現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > カワサキ一筋48年! 元カワサキテストライダー齋藤昇司さんがケイファクトリーのデモ車開発に参画

ここから本文です

カワサキ一筋48年! 元カワサキテストライダー齋藤昇司さんがケイファクトリーのデモ車開発に参画

掲載 更新 3
カワサキ一筋48年! 元カワサキテストライダー齋藤昇司さんがケイファクトリーのデモ車開発に参画

カワサキではバイクとジェットスキーを33機種開発!

3年ほど前に、僕は齋藤昇司さんと20年ぶりにくらいに再会した。以前お会いした時はカワサキのテストライダーだったが、今はカスタムパーツを製造&販売するケイファクトリーのテストライダーである。柔らかい笑顔は当時と変わらないが、目の奥には優しさとジェントルが増していた。

ケイファクトリー×ビモータ KB4【あと3kg! ZX-25Rよりも軽い1000ccスポーツバイクはつくれるのか? Vol.1】



【齋藤昇司(さいとう・しょうじ)】1953年生まれ。高校生の時にモトクロスに没頭。その頃からカワサキのテストライダーに憧れ、高校卒業後の1972年、新卒でカワサキに入社。1970年代はオフロードやモトクロスを中心にバイクを開発。1980年代に入るとロードバイクの開発がメインになり、1990~2000年代の空前のフラッグシップブームを牽引。最後に担当した市販車はニンジャZX-12R。その後はテストライダーチームの取りまとめを担当しつつ、様々なバイクの試乗を続けた。

メーカーテストライダーの見識がカスタムの世界を広げる

この日、齋藤さんは自身の愛車であるゼファー1100ファイナルエディションでケイファクトリーに登場した。バイクを完璧にコントロール下においた安心感と、今年70歳ながらも年齢を感じさせない威風堂々としたフォームが、ゼファー1100をコンパクトに見せる。

齋藤さんは、2年ほど前からケイファクトリーのテストライダーを担っている。ケイファクトリーは大阪でマフラーやアルミ削り出しパーツなどを制作するメーカーで、様々なデモ車を制作している。齋藤さんはそんなデモ車の車体まわりの各パーツのバランスを見直し、調律を施す。

「齋藤さんがカワサキを定年するというタイミングで、デモ車の車体まわりのセットアップを手伝ってほしいと声を掛けさせてもらったんです。メーカーテストライダーのレポートは凄いですね。ハンドリングやパーツの良し悪しだけでなく、ハンドルの角度が少し違うとどうなるかなど、とても緻密です」とケイファクトリー代表の桑原さん。

―― この日は齋藤さんのテストコースをツーリング。市街地→高速道路→ワインディングを繋いだルートで、齋藤さんは色々なことを確認しながらバイクを走らせる。

高校生の時からカワサキが好き。テストライダーに憧れた

「中学生の頃からモトクロスごっこを始め、高校生の頃、カワサキのテストライダーの竹沢正治さんなどがレースで活躍していて、カワサキのテストライダーって凄いんだなぁって憧れていました。俺もその当時からカワサキが好きで、バイソン(250TR)に乗ったりしていて、全日本モトクロスにも出場していたんです。カワサキのテストライダーになったらファクトリーの道があるなぁと漠然と思っていました。たいして速くないのにね(笑)

そんな夢を追いかけて、よしテストライダーになろう! と決意。スズキやヤマハにも入れたかもしれないけれど、『やっぱり俺はカワサキだ!』と。カワサキに行こう! 明石に行こう! と思ったんですが、当時は群馬にいたから当然リクルートは来ない。高校の担任に相談しても、川崎重工業自体を知らなくて『どこの会社だ? 川崎市にあるのか?』と言われる(笑) だから、自分でカワサキにハガキを出して入社案内を取り寄せました。

11月に学科試験を受け、翌年の1月に面接を受け、その時『バイク関係でないと入社しません』と伝えて帰ってきました。バイクでも開発関係、希望はテストライダーだと明確に伝えたんです。その後に入社が決まったので、1972年の3月末に明石に引っ越しました。新卒でテストライダーになるのは同期に1人いましたが、初めてだったみたいです。入社して1970年代はオフロード関連の開発が多かったですね。どろんこ遊びばっかりですよ(笑)」と齋藤さん。

こうして齋藤さんは1972年にカワサキに入社し、その後カワサキに48年間勤め、バイクとジェットスキーを含めて33機種を開発した。

―― 【Z1000J】齋藤さんが最初に担当したロードバイク。ロードバイクの経験がなかったこともあり、開発は苦労した。それでも齋藤さんにはとても思い出のあるバイク。最高速は220km/h(実測)ほど。

―― 【ZX-12R】最後に担当したのがZX-12Rだった。初めて最高速が300km/hを超えた。しかし、初期型以降はスピードリミッターが装着され、世界的に規制がどんどん厳しくなっていった。

カワサキ最速の系譜には齋藤さんがいる

「最初に担当したロードバイクはZ1000Jでした。Z1の乗り味を越えられなくて苦労しましたね。車体は走らないとわからない部分が多く、経験も知見もなく難しかった。キャスター/トレール/スイングアームの長さなど、ディメンションの変更はもちろんですが、フレームにパッチを当てたりしてね。

すべて手探りです。今はパッチを貼るなんかない。ディメンションを大きく変えてあっち行ったりこっち行ったりもしません。きちんと解析しながら作っていますね。

その後、GPX750Rなどを担当してGPZ1000RXあたりからフラッグシップに。この頃は他のメーカーも勢いがありましたよね。谷田部をぐるぐるぐるぐる、もの凄い勢いで走ってましたよ。0-400mも数えきれないほどやりました。

最高速はGPZ1000RXが260km/h、ZX-10が270km/h、ZZR1100(C)が280km/hと、新型になるタイミングで10km/hずつ上がっていったんです。ZZR1100(C)はテストでは290km/hを超えていて、ZZR1100(D)で『おっし、300km/hいくぞー』となったけれど、この頃からあまり過激なことができなくなっていきました。

―― 【ZZR1100(D)】フラッグシップブームを牽引し続け、様々なブームを巻き起こしたZZR1100。あまりの過熱ぶりに、D型では最高速のチューニングがされなかった。

―― 【Ninja H2R】「谷田部のバンクを260km/hぐらいで走り、直線でアクセル全開にすると一瞬で340km/h。本当に身体が震えましたね」と齋藤さん。カワサキらしい1台だ。

『カワサキはこうあるべきだ』みたいな教えはなくてね。とにかく先輩ライダーの背中を見ながら谷田部や富士スピードウエイを走りまくっていました。

面白いのは例えばGPZシリーズだと250/400/750/1100とバリエーションがあるけど、それぞれ全然乗り味が違う。テストライダーによって個性の出し方が違うんですよ。ホンダだったら全部同じような乗り味にすると思うんですけど、カワサキはできませんでしたね(笑)

カワサキは昔から、テストするのが谷田部か富士スピードウェイ。だから、ある意味、乗り味が大味なんです(笑) 乗れる人は乗れるけど、少しクセがある。でも乗りこなせれば楽しい。それがカワサキの味だったと思います。

今は違いますよ。例えばNinja ZX-10Rはとっつきやすい。一方でNinja H2Rみたいなインパクトのあるバイクを出せるのがカワサキなんです。

H2Rの加速には身体が震えました。340km/hまで一瞬。『テストライダー達も、ようあんなのテストしてたわ(笑)』と思いましたよ。でも速いバイクのテストは楽しいんですよ。やっぱりスピードはバイクの魅力のひとつなんです。

最後に担当した市販車はNinja ZX-12Rです。強烈でしたね。まだスピードリミッターがない時代、テストでは実測でも300km/hを超えました。フレームはモノコック、よく作ったなぁと思います。ただ、ライバルのスズキのハヤブサも良かった。どちらもインパクトがあるバイクでしたね」と齋藤さん。

そう、カワサキ最速の系譜には必ず齋藤さんがいた。300km/h! 320km/h! とユーザーも過熱していた時代だ。20年ほど前にお会いした齋藤さんは、いかにもカワサキのテストライダーというオーラを纏い、取材現場は緊張感に包まれていた。しかし、3年ほど前にケイファクトリーのテストライダーとして再会した斉藤さんの笑顔は、優しさとジェントルさに溢れていた。

それ以来、僕はケイファクトリーでこんな話を度々聞かせていただいている。とても貴重な時間をいただき、感謝である。

―― この日もケイファクトリーの仕上げた様々なカスタムバイクをテスト。

カスタムやメンテナンスをしながら長く乗り続けられるカワサキのバイク

「今でもカスタムやメンテナンスをしながら、昔のカワサキ車を乗ってもらえるのは嬉しいですよね。ありがたいことです。ゼファー/ローソン/GPZ900Rなどは、手をかけてコストもかけて乗ってもらっている。当時はこんなに長く乗ってもらえると思ってなかったんですけどね。想像もしてないですよ。やはり、スポーツバイクで長く乗ってもらおうと思って作るのは難しいと思います。W650とかであれば、長く乗ってもらうことも考えましたけどね。

カスタムパーツの充実やタイヤの進化も大きいですね。例えばケイファクトリーのGPZ900Rに乗っても、みんな乗り味が違う。一品モノですよね。当時の乗り味はないけれど、安定感があり乗りやすい。

スイングアームや各部の剛性の高さに驚きました。サスも硬めで、カスタムでこんなに硬くなるんだって思いました。昔は硬くしたくてもできませんでしたからね。

ケイファクトリーのカスタムバイクは、硬すぎるところを抜いたり、ハンドルの角度を変えたりと、しなやかで乗りやすい方向へと少しアジャストしていきます」と齋藤さん。

今回はケイファクトリーから程近い齋藤さんのテストコースをツーリング。バイクを完璧にコントロール下におき、少しリーンアウト気味に乗る齋藤さんの走りは健在。後ろからじっくりと観察する。

カワサキでエンジンや車体の過渡期を見てきた齋藤さんのノウハウは膨大だ。そのノウハウがケイファクトリーのバイクにフィードバックされていく。人生をカワサキに捧げた齋藤さんが、今はカスタムの世界にいる。それは、我々バイク好きにとって、とても嬉しいことである。

―― きちんと走るデモ車をつくるケイファクトリー。齋藤さんの知見が少しずつ、パーツ開発に注入されていっている。

こんな記事も読まれています

なぜ? 10歳児童に「過失100%」判決! 信号無視でクルマに衝突事故で。 「子どもだからといって無責任ではない」声も!? 何があったのか
なぜ? 10歳児童に「過失100%」判決! 信号無視でクルマに衝突事故で。 「子どもだからといって無責任ではない」声も!? 何があったのか
くるまのニュース
首都高パトロールがBMW Motorradのバイクを採用!通称「黄バイ」は交通違反を取り締まる?
首都高パトロールがBMW Motorradのバイクを採用!通称「黄バイ」は交通違反を取り締まる?
バイクのニュース
トヨタ、「GRハイラックス」6台体制でダカールラリー2025に挑む
トヨタ、「GRハイラックス」6台体制でダカールラリー2025に挑む
レスポンス
ヤマハ、「EVのF1」フォーミュラE初参戦へ「できる限り早く表彰台に」 12月7日開幕
ヤマハ、「EVのF1」フォーミュラE初参戦へ「できる限り早く表彰台に」 12月7日開幕
レスポンス
ホンダ 伝説の「ハンターカブ」がスゴい! めちゃ高い「走破性」で自由に“カスタム”できる! 気軽に「冒険気分」な「レジャーモデル」がカッコイイ! 「CT125」どんなバイク?
ホンダ 伝説の「ハンターカブ」がスゴい! めちゃ高い「走破性」で自由に“カスタム”できる! 気軽に「冒険気分」な「レジャーモデル」がカッコイイ! 「CT125」どんなバイク?
くるまのニュース
“スピードの神殿”モンツァ・サーキット、F1開催契約を2031年まで延長
“スピードの神殿”モンツァ・サーキット、F1開催契約を2031年まで延長
motorsport.com 日本版
ダイハツの「斬新軽トラック」がスゴい! 全長3.4mで「スゴいドア」に画期的すぎる荷台を採用! 超低床で乗り降りしやすいグリーンマシン「ツムツム」 どんなモデル?
ダイハツの「斬新軽トラック」がスゴい! 全長3.4mで「スゴいドア」に画期的すぎる荷台を採用! 超低床で乗り降りしやすいグリーンマシン「ツムツム」 どんなモデル?
くるまのニュース
電動アシスト自転車ブランド「PELTECH」が「TDA-207Zplus+」を発売!走行性に拘った最強27.5インチ”フル装備クロスバイク登場
電動アシスト自転車ブランド「PELTECH」が「TDA-207Zplus+」を発売!走行性に拘った最強27.5インチ”フル装備クロスバイク登場
バイクのニュース
長岡技術科学大学の自動車部には想像の斜め上をいくクルマ好きがわんさか! フォーミュラ・ジムカーナ2024日本一の大学に潜入してみた
長岡技術科学大学の自動車部には想像の斜め上をいくクルマ好きがわんさか! フォーミュラ・ジムカーナ2024日本一の大学に潜入してみた
WEB CARTOP
ボディカラーに上質なグレーマグネシオメタリックを纏ったジープ・コマンダーの限定モデルが日本上陸
ボディカラーに上質なグレーマグネシオメタリックを纏ったジープ・コマンダーの限定モデルが日本上陸
カー・アンド・ドライバー
日本電解、民事再生法を申請 負債総額148億円 北米のEV需要減退などで
日本電解、民事再生法を申請 負債総額148億円 北米のEV需要減退などで
日刊自動車新聞
アウディ、新型クーペSUV『Q5スポーツバック』発表、「MHEVプラス」で燃費追求
アウディ、新型クーペSUV『Q5スポーツバック』発表、「MHEVプラス」で燃費追求
レスポンス
【欧州で大人気のミニキャンパー】フィアット製ハイルーフエステートをモーターホームに フィアット ドブロのおひとり様キャンパー登場!
【欧州で大人気のミニキャンパー】フィアット製ハイルーフエステートをモーターホームに フィアット ドブロのおひとり様キャンパー登場!
AutoBild Japan
広島~岡山「無料で信号ゼロ」実現!? 壮大な「倉敷福山道路」が整備進行中 “大渋滞”国道2号をスルーする「悲願の高規格道路」どこまで進んだのか
広島~岡山「無料で信号ゼロ」実現!? 壮大な「倉敷福山道路」が整備進行中 “大渋滞”国道2号をスルーする「悲願の高規格道路」どこまで進んだのか
くるまのニュース
レクサス『LC500』にホイールを誤って装着…リコール
レクサス『LC500』にホイールを誤って装着…リコール
レスポンス
メルセデス・ベンツ「W124」誕生40年 「Eクラス」へと続く124シリーズが いまなお“名車”と称賛され続ける理由とは
メルセデス・ベンツ「W124」誕生40年 「Eクラス」へと続く124シリーズが いまなお“名車”と称賛され続ける理由とは
VAGUE
ニッポンの新たな風景「JPNタクシー」の存続が難しいとのウワサ! 後継車も出ないなら日本製タクシー専用車はゼロになる!!
ニッポンの新たな風景「JPNタクシー」の存続が難しいとのウワサ! 後継車も出ないなら日本製タクシー専用車はゼロになる!!
WEB CARTOP
F1世界王者フェルスタッペンが抱えた苦悩をレッドブル代表が明かす「みんなの予想以上に彼は批判に敏感なんだ」
F1世界王者フェルスタッペンが抱えた苦悩をレッドブル代表が明かす「みんなの予想以上に彼は批判に敏感なんだ」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

3件
  • 先輩が自称カワサキのテストライダーが経営しているバイク屋で旧車を買ったが、なかなか酷かった。
  • 齋藤さん!8耐のニンジャで肘を上げて走る姿が最高にカッコ良かったです!あの姿に憧れてGPZ750(空冷ね)を買ってライムグリーンに全塗装したけど、レイニーレプリカじゃ無くてシートが青のチームグリーン仕様にしてました。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村