2018年5月9日、アウディはドイツ・インゴルシュタットで株主総会を開催し、フォルクスワーゲン・グループを代表して新任のヘルムート・ディース会長が挨拶し、それに続き、アウディ取締役会の代表ルパート・シュタートラー会長が「Audi.Vorsprung.2025」と名付けた最新の企業戦略を発表した。
この新戦略では、2025年に約80万台の電気自動車とプラグインハイブリッドを販売することを目標とし、2020年代の半ばまでに3人に1人の顧客に電動化モデルを選択できるようにする。そのためには、すべてのモデル・ラインアップに電動化バージョンを設定する必要があり、その大分部は電気自動車で、一部はプラグインハイブリッド車とする計画だという。
アウディ「A3」「TTクーペ」「Q3」のコンパクト3車種にSライン限定モデル設定
こうした戦略を実現するためには、数10億ユーロに上る投資の財源を確保が必要で、アウディは2017年末に「変革を目指すアクションプラン(Action and Transformation Plan)」を採択している。
そのプランによれば、新たな収入源を開拓し、コスト構造を改善し、新しいビジネスモデルを構築するために企業の変革を加速することを目的としている。そして今後の投資対象は大幅に拡大され、2025年までに約400億ユーロがeモビリティ、自動運転、デジタル化といった戦略的分野に投下されるのだ。同時に生産分野のデジタル化にも投資が行なわれる。
ーールパート・シュタートラー会長
「私たちの視線は、常にアウディのスローガンであるVorsprung durch Technik(技術による先進)の実現と継続に向けられています。私たちの目標は、モビリティに革命を起こすことです。私たちはeモビリティの分野で、プレミアムメーカーのリーディングカンパニーになりたいと考えています。そのためには、日常ユースへの完全な適合性、最高の品質、優れたドライビングプレジャーを持つ妥協のない製品をお客様に提供する必要があります。アウディが備える卓越した技術により、私たちはVorsprung(先進性)を製品に適用し、eモビリティを次のレベルへと引き上げます」と語っている。
現在公道を試験走行しているe-tronプロトタイプの市販化モデルは、「Roadmap E」と呼ばれる電動化推進計画に従って最初に実行されることになっている。つまり、アウディは2025年までにすべてのモデルラインアップを電動化する予定で、そのためには、ドイツのインゴルシュタット本社、ネッカーズルム工場に対する投資と、2025年末までの雇用保障から成っている。
今後の製品攻勢としては、2025年までに20以上の電動化モデルを投入する計画が立てられており、2019年には、e-tronスポーツバックが2番目の電気自動車として発売される。そして2020年にアウディ・スポーツ社から「e-tron GT」が登場し、プレミアム・コンパクト・セグメントにも電気自動車を投入する予定としている。
「Roadmap E」に基づき、アウディはフォルクスワーゲン・グループのフォルクスワーゲンとポルシェという企業2社と共同開発を実施することにより、相乗効果を生み出す。コンパクトセグメント用にフォルクスワーゲンが開発したモジュラー・エレクトリック・ツールキット(MEB)に加え、アウディとポルシェは、ミッドサイズ、フルサイズ、ラグジュアリークラスの電気自動車向けのプレミアム・アーキテクチャーの開発で協力している。これらの共同プロジェクトにより、開発コストが大幅に削減され、ゼロエミッションカーの幅広いラインアップがより早いタイミングで市販化できるということを意味しているのだ。
またアウディは、eモビリティの推進と同時に、生産拠点でも低CO2対策を採用しいる。ブリュッセルで生産される「e-tron」は、認証済みのCO2ニュートラルな工場で生産される初めてのプレミアムカーとなり、また2030年までには、世界中のすべての生産拠点をCO2ニュートラルにする予定だという。
電動化の実現に合わせ、ヨーロッパのユーザーは「e-tron」の市場導入時に、従来より高性能な充電インフラが展開される。アウディは、欧州における超急速充電ネットワークの新会社である「イオニティ(IONITY)」に共同出資することで、新たなインフラの発展を加速させる予定だ。
e-tronの市販バージョンは、最大容量150kWの急速充電ステーションで充電できる最初のクルマとなり、これにより、この電気自動車のSUV「e-tron」は、30分以内に80%の充電を終え、次のロングドライブへと出発できるようになる。なお車両に搭載されるリチウムイオン・バッテリーは、WLTPドライビングサイクルで400km以上の航続距離を実現しているという。
e-tronの市販バージョンは、ユーザーが車両を購入した後でも、運転支援システムやインフォテインメントといった機能を自由に選んで契約して利用できるようにすることも画期的だ。そして今後はさらに多くの、デジタルコンテンツとサービスが順次提供される予定で、アウディは、2025年までにこうした新しいビジネスモデルから年間10億ユーロの営業利益を計上することを目指している。
技術開発担当のペーター・メルテンス取締役は、「私たちは2021年、Vorsprung durch Technikの50周年に合わせて、アイコンとなるコンセプトカーをベースにした自動運転の電気自動車を発表します。ラウンジのようなインテリアを備えたこのクルマは、当初は都市間を結ぶシャトルとして公道における試験走行を開始し、2020年代の半ばには自動運転車として生産を開始する予定です」と語っている。
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