されるはずである(あまり知られていないが、フィット3にもオプションで用意されている)。
そんな新型フィット4の走行性能だが、プロトタイプに試乗したのはホンダの鷹栖テストコース内のみということを、まずはお断りしておきたい。EU路という、ヨーロッパの一般道を再現したコースもあるのだが、やはり日本のリアルワールドとは異なる走行環境だからである。
運転席に座ってまず感動したのが、自然なかけ心地。フィット3の前席は、座面が前に下がっているように感じられ、決して心地良くしっくり座れるシートではなかったのだが(個人の感想です)、フィット4のシートはある意味、常識的かつ、しっくりするかけ心地になったのである。これで背もたれにもう少し背中の“包み込まれ感”=サポート性があるとなおよしである。
まず試乗したのは1.3Lエンジンを積むガソリン車だが、乗り心地はけっこうれ硬めだったフィット3に対して、よりしっとりまろやか。高速直進性、カーブでの安定感は文句なく、乗り味としてはワンランクアップという印象だ。ただし、キャリーオーバーされた1.3Lエンジンは高回転まで回すとけっこう騒々しい。日常的に使わない回転数とはいえ、今や軽自動車のエンジンでさえ、高回転で静かに回るユニットもあるので、このあたりは要改良点と思えた。高速道路の合流などで、高回転を使わざるを得ないシーンもあるわけで。
一方、新型フィット、フィット4の真打ちと言っていいHVモデルは、出足から基本的にモーター走行。静かに、滑らかに走りだし、フィット3のHVモデルに対して圧倒的にHV感が強いのが特徴だ。乗り心地は16インチタイヤ装着車でも、硬めながら角の取れた質の高い乗り心地を示し、より大きく上級なクルマに乗っている感覚さえあるほどだった。山道を模したコースを走れば、フィット3より穏やかにしつけられた操縦性、ステアリングレスポンスが、むしろ安心感ある走行性能に貢献。パワーステアリングの切る、戻す両方向のより自然なフィールにも好感が持てるとともに、あらゆるシーンでの安定感の高さにも、惚れ惚れさせられたほどだった。
最後に、進化した先進運転支援機能=ホンダセンシングは、衝突被害軽減ブレーキが昼夜の歩行者、移動自転車にも対応。さらにACC(アダプティブクルーズコントロール)がついに0~135km/hの渋滞追従機能付きにアップグレード。その機能をテストコースで試してみると、レーンキープ性能は優秀で、120km/h走行での高速コーナーもしっかりとトレースしてくれる実力、高機能の持ち主であることを確認。あとで聞けば、ACCはドイツのアウトバーンでもテストを繰り返したというから、なるほど、である。
話をまとめると、ファミリーカーとして、圧巻の後席や荷室の広さに加え、ホンダ得意の”魔法”と呼んでもいいシートアレンジ性による、さまざまな用途、使い勝手に応えてくれる、万人向けであり、さらなる安心感も加わった「心地良い」コンパクトカーが新型フィットである。その多彩なグレードから好みの1台、仕様を選ぶ楽しさも、フィット4の大きな魅力となりそうだ。発売は2020年2月と間もなく。国産コンパクトカーを狙うなら、新型フィット、フィット4を見て、試乗してからの決断を薦める。
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。
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