2019-20年シリーズから完全電動化を果たしている、フランスが誇る伝統の氷上シリーズ『e-Trophee Andros(アンドロス・e-トロフィー)』の2022-23年シーズンが全6戦で争われ、1月28日にクレルモン=フェランで開催された最終戦では、最高峰エリート・プロ参戦わずか3戦目、地元フランス出身のWRC世界ラリー選手権レギュラーのアドリアン・フルモー(AS01/チームDRP)が初優勝をマークした。
チャンピオンシップでは、ヤン・エルラシェール(AS01/Mレーシング)やナサニエル・ベルトン(プジョー・e208/SPコンペティション)ら強豪ひしめくクラスを生き抜き、初代EV王者でもあるオーレリアン・パニス(アウディA1/サンテロック・レーシング)が、前戦第5戦の結果により2020年以来のタイトル奪還を果たしている。
雪と氷のRoCスウェーデン大会は、国別のソルベルグ親子に続きエクストロームが最多勝に並ぶ4勝目
完全電気自動車によるEV新時代に突入し、今季で4年目を迎えた氷上の格闘技シリーズは、時代の要請も受けて早期の取り組みを開始しており、2010-11年シーズンから“アンドロス・エレクトリック”という電動クラスを新設し、段階的にEV化の方向性を探ってきた。
最終的に上位2クラスの完全電動化に併せて、伝統の4WDと4WS(4輪操舵機構)の構造は維持しつつ、エキサゴン・エンジニアリングによって開発されたワンメイクシャシー『アンドロス・スポーツ01(AS01)』を採用。350馬力を発生する2基の電気モーターを搭載したEV車両クラスが頂点に据えられている。
こうして冬季2カ月間の短期決戦で争われる伝統のアイスレースは、昨年12月開幕のヴァル・トランス以降、シリーズ5戦を経てグランド・フィナーレを迎え、アルプス中央山塊を代表する都市クレルモン=フェランから約20kmにあるスノーリゾート、恒例のシュペール=ベスが舞台となった。
今季2022-23年シーズン最大の話題は、開幕を前にイバン・ミューラーの復帰がアナウンスされたことで、前人未到、伝説の“シリーズ10冠保持者”でもあるレジェンドは、WTCR世界ツーリングカー・カップ時代と同様に甥っ子のエルラシェールとチームを結成。過去3シーズンはMレーシングのチームマネージャーに徹していた男が、自身のキャリアを世界に羽ばたかせる契機になった舞台での再挑戦を決めた。
また、最終戦を前にして、自身の名を冠したセバスチャン・ローブ・レーシング(SLR)を率いる盟主セバスチャン・ローブが、同週末にスウェーデンで開催されたRoCレース・オブ・チャンピオンズの2023年大会に出場するべく欠席となり、その豪華代役としてWEC世界耐久選手権王者であり、ル・マン24時間で3回の勝利を記録する、おなじみブノワ・トレルイエが招聘された。
■強豪を抑え3年ぶりのタイトル奪還
そのアンドロス・e-トロフィーでは、当日2回の予選ヒートを戦い、その後スーパーポール・セッションとスーパー・フィナーレを戦うフォーマットを採用。各セッションの順位に応じた総合獲得ポイントで勝者が決まる仕組みとなり、標準的なラリークロス競技のようにファイナルの決勝ヒートでトップチェッカーを受けたドライバーが、そのまま週末全体のウイナーとはならない可能性もある。
このフォーマットを活かしたのが初代王者のパニスで、開幕以降の各2ヒート開催の週末で着実に勝利を重ねると、第4戦テーニュが天候不順で中止となった影響もあり、地元となる第5戦ラン=アン=ヴェルコールではエルラシェールと予選ヒート最速を分け合いつつ、ファイナルではポールからのスタートに。
ライトが消えてすぐ、ライバルへのドアを閉じる動きを見せたシリーズリーダーのパニスだったが、その数秒後にはWTCR連覇も経験したエルラシェールが豪快なオーバーテイクを披露し、ラップレコードのポイントも加算する快走でトップチェッカー。
2位パニス、3位ベルトンの順でフィニッシュラインを越えたが、週末のポイント分類で首位となったパニスが、今季快調のドリアン・ボコラッチ(AS01/SLR)や、内燃機関時代終盤のシリーズ4連覇から、EV時代でも初代パニス以降で連覇を達成し通算6度のタイトル保持者となったジャン-バティスト・デュブール(ルノーZOE/DAレーシング)らを退け、約3年ぶりのチャンピオンを確定させた。
その翌週開催となった最終戦では、土曜1ヒート勝負でフルモーが躍動。WRCではMスポーツ・フォードで修行を重ねる27歳が、シリーズの主であるデュブールや、地元出身のベルトンを相手に予選から先行し、ファイナルでも首位のままフィニッシュ。デビューイヤーで初勝利を手にする結果となった。
一方、そのエリート・プロとマシンをシェアするエリート・クラスでは、リジェやウイリアムズで活躍したフランス出身の元F1ドライバー、ジャック・ラフィットの愛娘であるマルゴを退け、スポーツジャーナリストのジュリアン・フェブロー(ルノーZOE/DAレーシング)がチャンピオンに輝いている。
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