シーズン残り2戦でタイトル争いも大詰めを迎えたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権。その第9戦が9月28~29日にシルバーストンで開催され、BTCCを代表する名物ドライバーの“悪童”ことジェイソン・プラト(ボクスホール・アストラBTCC)がひさびさの予選ポールポジションを獲得。しかし、そのプラトの奮闘を打ち破った新型トヨタ・カローラBTCCのトム・イングラムがオープニングから連勝を飾り、チャンピオン争いも5人に可能性が残る波乱の週末となった。
ノーサンプトンシャーに位置するイングランドを代表する国際サーキットでの週末は、公式練習の時点からパワーマックスド・レーシングの大ベテランがセッションをリード。FP1、FP2ともに最速を記録したプラトは、その勢いをキープしたまま予選セッションへ。
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2番手BTCレーシングのクリス・スマイリー(FK8ホンダ・シビック・タイプR)に0.055秒差、3番手ハルフォーズ・ユアサ・レーシングのマット・ニール(FK8ホンダ・シビック・タイプR)に0.059秒差という超タイトなポール争いを制し、2017年ここシルバーストン以来の最前列を獲得した。
すると週末3ヒート初戦のレース1スタートでは、フロントロウに並んだスマイリーが失速するのを尻目に、シビック2台の背後となるセカンドロウ4番グリッドにいたチーム・トヨタGBウィズ・スピードワークス・モータースポーツのイングラムがロケットスタート。
ポールシッター、プラトの背後2番手にジャンプアップしてオープニングラップを終えると、そのままふたりは後続を引き離してのバトルを展開する。すると5周目に突入するコントロールラインで、最終コーナーからのトラクション競争で競り勝ったイングラムが前に出て、このオーバーテイクが実質的にレースの行方を決定づける動きとなった。
続くコプスへの進入でお互いのマシンにドアを擦り付けながら応戦したプラトだったが、イングラムを抑えることは出来ず、3番手スマイリーとともに22周のチェッカー。イングラムが今季デビューの新型マシンに3勝目をプレゼントする結果となった。
一方、同じく新型マシンのBMW330i Mスポーツでタイトル争いを牽引するTeam BMW、ウエスト・サリー・レーシング(WSR)の王者コリン・ターキントンは、予選6番手から僚友のBMW Pirtek Racing、アンドリュー・ジョーダン(BMW330i Mスポーツ)や、チーム・ダイナミクスのダン・カミッシュ(FK8ホンダ・シビック・タイプR)らを上回るレースペースを披露する。
しかし8周目の最終コーナーで他車のアクシデントに巻き込まれ、まさかのスピンオフ。これでトップ20圏外に転落し、中団までカムバックしての2ポイント加算が精一杯に。レース1終了時点で、タイトル争いには数字上の可能性で10人以上が名を連ねる、大混戦の様相となってきた。
その緊迫したタイトル争いをさらに演出するかのように、現地14時35分からのレース2もドラマに満ちた展開となり、レース1勝者イングラムがポールから隊列を引っ張ると、10周目のウェリントンストレート・エンドで2番手プラトが仕掛け、このバトルでカローラ、アストラともにラインを乱して失速。その間隙を突いたWSRのトム・オリファント(BMW330i Mスポーツ)が首位浮上に成功する。
しかし直後に雨粒がトラックを濡らし始め、マックツールズ・ウィズ・シセリー・モータースポーツのアダム・モーガン(メルセデス・ベンツAクラス)が堪えきれずスピン。これでセーフティカー(SC)導入が宣言される。
するとリスタートでは先頭のオリファントがダンプ路面でワイドになったのを見逃さず、イングラムがふたたびトップランを奪還。19周目に赤旗掲示でレースフィニッシュとなるまでポジションを守り切り連勝を果たすが、その背後ではタイトル争いを左右するドラマが発生していた。
レース1を14位で終えていた選手権リーダーのターキントンは、序盤のチャージで6周目にトップ10圏内へ浮上すると、WSRのジョーダンらを仕留めてすぐさま7番手にまでポジションを挽回。雨が落ち始める中、カミッシュらとワイドラインになりながらのサイド・バイ・サイドを展開し、プラトのボクスホールをパスしたところでSC導入となる。
この瞬間、ターキントンの背後でバトルを演じていたジョーダンとカミッシュは、SCボードが掲示されたことに気づかず混乱した状況のまま勝負を続け、カミッシュのシビックが接触しながらBMWの前へ。レース後に「SC先導中の接触、追い抜き行為だ」と、ジョーダンは怒り心頭の8位フィニッシュに甘んじると、その2台と対照的な動きを見せたのがターキントン。
リスタートでプラトの前にいた王者は、チームメイトがラインを譲るかのようにワイドになり、これでイングラムに続く2番手に浮上。貴重な18点を加算して、ポイントリードを拡大することに成功した。
結局カミッシュはレース後に罰金裁定を受け3点のペナルティポイントが加算されたものの、リザルトに影響はなく、ランク首位ターキントンと2位カミッシュは11ポイント差でレース3へ。
午後17時20分からのレースはスタート前の雨により本格的ウエットとなり、スタート直後にレインに履き替えるか、スリックでステイアウトか、各陣営の戦略が入り乱れる混沌のレース展開になっていく。
このサバイバルを勝ち抜いたのは、ユーロテック・レーシング・ホンダの活動休止により、今季チームHARDに拾われた伏兵ジャック・ゴフで、RCIBインシュアランス・ウィズ・フォックストランスポートのフォルクスワーゲンCCがピットへと飛び込んだ直後に他車のクラッシュによるSCが導入され、このタイミングが決定的に。
同じ状況でピットにいたレーザーツールズ・レーシングのエイデン・モファット(インフィニティQ50BTCC)とともに、リスタート後はライバル陣営が続々と後方へ退く中でフィールドを突破し、コプスでスピンしたインフィニティに7秒もの大差をつけてトップチェッカー。昨季はFK2シビックで何度もポールを獲得したスピードスターが、チームHARDにBTCC初勝利をプレゼントする劇的な結末となった。
この混戦を7位、8位で終えたWSRのターキントンとジョーダンは、281点のカミッシュを挟んで、それぞれ297点と280点で10月12~13日の最終戦ブランズハッチへ。同じくランキング4位のBTC Racing、ジョシュ・クック(FK8ホンダ・シビック・タイプR)、5位イングラムの5人にタイトル獲得の可能性が残された。
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