■6世代にわたって進化を続けた「HSR」シリーズ
三菱自動車工業(以下、三菱)といえば、電動化技術や四輪駆動制御技術「S-AWC」など、先進的な技術を持つメーカーというイメージがあります。そんな先進技術は一朝一夕で生まれたものではなく、1980年代から先を見据えた開発をコツコツと続けてきたという過去があるのです。
そんな先進技術の研究開発の歴史を垣間見ることができるのが、1987年の第27回「東京モーターショー」に出展された「HSR」というコンセプトカーです。
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HSRは一見すると近未来の戦闘機のようなデザインのボディを身にまとったクーペで、モーターショー出展のコンセプトカーによくある“ハリボテマシン”のようにも思えます。
中身は同年に登場した6代目「ギャラン VR-4」と共通したメカニズムを持っており、心臓部には後に「ランサーエボリューション」にも搭載される2リッター 直列4気筒「4G63」ターボエンジンを搭載。
大型のターボチャージャーやインタークーラー、エンジンの高回転化などのチューニングを施し、295psを発生させていました。
ボディはスチール製のフロアにパイプフレームのキャビンを組み合わせ、ケプラーやポリカーボネート素材のボディパネルで構成されます。
軽量さはもちろん、空力性能を示すCd値(0に近いほど空気抵抗が少ない)は、当時としては驚異的な0.20を実現したことで、テストコースで300km/h超の速度で巡行できるポテンシャルを持ち合わせていたのでした。
なお駆動方式はギャランVR-4譲りの4WDに「4WS」や「4輪ABS」、そして4輪独立サスペンションには独立制御のダンパーが備わります。
しかもこれらを統合制御して安定した走りを実現するという、現在のS-AWCと同じ考えのもとで作り上げられていました。
ちなみにHSRは2年ごとに開催された東京モーターショーに継続して出展され続けています。
1989年に登場した「HSR-II」では、現在の「アダプティブクルーズコントロール」や「自動駐車」に近いシステムが搭載されました。
1991年の「HSR-III」は一転オープンボディとなり、エンジンもメタノール混合燃料に対応した1.6リッターV型6気筒と小型化します。
1993年の「HSR-IV」になると、オープンのほかタルガトップとクーペにも電動で変化できるようになり、駆動力と制動力を4輪に適正配分するシステムを搭載。
さらに「自動運転システム」も搭載しているとされていました。
1995年の「HSR-V」では、HSRシリーズとしては初めてエンジンをミッドシップに搭載し、2人乗りのパーソナルカーとなりました。
ドライバーの体格や走行状況に応じて着座位置や車高、フロントウィンドウの角度までが可変するとされ、「AYC」(アクティブヨーコントロール)を搭載することで軽快な走りを実現したとアナウンスされています。
そして通算6代目、最後のHSRシリーズとなった1997年の「HSR-VI」ではガルウィング化がなされました。
また自動運転モードとドライバー操縦モードでキャビンの形状が変わるという大掛かりな機構も採用。
室内にはワイドディスプレイが設置され、自動運転モードではペダルレスとなるなど、かなり攻めた先進モビリティとなっていました。
結局HSRシリーズは市販されることはありませんでしたが、もともとHSRの“R”は「リサーチ」の頭文字であったことからも、あくまで研究のためのモデルであり、その研究が現在の三菱車に活かされていることは紛れもない事実と言えるでしょう。
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隠蔽が発覚で市販可しなかっただけ