ゴルフ・シリーズのトップパフォーマンスモデル、ゴルフRは2014年2月から発売されているが、ステーションワゴンタイプのゴルフR ヴァリアントが2015年6月に追加され、ようやく試乗するチャンスがやってきた。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>
ゴルフRは、ゴルフ・シリーズの中で最も高性能なモデルというポジショニングは間違いではないが、より正確に言えば大量生産される普通のゴルフと出来は全く異なり、フォルクスワーゲンの、モータースポーツ&スペシャルカーの開発製造を担当する専門の子会社「R GmbH」が造り上げた特別なスポーツモデルなのだ。
R GmbHの設立は2010年と比較的新しいが、世界ラリー選手権を戦う「ポロR WRC」の開発・製造から市販用のRモデルの開発・製造、フォルクスワーゲン用のスポーツ・デザインである「Rライン」パーツの開発、フォルクスワーゲンの高級カスタム化の業務を担当している。こうした業務を遂行するにあたり、R GmbHにはグループ内のスペシャリストが集結しているという。
ゴルフR、Rヴァリアントの開発はR GmbHのメンバーにとって最も重要な仕事で、エンジンはもちろん、ボディ、シャシーなどすべてを超高性能でしかもエクスクルーシブに、日常の使い勝手と非日常のダイナミズムを両立させるというコンセプトである。そういう意味で、普通のゴルフとは目指すところが違うのだ。
ゴルフGTIはアウトバーンで上級スポーツセダンをぶち抜くGTカー、という位置付けだが、Rは高性能GTという性格だけでなくサーキットも平然と走ることができる性能が与えられているという点にも違いがあり、GTIとRはエクステリアのデザイン・テイストまで異なっている。
エクステリアは、専用のデザインを採用しているが、デザインはこれ見よがしの視覚的に攻撃的な部分は抑えられているのが渋い。インテリアはR専用の上質な本革巻きステアリング、ブラックの本革パワーシートで、もちろんシートバックには「R」のロゴが入る。インテリアの雰囲気は、スポーツ性と高級感が巧みに融合されており、500万円を超える価格に見合った質感だ。
Rヴァリアントのボディサイズは、全長4595mm(ハッチバックの+330mm)、ホイールベースはハッチバックと共通の2635mmで、しかも最小回転半径5.2mと小回り性も十分だ。車両重量はハッチバックより60kg重い1560kg。標準モデルのヴァリアント 1.4 TSIハイラインが1380kgだから2.0TSIを搭載した4WDという車両のスペックの割に軽量にまとめられている。
搭載されるエンジンはEA888型4気筒2.0L直噴ターボエンジンで、日常での扱いやすや燃費性能も考慮した特性が与えられ、280ps/5100-6500rpm、380Nm/1800-5100rpmという出力となっている。ヨーロッパ仕様は300psで、日本向けが20ps出力を抑えているのは日本市場は熱帯地域に分類されているためで、冷却や高負荷時の点火時期に余裕を与えているのだという。おそらく点火時期とピークの過給圧を少し押さえているのだろう。
ということでRバリアントのエンジンは高出力エンジンではあるが、過激という感じではなく、市街地など常用域でのフレキシビリティや扱いやすさも兼ね備えていると受け止めてよいだろう。また、R GmbHが考える究極の高出力エンジンとしては400ps仕様も用意されているとも伝えられる。
このEA888型エンジンはアイドリングストップシステム、ブレーキエネルギー回生システムで構成される「BlueMotion Technology(ブルーモーションテクノロジー)」も搭載し、JC08モード燃費は14.2km/L。
トランスミッションは大トルクに対応できる湿式6速DSGで、第5世代のハルデックスカップリングを組み合わせた4WDを採用している。ハルデックス・カップリングは現在ではオンデマンド式というより、走行と運転の状況に合わせたプレビュートルク制御により後輪に積極的に必要な駆動トルクを配分するシステムになっている。
アクセルを踏み込んで走り出すと、分厚いトルク感が印象的だ。エンジンパワーについては2.0Lターボで300ps以上の出力を発生するスポーツモデルに、スバルWRX STIやレヴォーグ2.0GTなど、国産モデルにもいくつか存在しており、ゴルフ Rヴァリアントのパワー感や加速感は驚くほどではない。が、どの回転域でもアクセルを踏み込めば加速に移る、分厚いトルク・フィーリングは力強く感じる。ちなみに0-100km/h加速は5.1秒だ。
こうしたトルク感にプラスして加速時の低音で響くエキゾーストサウンドの迫力、シフトチェンジした瞬間のボボッという排気逆流音の響きはドライバーの気持ちを否応なく高揚させる。こうしたサウンドの演出はゴルフGTIをはるかに凌ぎ、Rモデルならではの境地だ。
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