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4.0Lフラット6の走る芸術品 セオン・デザイン911へ試乗 964を徹底レストモッド 前編

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4.0Lフラット6の走る芸術品 セオン・デザイン911へ試乗 964を徹底レストモッド 前編

魅力を引き出しながら、しっかりモダナイズ

近年、欧州のクルマ好きの注目を集めているものの1つが、クラシックなポルシェ911のレストモッド。独自の思考と強い熱意を持って仕上げられ、トレンドの終わりは見えないようだ。

【画像】フラット6の走る芸術品 セオン・デザイン911 クールなレストモッド事例は他にも 全145枚

そのレシピは、往々にして共通している。ワイド化されたフェンダーラインと、磨き込まれたフラット6に、豪奢な書斎のようなインテリア。ベースとなる911は、歴代のモデルでも価値が伸び悩んでいた、空冷エンジンの964型が選ばれることが多い。

ポルシェは、その3代目を約3万4000台製造している。現存数は少なくなく、見つけ出した状態の良い例へ丁寧に最新技術を施すことで、羨望を集めるようなスポーツカーとして一新される。

希少性という点では、さほど高いとはいえないかもしれない。希望すれば、予算があれば1台オーダーすることはできる。思わず2度見するほど、高額ではあるが。

オリジナルの動的特性や感触を変えることなく、魅力を引き出しながら、しっかりモダナイズされる例も多い。ややこしいことに、ルックスは964よりクラシカルに仕立てられる場合もある。神秘的とさえ感じる仕上がりのものも。

現代のドライバーにとっても親しみやすく、胸が苦しくなるほど美しい。ポルシェ911の極上のレストモッドには、表現しきれないような誘惑がある。

405psの自然吸気4.0Lフラット6を搭載

今回試乗することができた、セオン・デザイン社のポルシェ911もその1つに加えられる。北米カリフォルニア州を拠点とするシンガー社に対する、英国オックスフォードシャーからの回答といえる。

このセオン・デザイン社は、スタイリングや技術開発を専門とするアダム・ホーリー氏と、経営面を仕切るルシンダ・アージー氏の2人によって、2016年に創業された。まだ若いレストモッド・ガレージだ。

これまでにデザイナーとしてBMWやロータスのモデル、航空機のエアバスの機内デザインなどに関わってきた経験を持つという。コンピューターを用いた設計、CAD技術にも長け、プロジェクトを意欲的に前進させている。

もちろん、クラシックなポルシェ911に対する思い入れも半端ない。センスは素晴らしいのヒトコトだ。

彼らが近年仕上げたのが、「CHI001」と名付けられたダークパープルの911。南米チリの顧客に向けたクルマで、30年ほど前の964型がベースになっている。同社がチューニングした、最高出力405psの自然吸気4.0L水平対向6気筒エンジンを搭載している。

彼らの小さなワークショップには、製作途中のポルシェが並んでいた。別の作業段階にある3台が。

964のボディシェルは地金が顕にされ、細かい歪みを入念に修正し、強化が施される。ボディパネルは職人が手作業で打ち出すスチール製か、CHI001のようにカーボンファイバー製が選べる。ただしドアパネルは、衝突安全性を理由にスチール製だけらしい。

永遠に眺めていられそうな美ボディ

エンジンはオリジナルの3.6Lブロックがベース。最高出力は、964型911では自然吸気のカレラ2で250ps、ターボで320psだったが、同社の技術力によって大幅に引き上げられている。

現在は375psから456psまで3段階のメニューが用意され、今回のCHI001はその中間に位置し、排気量としては最大になる。最もパワフルな例では、スーパーチャージャーで吸気圧が高められる。4本出しのマフラーが勇ましい。

すべてのエンジンを手作業で組み立てるのは、ニック・フルジェームス氏。過去にはコスワース社のF1用エンジンへ携わったほか、トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)やジャガーなどとも共同で仕事をした経験を有するそうだ。

CHI001のエンジンは、理想的な自然吸気のフラット6といえるだろう。胸のすくような吹け上がりと、公道での扱いやすさを両立させているのだ。

フライホイールはシングルマスで、カムはかなりアグレッシブな山を持つ。スロットルボディは気筒毎に6本。カーボン製のエンジンカバーに収まるよう、きれいなカーブを描いている。

トランスミッションは、993型911に搭載されるG50型と呼ばれる6速マニュアルが、リビルド後に組まれる。もちろん、LSDも標準で搭載される。

抑揚を増した容姿は、永遠に眺めていられそうにすら思える。クラシカルな17インチ・アルミホイールは淡いシャンパンゴールドで、工芸品のように美しい。艷やかなカーボン製のボディ面は乱れひとつなく、細かなトリム類も見事にフィットしている。

チューンド空冷エンジンが放つ唸りと脈動

ウットリしている意識を立て直し、ドアを開く。現代的なフォルムながら、年代物風に仕立てられたレカロシートが筆者の身体を包んでくれる。

インテリアは程よくクラシカル。期待する通りに華やかで、素材のひとつひとつに意識が配られつつ、彼らの意思によってオリジナルの造形は崩されていない。

現代のモデルと比べれば、多少の妥協もある。ドリル加工されたペダル類も見事な仕上がりながら、例によってオフセットしている。ナルディのステアリングホイールは、シンプルで握り心地が良いものの、直立気味でフロントガラス側に50mm程遠い。

運転席からの視認性は驚くほど良い。メーターも感心するほど見やすい。最新のモデルに慣れていると、目からウロコだ。

とても興奮を誘う車内だが、フラット6を始動させるとさらなる気持ちの高ぶりが待っていた。アイドリング時から、ボディシェル全体が燃焼に合わせて激しく振動する。荒々しい生物が、狭い空間へ押し込められたことへ反抗するように。

技術者のホーリーは、CHI001は普段使いに困らないほど従順に走ると主張する。しかし、チューンド空冷エンジンが放つ唸りと脈動は、いかにも乗る人を選びそうだ。車重1160kgのRRレイアウトに、405psという組み合わせも。

この続きは後編にて。

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みんなのコメント

3件
  • >シンガー社に対する、英国オックスフォードシャーからの回答

    見た目もコンセプトもほぼシンガー。
    それにシンガー社はLAだけど、創設者のロブ・ディキンソンは英国人。回答になってない。
  • レガしぃー3.5Lエンジンあったが改造すればここまで行けるかな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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