■やっぱりアルファロメオ「ジュリア」は唯一無二の存在?
幸運を呼ぶ四つ葉のクローバーはたくさんありますが、ひと目見ただけでゾクゾクと身体中の血が湧き踊るような、興奮を呼ぶ四つ葉のクローバーは、世界中を探してもアルファロメオにしかないでしょう。
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イタリア語で四つ葉のクローバーを意味する「クアドリフォリオ」は、1923年に欧州の有名なレース「タルガ・フローリオ」に参戦するアルファロメオのマシンに初めて描かれ、見事に初勝利をもたらしました。
それ以来、ワークスマシンのボディには公式のシンボルとしてクアドリフォリオが飾られ、かずかずの栄光を勝ち取ることになるのです。
そして第二次大戦後からは、モータースポーツ仕込みのアルファロメオ生産モデルのシンボルとしても、誇らしげにボディに輝くようになりました。
60年代の「ジュリア スプリントGTA」に始まり、「75」や「155」など世の走り好きたちを骨抜きにするスポーツサルーンを送り出し、現代では先進テクノロジーや最高のパフォーマンスを約束する「証」として、相応のモデルに飾られています。
その最新モデルとしてラインアップしているのが、4ドアセダンの「ジュリア」とクロスオーバーSUVである「ステルビオ」の、ともに2.9リッターV型6気筒ガソリンエンジン車です。
今回は、その2台を箱根の山道で存分に試乗できるという幸運に恵まれました。どちらもアルファロメオ伝統にして最新のV6エンジンを搭載していますが、それぞれに与えられた最高のパフォーマンスには、どんな違いがあるでしょうか。
まず乗り込んだのは、世界一過酷と呼び声高いドイツのニュルブルクリンクサーキットにおいて、2016年9月に量産4ドアセダンで世界最速タイムを叩き出した、ジュリアのクアドリフォリオ。510ps/600Nmという強大なパワーで最高速度は307km/h。0-100km/h加速はわずか3.9秒という俊足です。
インテリアに身を置いただけで、ジュリアがただの美しいセダンではないことが、よほど鈍感な人でない限りはピンとくるような仕立てになっています。身体にピタリと添ってくる、高品質なスポーツレザーとアルカンターラの立体的なシートから、指先に独特の感触を伝えるアルミ削り出しのパドルシフト。握りごたえのあるスポーツレザーステアリングも、クアドリフォリオ専用のものです。
キーレススタートシステムでエンジンを目覚めさせると、フォンッという快音が響き、テンションが上がります。駐車場から道路へ出ると、瞬時にイキイキと軽やかな加速フィールが全身を包むよう。路面をしっかりと捉える感覚がありながら、余計な重さや硬さはすべて排除してくれるような、驚くほどクルマとの一体感があります。
そして、カーブの手前で視線を出口に向けただけで、ヒラリとボディ全体がそちらへと駆け抜けていける感覚は、爽快のひと言。これは前後重量配分を理想的な50:50にこだわったことによるバランスの良さや、クルマの頭脳と呼ばれるALFAシャシードメインコントロールをはじめ、多彩な電子制御システムの恩恵も大きいのでしょう。
ただ、それだけではないと身体の奥底で感じるものがあるのが、アルファロメオです。先進テクノロジーを駆使しただけでは実現し得ない、どこか官能的な音や加速フィール。そして、少しくらいドライバーがミスをしても、まったくなんの影響もないオンザレールのクルマが増えるなか、ジュリアは最後の最後までドライバーの腕に任せてくれて、「もし自分がミスをしたら飛び出してしまうかもしれない」という「危うさ=スリル」を残しておいてくれる、希少なクルマだと感じます。
それはつまり、人間から操る楽しさを奪わないということであり、人間をちゃんと信頼してくれているという証ではないでしょうか。
もちろん、アダプティブクルーズコントロールをはじめとする先進の安全装備、運転支援技術は手厚く揃っているので、あくまでそうした演出をしているということ。それでも、現代ではそうした演出をすることさえも、とても強い信念が求められるものだと思います。
だからアルファロメオは、面白い。乗れば乗るほど、その信頼関係が深まり、愛着が湧いていくクルマであり続けるのだと、ジュリアのクアドリフォリオを走らせてみて痛感しました。
■SUVだからといって侮れない「ステルビオ」の実力とは
さて、次はステルヴィオのクアドリフォリオに乗り換えます。こちらは名前からして、カッコだけのクロスオーバーSUVではないことを主張しています。
「ステルヴィオ」とは、イタリア北部にあるハードな峠の名前なのです。それにプラスしてクアドリフォリオも付いているわけですから、狼のなかの狼。その期待を裏切ることなく、2017年9月にステルヴィオもニュルブルクリンクサーキットで量産SUV世界最速タイムを記録しています。
ジュリアと同じ2.9リッターV6ツインターボエンジンを搭載し、510ps/600Nmというパワーもきっかり同じです。車両重量がかさむこともあって、最高速度は283km/hにとどまりますが、0-100km/h加速はジュリアを上回る3.8秒。これがどんな世界観を見せてくれるのか、さっそく山道へと繰り出しました。
インテリアはジュリア同様に、アルファロメオのデザイン哲学と走りへの情熱が、五感を通して訴えかけてくる空間になっています。アクセルペダルの踏み始めに、ほんの一瞬は重さを匂わせるものの、ジュリアとほぼ遜色のない軽快感で加速していくことに驚きます。
そしてすぐに太いトルクに押し上げられて、余裕たっぷりの加速フィールが思いのまま。まるで空気を切り裂いて突き進むような迫力がある一方で、カーブではまったくズレのない挙動で俊敏な身のこなしを披露し、まるでスポーツカーを操っているよう。
アイポイントの高さと重心の低さを感じさせる挙動が、とても不思議な運転感覚をもたらします。アイポイントの低いジュリアから乗り換えた直後なので、余計にそう感じたのかもしれません。
ジュリアとの違いは、ブレーキフィール。どちらかというと、ペダルを踏んでから少し深めのところで効いて、コントロール性の良さが際立つジュリアに対して、ステルヴィオは初期からガツンと効いて、そこからジワリとコントロールさせてくれると感じました。
そのほか、ALFAシャシードメインコントロールと連携するALFA DNAドライブモードシステムなど、アルファロメオらしい走りを実現するメカニズムに加えて、電子制御式4輪駆動システム「Q4」による付加価値がつくのもステルヴィオの魅力。
これは未舗装路や雪道だけでなく、タイトなコーナリング時などでも安定性やトラクション、ステアリング特性を高めるというから、ドライバーもちょっと大胆になってしまいそうです。
そして楽しいのが、メーター内の液晶モニターに表示される「g-mater」。走行中に前後左右のどこにどれくらいのGがかかっているのか、ひと目で知ることができるのです。
今回、箱根を走った時のピークは0.57Gでした。F1マシンは減速時で最大5Gくらいかかると聞きますから、まだまだ小さなものですが、これがサーキットに持ち込んだらどれくらいになるのかな、なんて考えるだけでもワクワクしてしまいました。
このご時世にクルマの持つポテンシャルをすべて味わうというのは、なかなか難しいものではあります。でもアルファロメオの最新クアドリフォリオは、低速でもチョイ乗りでも、こちらが予想する以上のパフォーマンスでまず心を揺さぶり、どんどん夢中にさせてしまう。
そこには先進テクノロジーだけでなく、やはり情熱というアルファロメオ伝統のスパイスがたっぷり注がれているとしかいいようがありません。
ジュリアとステルヴィオ、2台のクアドリフォリオはまさに、それぞれの世界でオンリーワンの、興奮を呼ぶ四つ葉のクローバーでした。
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