国産クラシックカーのレストアで、一番の悩み処のパーツといえばなんといってもボディの外鈑部品ではないでしょうか?
今までにCLカーズでも、主にトヨタ車でゴム部品や機関部品のリプロ品に熱心なTHサービス(http://thservice.jugem.jp)、スカイラインやフェアレディZのガーニッシュやエンブレム、内装部品等で有名なリバイブジャロピー(http://revivejalopy.web.fc2.com/catalog.html)、ユニークなところではまさかのタイのオート三輪タクシーいわゆる「トゥクトゥク」がダイハツミゼットの部品としても使えるというニューズ(http://www.geocities.jp/news0001jp/)、イギリスのクラシックカー用タイヤの専門商社、ヴィンテージタイヤサプライの代理店で、20世紀初頭のクラシックカー用のタイヤですら入手可能な村上タイヤ(https://www.murakamitire.co.jp)等、少なからず国産クラシックの部品供給の問題を打破しようと尽力している業者があることを紹介してきましたが、先日筆者が参加した愛知ワールドクラシックカーフェスティバルin常滑で、またもや魅力的なクラシックカー用のリプロ部品をリリースしている業者のブースを発見しました。
年収1000万円プレイヤーになればポルシェ911は買えるのか?
それが今回ご紹介するレストアパーツ.com(まんさく自動車)です。
クラシックカーのレストアや修理の難所外鈑パネル
「日本のレストアライフが変わる」というある意味、過激な(?)コピーですが、クラシックカーのレストアや修理で一番苦労するのが外鈑パネルでしょう、機械的な部品はオーバーホールが可能だったり、ほかの車種からの加工流用や汎用品、運が良ければ品番が変わって別の車種で使われ続けていたというケースもあるのですが、外装や外鈑だけはそうもいかず、少々状態が悪くて錆や腐食があっても鈑金修理で使いまわしたり、状態のよい物や未使用品のデッドストックが稀に市場に出ると青天井の値段が付くというケースもあります。また外鈑部品の入手の難しさゆえに、腐食をアルミテープとパテで塞いでフルレストア済と称して市場に出すという悪質なケースもあります。
しかし、自動車の部品の中で外鈑部品は一番リプロが難しいともいわれ、金型を起こす初期費用の大きさや、製品の保管スペースの問題など、多くのリプロ業者が二の足を踏んだ分野ですが、いよいよ日本のリプロ業者に外鈑パネルの分野に打って出る業者が現れたとことに期待を抱かずにはいられません。しかも今回もまた筆者の住む名古屋市のすぐ近く、航空ファンの聖地、岐阜基地とかがみがはら航空宇宙博物館のある、岐阜県各務ヶ原市にあるレストアパーツ.comを運営するまんさく自動車に向かいました。
部品の在庫はまんさく自動車の整備工場ではなく、別の敷地の倉庫にあるというので、案内された倉庫の中に入っていくと大量の段ボール箱が、「レストアパーツ.comの拠点の準備中なので…」というので、てっきり準備中の倉庫の部材かと思ったのですが…
「これ、全部商品なんです」
筆者の頭の中は一瞬「???」となったのですが
たしかに、箱には510/1600/BLUE BIRDやSKYLINEの文字が、これがすべてハコスカや510ブルーバードの新品のバンパーやボンネットだというのですが、なかなか信じることができません。「箱から出しますの実際に見てください」という言葉とともに手近にあった箱から出てきたのは…
510型ブルーバードの新品のバンパーが!
510型ブルーバードのフェンダーにバックパネル、フロントエプロン、S30Zのボンネット等…
目の前にまんさく自動車の井上社長夫妻がいるのもはばからず、素っ頓狂な声を出して驚くばかりでした。なにしろ新品パーツでの入手はほぼ絶望視され、でこぼこのサビだらけでもハンマーを当てて、ボンデ鋼鈑を切り継いででも直して使いまわすか、ネットオークションにデッドストックの新品でも出れば青天井の入札合戦になるような、国産クラシックカーの外鈑部品が倉庫を埋め尽くしている光景に、筆者は幽霊か宇宙人でも見たようなあり得ない物を見ている顔をしていた事でしょう。
近日発売予定のAE86型レビン・トレノ用のクォーターパネルとバックパネル
Zやスカイライン、セリカ等の外鈑部品をFRPやカーボンで作っている業者も存在しますが、プレス鋼鈑でリプロ品を作ったというのが前例がないと聞いています。まずは、人気があり海外からの引き合いも多い510型ブルーバードやS30型Z、スカイラインからということですが、さすが北米で大成功を収めたベストセラーのFIVEーTENはあともう少しでボディシェルが丸ごと1台組めるのではないか?と思えるくらいのラインナップです。しかも価格は約3~9万円と非常に現実的な値段だけにまたビックリです。フロントフェンダー1枚が約5万円前後、同クラス現行車の新品部品より少々割高な程度、しかしこれまでの事情を踏まえればこれは破格と言ってもいい値段ではないでしょうか?
そしてこちらが、近日発売予定のAE86型レビン・トレノ用のクォーターパネルとバックパネル、こちらは発売を告知したところSNSでも大反響があったそうで、全国のハチロクオーナーの間で話題沸騰中だそうです。実はまんさく自動車の井上社長、AE86トレノを長年愛用し現在は86/BRZレースにもエントリーするほどのハチロクフリークの方でした。
しかし、どうしてこう言うことが可能になったかと聞くと、マスタングやシボレーなどのアメリカンマッスルカーのボディパーツリプロ部品で有名な業者が「日本の市場も開拓したい」ということで、まんさく自動車の井上社長の下にオファーが舞い込んできたとのこと。よく筆者も、海外のクラシックカーパーツのネットショップを見るたびに「国内がダメならいっそ海外でクラシックカーのリプロ部品を作ってる会社に日本車の部品を作ってもらえるように頼めないだろうか」と夢想することがあるのですが、「僕も海外でマスタングのリプロ部品を作ってるサプライヤーに日本車の部品も作ってもらえないかと妄想してたら実現しちゃったんですよ(笑)」とのことだそうです。
製造工場は台湾にあるとのことで、気になる品質はというとマスタングは取り付け時に鈑金やパテでの修正を要するおおざっぱなアメリカンクオリティ準拠に対し、やはり品質にうるさい日本ではアメリカと同じようにはいかないという旨を伝えたところ、ちゃんとそのまま修正なしで組付け可能な(もちろん、経年劣化等車種ごとに個体差があるため完璧というわけではありませんが)日本クオリティ準拠した仕上がりにも対応してくれたとのことで安心して使えるものだそうです。何より現在の防錆鋼鈑を使っているため、腐食した部分は丸ごとレストアパーツ.comの製品にしてしまえば、もう錆の再発を心配することもなくなるというのは大きいでしょう。
会場内でも一際注目を集めたリプロパーツ
先日のノスタルジック2Daysに出展した際も、リプロパーツだけで丸ごと1台組んだデモ用の「新品のマスタングのボディシェル」は会場内でも一際注目を集めたそうで、製造廃止になった部品の供給再開と自社によるリフレッシュプランの提供をアナウンスした「某国産車メーカー」の関係者からも質問を受けたそうです。
THサービスでも、「商品化可能な業者と取引はあるものの、ウチの規模で扱うのは難しい」と言っていた外鈑部品は、なんでも闇雲に商品化できるというものでもなく、問い合わせが多くても、やはり商売としては未知数な部分が多いようです。筆者としてぜひ初代セリカやTE27レビン・トレノ、トヨペットクラウン等ハチロク以外のトヨタ車の外鈑部品も商品化してほしい所です。
以前、トヨタ博物館の布垣館長がCLのインタビューで「国産クラシックカーの部品に関しては、すべてをメーカーが供給するのは難しい部分もあり、メーカーでサポートしきれない部分はぜひ部品サプライヤーさんが独自に販売して修理できる体制ができるといいと思います。」と答えた事があります。
実は筆者のセリカは愛知トヨタ系ディーラーのGRガレージで自動車保険に入っているのですが、GRガレージは社外品のチューニングパーツも扱っているので、営業の方に「もしGRガレージにトヨタのクラシックカーに乗ってるお客さんが来ても、GRは社外部品もOKなら、レストアパーツ.comやTHサービスの部品でAE86や初代セリカが直せるようになったら別の客層が増えるんじゃないですか?」と話したらまんざらでもないような感じでした。
日本のクラシックカーを取り巻く環境
大体のどのくらい見込みがあれば商品化出来るのか聞いてみると、50個単位から商品化が見込めるゴム類と違い、やはり「金型の償却や商品の回転率からして1000台単位の見込みが欲しい」とのことでした。筆者個人の意見としては最近自社のクラシックカーの保護にも動いてる自動車メーカーも巻き込んで、たとえばトヨタ車ならGRガレージがハチロクや初代セリカの部品を全国の拠点で最低2~3個ストックするとかすればそれだけで最低でも50個~数百個くらいは需要を確保できると思うのですが…
また、よくクラシックカーは事故に遭うと必ず保険でもめるといいます。何しろ基本、保険は時価で算定できず。たとえば部品に定価がないため、アジャスターは事故でひしゃげたクラシックカーには、オーナーの思い入れや市場価値等、目もくれず冷徹に全損判定を出します。しかし、こうしたリプロ品の市場が確立すれば、クラシックカーの修理費用にも一定の相場が成立し保険会社の対応が変わる可能性もあるかもしれません。
国産クラシックカーのリプロ部品を充実させ一つのマーケットとして確立させるには「何をリリースすればいいのか見込みや優先順位を知るために、具体的にどの部品が、どのくらいの頻度で需要があるかデータベースみたいなものが欲しい」という話を聞いたことがあります。
現在、レストアパーツ.comで部品をラインナップしている車種のオーナーはもちろん、ラインナップされていない車種のオーナーの方も、一度問い合わせてみるのもいいかもしれませんね。また、オーナーズクラブなどでまとまった数が日本以外の国のオーナーにも協力を呼び掛けるなどしたら、商品化もありうるかもしれません。レストアパーツ.comのこれからの展開と、日本のクラシックカーを取り巻く環境が欧米に追いつく日が来る日を願って止みません。
すべてリプロ品で組み上げた「新品の」マスタングのボディとレストアパーツ.com(まんさく自動車)の社長 井上尚志さん。いつの日かハコスカやセリカも新品パーツで丸ごと一台組めるようになったら…
レストアパーツ.comの事業が本格的に動くようになったら船便で来ることを考慮して名古屋港の近くに移転することも考慮しているとか、ぜひ名古屋に来てください!筆者も遊びに行きます、いやむしろ倉庫整理の手伝いに行きます!
レストアパーツ.com(まんさく自動車)
〒504-0852
住所:岐阜県 各務ヶ原市 蘇原古市場町 1-7
電話:058-380-5461
FAX:058-380-5462
E-mail:info@restore-parts.com
サイトURL:https://www.restore-parts.com
[ライター・カメラ/鈴木修一郎 写真提供/レストアパーツ.com(まんさく自動車)]
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