■クルマ漫画の金字塔「頭文字D」に登場したクルマ
ハチロクことAE86型トヨタ「スプリンタートレノ」を有名にしたコミック「頭文字D」は1995年から講談社「週刊ヤングマガジン」で連載していました。
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公道最速を目指す「走り屋」をテーマにして、アニメやOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)、実写映画も制作された人気作品です。
主人公の「藤原拓海(ふじわら たくみ)」がスプリンタートレノに乗り、早朝に家業の豆腐屋の配送を手伝っているうちに、特殊な感性とドライビングテクニックを身につけ、その後、走り屋としての才能を開花していくという物語です。
作中ではスプリンタートレノ以外にライバルとして実際に走り屋から愛されたクルマたちが登場します。
そこで、名作とも呼ばれる頭文字Dに登場したクルマのなかから、印象に残った5車種をピックアップして紹介します。
●トヨタ「スプリンタートレノ」(藤原拓海)
頭文字Dの主人公で、いつもボケっとしている高校生の藤原拓海がドライブするのは、AE86型トヨタ「スプリンタートレノ」で、マイナーチェンジ前のツートンカラーであることから、グレードは「GT-APEX」とされています。ホームコースにちなんで「秋名のハチロク」、カラーリングから「パンダトレノ」とも呼ばれました。
連載開始直後は大きなモディファイはされていませんでしたが、作中でグループA用のレースエンジンに換装されるなど徐々に改造が過激になっていきます。
改造に併せて変更されていくパーツを見るだけでも、モディファイ好きには楽しめるポイントです。
AE86型は軽量な車体に高回転型のエンジンを搭載し、実際に走り屋に愛されましたが、サスペンションは先代のTE71型との共通部品が多いリジット(リア)で限界が低かったともいわれています。
しかし、タイヤがブレイクしやすいことから簡単にドリフト姿勢に持ち込める利点があり、80年代終わりに始まったチューニングカー雑誌主催のドリフトコンテストにも、多くのハチロクが集まっていました。
現在では旧車として人気が高まっているAE86型スプリンタートレノですが、最終型でも生産終了から30年以上経過しており、程度の良い車両はほとんど残っていないのが実情です。
●マツダ「サバンナRX-7」(高橋涼介)
高橋涼介は、関東最速を目指して赤城山に集う優秀なドライバーを集めたチーム「赤城レッドサンズ」のリーダーで創設者です。
地元のバトルではどんな相手にでも勝てることから、あえて相手が得意とするコースでのバトルを主体にしていました。
様々なジャンルのモータースポーツで無敗を誇りながら、病院院長の長男として医学部に通っていて、関東全域に最速の名を残したら走り屋を引退することを決めていました。
この赤城レッドサンズの関東完全制圧のため、群馬県内の精鋭走り屋を集めたチームが「プロジェクトD」で、主人公の藤原拓海もそこに加わります。
作中に登場する白いFC3S型マツダ「サバンナRX-7」は、外観が後期モデルで2シーターであることから、グレードは限定車の「∞(アンフィニ)III」とされています。
ホイールやミラーが途中で変更され、マフラーも右出しから左出しになるなど、拓海のスプリンタートレノと同様にディテールにこだわって描かれているのも面白い点です。
中古車市場でも白いFC3S型サバンナRX-7は人気で、わざわざ色替えして白にされたクルマも多く見かけるほど、コミックの影響を受けています。
●マツダ(アンフィニ)「RX-7」(高橋啓介)
「赤城レッドサンズ」のナンバー2で、高橋涼介の弟である高橋啓介は、関東完全制圧を目指す「プロジェクトD」のヒルクライム(上りコース)担当です。
キャラクター設定上は元暴走族で、兄の涼介の助手席に乗り、ダウンヒルを全開で駆け下りる走りを体験してからスポーツドライビングの虜となります。
拓海が初めて対戦する相手が啓介でしたが、拓海に負けてしまってからは常にライバル心を持っていました。
コミックに登場する啓介の黄色いFD3S型マツダ(アンフィニ)「RX-7」は、そのボディカラーからFD3S初期モデルの「Type R」グレードといわれています。
拓海のスプリンタートレノ、涼介のサバンナRX-7と同様に、作中でもさまざまなパーツが細かく描写されています。
ただ、コミックでのキャラクター設定からよい印象を持たれていないからか、黄色いRX-7は中古車市場でそれほど人気は出ていないようです。
■中古車価格が高騰中のスカイラインGT-Rも登場
●日産「スカイラインGT-R」(中里毅)
少しやんちゃな走り屋チームである「妙義ナイトキッズ」のリーダー中里毅は、ドリフト走行ではなくタイム狙いのグリップ走行派です。
日産「スカイラインGT-R」に乗ってからは敵がいなくなってしまい、赤城レッドサンズの啓介を破った拓海に挑戦しますが、最後はオーバーステアでガードレールにヒットし、敗れてしまいます。
作中に描かれているのはR32型スカイラインGT-Rで、ニスモ製フロントバンパーを装着した「VスペックII」グレードのようで、ホイールはデザインからWORK製と判断できます。そのほか装着されているモディファイパーツについては細かい描写はないようです。
R32型スカイラインGT-Rは映画やゲームの影響もあり、旧車として輸入できるようになったアメリカでの人気が高いため、ここ数年は中古車価格が高騰し続けています。
すでに日本国内でもコレクターズアイテム化が進んでいるようです。
●ホンダ「シビック SiR-II」
中里毅と同じ「妙義ナイトキッズ」のメンバーでホンダ「シビック」を駆る庄司慎吾は、中里のスカイラインGT-Rよりもダウンヒルでは速いですが、バトル相手のクルマに接触させてミスを誘発させるなど、勝つためには手段を選ばないため、同じチームでありながら中里とは対立していました。そして中里が負けた「秋名のハチロク」に勝負を挑みます。
庄司のシビックはEG6型「シビック SiR-II」で、作中で確認できるメジャーメーカーのモディファイパーツは無限製ホイールくらいですが、中里のスカイラインGT-Rと同様にマフラーなどは細かい描写がないために、そのほかは不明です。
頭文字Dの連載が開始された1990年代半ばには、走り屋が集まる峠に行くと、必ず元気に走り回るEG6型シビックを見かけるくらい人気でした。
いまとなっては旧車の仲間入りをしそうな年式(1991年から販売)ですが、販売台数が多かったことから、現在でも中古車の流通台数は多いほうです。
※ ※ ※
作者がクルマ好きということもあり、実際に1990年代の走り屋たちが好んで乗っていたクルマが、当時のモディファイの雰囲気を持ったまま数多く登場しています。
また、登場キャラクターも「このクルマには、こんなタイプの人が乗っていそう」と思える部分もあり、そんなところも楽しめる要因ではないでしょうか。
2013年の連載終了後も高い人気が続いている頭文字Dですので、続編を待ち望んでいるファンも多いようです。
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