FRスポーツを開発したトヨタとマツダのエンジニアがトークショー
ゴールデンウィーク中(5月3日、4日、5日)に広島県で、ひろしまフラワーフェスティバルというイベントが開催された。その初日のイベントとして、平和大通り(1.2キロ)をパレードするという人気コンテンツがあるのだが、5年前からクルマのパレードも行われるようになり、そこにトヨタ86&スバルBRZと、マツダ・ロードスターが、それぞれオーナーチームで参加している。
ロードスター側には、元開発責任者の貴島孝雄さんが5年前からオーナーのみなさんと一緒に参加していた。今年は、86ユーザーの代表である高木 豊さんの強い要望に応えるべく、86の生みの親である多田哲哉さんもフラワーフェスティバルのパレードに参加することになった。
例年であれば、パレードを行って終了するイベントであったのだが、今年はひと味違っていた。せっかくロードスターの元開発責任者の貴島さんと、86生みの親である多田さんが揃うということで、トークショーを行うことになったのだ。
会場となったのは、広島トヨペットが運営している『CLIP HIROSHIMA(クリップ・ヒロシマ)』。この店舗は、東千田町にある広島大学跡地に設けられた情報発信基地ということをコンセプトとしていて、ディーラーが展開しているお店でありながら、クルマの販売は行わないという、とても素敵な空間となっている。1階はイベントスペースで、2階にはカフェやナレッジルームが設置されていて、さまざまな催しで利用されているのだ。
パレードランを終えた86&BRZの30台とロードスター30台は、クリップ・ヒロシマに大集合。店舗の前に並べられたロードスターと86&BRZの姿は圧巻の光景。数あるユーザーイベントのなかでも、異なる2車種が一緒になるということは珍しいことである。すべては、今回のイベントで、場所を提供していただいたクリップ・ヒロシマさんの寛大な心と、スポーツカーカルチャーを広めていきたいという、両車オーナーたちのアツいハートが結びつけたといっても過言ではないだろう。
じつは、貴島さんと多田さんは、メーカーは違えどこれまでに何度かトークショーを行っている。多田さんが86の開発を始めた当初、貴島さんにスポーツカーづくりについて相談したという話は有名で、貴島さんは、86の発表会で登壇までされた方である。なにかと接点のある関係ではあったのだ。
約30分のトークショーでは、スポーツカー開発にまつわる、さまざまな面白い話が繰り広げられたのだが、なかでも注目すべき内容だったのが、モデルチェンジについての話題であった。86&BRZも発売から今年で5年、そろそろフルモデルチェンジの噂が聞こえてくる。それぞれのモデルチェンジについての想いを話していただいた。
貴島「本当はスポーツカーというのは、モデルチェンジしたくはないんです。スタートしたままのカタチで世界的に継続的に販売できるのであれば、モデルチェンジする必要はないと思うんです」
「私は2代目ロードスターから開発責任者になったわけですけど、レギュレーション的に初代を販売できない国が出てきたために、2代目を開発することになったんです。それは、たとえば初代のリトラクタブルヘッドライトの前方下方視界というのがヨーロッパのレギュレーションにマッチしなくなってしまったわけです。その他、安全面の強化なども含めて大体5年ぐらいでレギュレーションは変更されます。モデルが陳腐化したから変えるという理由からモデルチェンジするようなスポーツカーは、スタートからダメだと思います。ただし、初代の持っている良さというのはなくしてはいけないと思うんです」
多田「86を発売したときに、世界中多くの86ユーザーにヒアリングをしに行きました。そこで、モデルチェンジするとしたら、どんなカタチが嬉しいですか? と、世界中で質問したんですけど90%ぐらいの方からやめほしい、と言われました。バージョンアップはして欲しいけど、モデルチェンジはやめてほしい。そんな声が大きかったんです」
「だからといって、何もしないのが良いのか、じつに悩ましいところなのです。現行オーナーのみなさんが、それだけ86を愛していてくれてということは理解できましたし、中途半場なモデルチェンジだったらしないほうがいい。そういうさまざまな想いを超えていくために、どうすればいいのか真剣に悩んでます」
上記のように、スポーツカーのモデルチェンジについては、さまざまな想いが交錯しているようである。そんななかロードスターは確実にグレードアップしてきたわけで、かといって初代のスピリッツを捨ててしまったわけではない。ぜひとも86&BRZも、初代の良いところを活かしたモデルチェンジを期待したいところである。
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