Stellantisグループのアルファロメオは2023年8月30日(現地時間)、新型スーパースポーツモデルの「33 Stradale(33 ストラダーレ)」を発表した。
今回発表された33 Stradaleは、1967年デビューの伝説的なスーパースポーツ「Tipo33/2 Stradale(ティーポ33/2 ストラダーレ)」を現代の解釈で再現した新型スポーツカーで、アルファロメオ内における「ブランドの歴史を尊重し、未来へ導くプロジェクト」の一環として製作されたという。
伝統の「COMPETIZIONE」を冠するアルファロメオ・ジュリア/ステルヴィオの限定モデルが登場
着想を得た元のTipo33は、アルファロメオがグループ6に合わせたミッドシップレースマシンとして企画し、1965年に最初のプロトタイプを発表。その後すぐに名エンジニアのカルロ・キティ氏率いるモータースポーツ部門のアウトデルタに送られ、本格的な開発に入った。キティ氏がまず重視したのはエンジンのパワーアップで、プロトタイプの1.6リットル直列4気筒から新設計の2リットル(1995cc)V型8気筒DOHCに換装する。車名もエンジン排気量にちなんで「Tipo33/2」に変更した。様々なテストを繰り返して完成度を高めていったTipo 33/2は1967年に公開され、その数日後にはベルギーのフレロン・ヒルクライムで初陣を飾る。当初はスパイダーボディを採用していたTipo 33/2だったが、空力特性の向上を狙ってクーペボディに改良し、翌'68年シーズンにレースシーンへ投入した。ここからTipo33/2の進撃が始まり、デビュー戦のデイトナ24時間レースで1-2フィニッシュ。さらにタルガ・フローリオでは2-3位、ル・マン24時間レースでは4~6位に入り、参戦したレースのクラス優勝は15にものぼった。1969年シーズンからはエンジン排気量を3リットル(2998cc)にまで拡大したTipo 33/3でエントリー。当初は5リットル級のライバル車(フェラーリ512やポルシェ917)に歯が立たなかったものの、アウトデルタは改良に改良を重ねてマシンをポテンシャルアップし、1971年シーズンにはタルガ・フローリオやブランズハッチなどで勝利してメイクス・ランキングの2位に輝いた。
一方でアルファロメオは、レースカーの開発にかかる多額の費用を償却する目的で、Tipo33/2をベースとする公道走行可能なスーパースポーツカーの「Tipo33/2 Stradale」を製作する。当初は50台を生産する計画だったが、1967年11月から1969年3月までに作られたシャシーの数は18台分にとどまった。デザインを手がけたのはフランコ・スカリオーネで、ミラノのカロッツェリア・マラッツィがボディの製造を担当。ミッドシップ配置の2リットルV型8気筒DOHCエンジンはレースカーの270hpから230hpにディチューンされたが、全長3970×全幅1710×全高990mm/ホイールベース2350mmというコンパクトなボディで、かつ車重700kgの軽量さもあって、最高速度は260km/hに達した。アウトデルタにより組み立てられたTipo33/2 Stradaleは、車両価格が975万リラと当時としては非常に高額で、しかも製造上の問題からシャシー数が18台分に留まり、さらにボディをまとって顧客のもとへ渡った車両は12台程度となる。残りのシャシーは、アルファロメオ歴史博物館に保存されているプロトタイプ以外ではベルトーネが手がけたカラボや、ピニンファリーナの33/2クーペ スペチアーレとクネオ、イタルデザインのイグアナなどのコンセプトカーへと派生していった。他方でアルファロメオは、V8エンジンの拡大展開も計画。排気量を2.6リットル(2593cc)としたうえで、燃料供給装置にはスピカのメカニカルインジェクションを組み込み、パワー&トルクは200hp/24.0kg・mを発生する新ユニットを開発し、既存のジュリア・スプリントGT用をベースに改良を施したシャシーのフロントセクションに搭載する。クーペボディのエクステリアはカロッツェリア・ベルトーネが担当。完成した高性能GTは「モントリオール(Montreal)」の名を冠して1970年開催のジュネーブ・ショーで初公開され、以後1977年まで3900台あまりが製造された。
新型スーパースポーツモデルの33 Stradaleは、こうした歴史を持つTipo33/2 Stradaleをモチーフに、造形部門のアルファロメオ・チェントロ・スティーレが新しいスタイル言語からデザイン要素を取り入れて、その彫刻的な美しさに磨きをかけてエクステリアを完成させる。全体のフォルムは、流麗なラインとボリューム感あふれるフェンダーなどによって、アルファロメオのクーペモデルらしい“必要美”を追求したダイナミックなスタイリングを創出。ドア部にはルーフにまで回り込んで開口する“エリトラ(elytra)”と称した前ヒンジ式バタフライドアを採用する。空力特性も優秀で、ゼロCz(ダウンリフト)時の抗力(Cx)は0.375を実現した。
一方、フロントマスクは“コファンゴ(cofango)”形状のカウル&フェンダーに象徴的な楯グリル、カーボンファイバー製のシールドおよびリップ、ふくよかなフェンダーラインの前端に配する楕円形のLEDヘッドライトなどによって、アグレッシブかつ精悍なマスクを演出。またサイドビューは、前端から流れるように立ち上がるフロントフェンダーやミッドシップカーらしく大きなエアインテーク(インタークーラー用)を備えたグラマラスなリアフェンダー、ドアのコーナー開口部と大型のラップアラウンドサンルーフを組み合わせた航空機のコクピットのようなキャノピー、伝統のテレフォンダイヤルデザインを模した新形状のアロイホイールなどで構成し、スポーティなアピアランスを実現する。前ヒンジ式のボンネットにバタフライドア、後ヒンジ式のリアカウルをすべて開けた状態でのドラマチックなルックスも印象的だ。そしてリアセクションは、後端を断ち切った“コーダトロンカ(coda tronca)”の形状にV字型のボディ同色パネル、モチーフとなったTipo33/2 Stradaleを彷彿とさせる丸形2灯式のLEDコンビネーションランプ、カーボンファイバー製のディフューザーなどを組み込んで、個性的かつ力感あふれる後ろ姿に仕立てた。
2シーターで構成するインテリアは、最上のドライビングエクスペリエンスを引き出すとともに、ミニマリズムを追求したデザインと素材を採用したことがトピックだ。コクピットは運転時の操作性に配慮し、限られた数のコントローラーをセンターコンソールに配置するなど、ドライバーの注意をそらす要素を最小限に抑えるようアレンジ。ドライバーの真正面には、必要な情報を見やすく表示する3D“テレスコープ”デザインのディスプレイを配備する。また、ステアリングホイールは純粋にハンドリングが楽しめるよう、ボタン類をあえて省略。航空機のコクピットと同様、コントローラーを低い位置のセンターコンソールとルーフ部の中央ライニングの高い位置に分けて配置したことも訴求点である。一方でトリムレベルに関しては、「Tributo(トリブート)」と「Alfa Corse(アルファコルセ)」という2種類を設定。航空機をイメージしたダッシュボードとセンタートンネルは、アルミニウム、カーボンファイバー、レザー、アルカンターラなどの素材を巧みに組み合わせる。また、新形状ラップアラウンドシートはTipo33/2 Stradaleのシートを再解釈したデザインで仕立て、伝統的な美しさとともに、高いサポート性と快適性を確保した。
基本骨格については、アルミニウム合金製のHフレームとカーボンファイバー製のモノコックで構成。また、バタフライドアのウィンドウフレームにはカーボンファイバー材を、リアウィンドウにはポリカーボネート材を採用する。一方で懸架機構には、前後ともにアクティブショックアブソーバーとセミバーチャルステアリングを備えたダブルアームサスペンションを採用。段差などの障害物を通過する際に車体へのダメージを避ける目的で前部を持ち上げるフロントアクスルリフトも組み込む。制動機構の強化も図り、ブレンボがアルファロメオ向けに製造したカーボンセラミックブレーキ(キャリパーは前6ピストンモノブロック/後4ピストン)をバイワイヤ式で装備。キャリパーカラーはクラシックなRosso(レッド)、Nero(ブラック)、Giallo(イエロー)の3色のほか、ユーザーの要望に応えるカスタマイズカラーを設定した。
パワートレインに関しては、最高出力620ps以上を発生する3リットルV型6気筒DOHCツインターボエンジンと8速DCTのトランスミッション、電子制御式リミテッドスリップディファレンシャルで構成する後輪駆動の内燃機関と、システム総出力750ps以上を発生する3基の電気モーターと駆動用リチウムイオンバッテリーを配して全輪を駆動する電動パワートレインを設定。内燃機関は最高速度333km/h、0→100km/h加速3秒以下を実現し、また電動パワートレインは推定航続距離450km(欧州WLTPモード)を成し遂げる。ドライブモードとして、「Strada」(公道)と「Pista」(サーキット)を選択することも可能だ。
なお、33 Stradaleは伊カロッツェリア・トゥーリングのスーパーレッジェーラにおいて製作され、生産台数は33台の限定。顧客との最初のコンタクトは2022年9月開催のF1イタリアGPのモンツァサーキット内で行われたとのことで、その数週間後には限定台数のすべてが完売したという。
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