昨年9月に本国で発売されたフォルクスワーゲンのコンパクトSUVタイプ電気自動車(EV)「ID.4」。その高性能モデルである「ID.4 GTX」も今年4月にワールドプレミアし、このGTXのメディア向け試乗会もついに実施された。
ID.シリーズ初のスポーティEVとなるID.4 GTX。その走りの実力はどうなのか? いち早く試乗レポートをお届けする。
猫も杓子も電動化でピンチに!! どうするどうなる街のガソリンスタンド!!
文/Kimura Office
写真/Volkswagen(Ingo Barenschee)
【画像ギャラリー】 今後の日本導入可能性は? ID.4 GTXを画像でチェック!
■従来の「GTI」的な 高性能モデルに位置付けられる「GTX」
ID.4 GTX。さらなる派生グレードの存在が明らかになっている
フォルクスワーゲン(VW)がID.3に続いて発売した2番目のEV、ID.4は世界的に人気の高いクロスオーバーSUVスタイルを持ち、北米そして中国をはじめ広範囲な市場を狙っている。
そしてその意図とパフォーマンスは正しく理解、評価されたようで2021年のワールドカーアワードで大賞を獲得している。
2021年のワールドカーアワード大賞を獲得。次点はホンダ eで3位はトヨタ ヤリス
半年前のプロトタイプテストの段階で、すでに公表されていたようにVWはID.4の4WDバージョンを開発中だったが、今回、GTXのネーミングを得て発売されることが決定した。
この「GTX」というネーミングは、ガソリンエンジン搭載のゴルフのスポーツモデルが「GTI」、ディーゼル仕様が「GTD」、PHEVが「GTE」と続き、今度は「X」が付いたもの。Xは通常4WDの象徴でもあるが、面白いことにVWはスポーティ・ロング・ツーリングのGTと「未来のモビリティに繋がる架け橋を象徴するX」とだけ表現している。
おそらくBMWのxDrive、あるいは古くはマツダ ファミリアGT-Xなどとのクラッシュを避けたいのだろう。
さらにリリースでは「GTXに続いて、新たなアルファベットを与えられたモデルが用意されている」と意味深なメッセージが読めるが、これはおそらく「R」が登場することの予告だろう。
■0-100km /hまで6.2秒の加速力
さて、試乗会に現れた真っ赤なID.4 GTXは全高が1616mmとスタンダード(1631mm)よりもわずか15mmローダウンしただけにも関わらず、安定した姿勢を見せていたのはオプションの21インチタイヤ(前:235/45R21、後:255/40R21)が路面にしっかりと踏ん張っているからだろう(スタンダードは20インチ)。
エクステリアデザインはフロント左右のダミーグリル内に3つのLEDライトが並び、ヘッドライトはマトリックス機能を持ったIQ-LED仕様が標準装備されている。この両側のヘッドライトは走行中に光のラインで左右が繋がる。
ID.4 GTXは新世代プラットフォームを採用したEVとしては、デュアルモーター4WDを搭載した最初のモデルとなる
一方、リアではフィニッシャーの左右がボディと同色になってリアフェンダーにまで回り込んでおり、ブレーキライトはX字に点灯する。GTXのロゴはリアゲート中央だけでなくフェンダー、そしてサイドシルにも見られる。
スタンダードをベースにしたインテリアはドライバーの正面に5.3インチの小型ディスプレイがドライブに必要最小限の情報を提示、さらにダッシュボードには10インチ(オプションで12インチ)のタッチパネルがレイアウトされている。
ID.4 GTXのインテリアには赤いアクセントをインパネやステアリングに採用。高性能モデルらしさが演出されている
最新のOSであるMIB-IIによって当然「ヘイ、フォルクスワーゲン」で音声入力が可能である。インテリアトリムはGTX専用で、ブラックとブルーの内装に赤いトリムとインテリア照明が使われていてスポーツムードを盛り上げている。
ID.4 GTX 前席
ID.4 GTX 後席
ID.4 GTX ラゲッジ
リアに搭載される電気モーターはスタンダードと同じ150kW(204馬力)で、フロントに追加されたモーター(出力は未発表)と合わせてシステムパワーは220kW(299馬力)を発生する。
そして0-60km/hを3.2秒、100km/hまでは6.2秒(スタンダードよりも2.3秒も速い)で通過する。最高速度は+20km/hで180km/hに達し、ここでリミッターが介入する。
フロントとリアの2つのモーターを合わせたシステム出力は299馬力を発揮。0-100km/h加速は6.2秒をマークする
またVWの発表によれば消費電力はNEDCで100kmあたり19.1kWhから18.1kWhとなる。搭載される電池のエネルギー容量は77kWh(ネット)で航続距離は480km(WLTP)を確保している。また充電時間はDC急速チャージャーを使って30分で300km分の給電が可能である。
■MEBプラットフォームはすべてリアドラムブレーキ採用!?
テストルートは一般道路、アウトバーンそしてワインディングと変化に富んだコース。
スタートに際して、「エコ」「コンフォート」「スポーツ」「インディビジュアル」、そして「トラクション」の5つのドライブプロファイルのなかから「コンフォート」を選択し、さらにメータークラスターの横にあるセレクトスイッチをDレンジにセットしてスタートする。
試乗車には21インチタイヤとオプションの15mm低められたスポーツサスペンションとプログレシブ・ステアリングシステムが装備される。
一般道路、特に低速ではややゴツゴツとした振動が伝わってきたが、アウトバーンに乗って80km/hを超えたあたりからフラットで快適な乗り心地に変わった。
ドライブフィールは以前にテストした204馬力のスタンダードよりも明らかにパワフルで、どのスピードでも力強いダッシュ力を見せる。一方、Bポジションではリアモーターで回生が頻繁に行われ、最大で0.3Gまでの減速加速度によってワンペダルドライブも可能だ。
ID.4はEV専用プラットフォームのMEBを採用。スタンダードのID.4 はリアモーターだけの後輪駆動だが、GTX はフロントモーターも搭載する4WDとなっている
この結果、アウトバーンでの走行でもフロント358mm径のディスクブレーキとリアのドラムブレーキは役不足な感じはない。ちなみにVWのEV専用プラットフォームMEBではすべてドラムブレーキがスタンダード装備となる。
一見ローテクなブレーキシステムが採用された理由は、耐久性が高くメインテナンスフリー、EVではブレーキの負荷が少ない、そしてもちろんコストなどが上げられる。
■ドイツ本国での価格は約665万円~。日本では導入予定なし
アウトバーンを下りてアップダウンの多い山間路へ入り、「スポーツ」のドライブモードを選択すると敏捷さは一層増して、全高1.6mのSUVとは思えないロールの少ない安定した姿勢でコーナーを抜けて行く。
通常、内燃エンジン搭載モデルの4WDへの移行は、低ミュー路面でのトラクション、あるいはコーナーでの姿勢制御が必要な際に明らかに感じられるが、このID.4 GTXではその作動が数マイクロセカンド単位で行われるために、非常にスムースでそれがいつだったかわからない。
メカ(機械)とエレキ(電気)の差をまざまざと感じた試乗だった。。そして、ID.4 GTXはカタログの数字以上のスポーツ性能と同時に、ロングドライブに不可欠な快適性をもった「GTI」のようなEVスポーツであった。
価格はドイツでベースモデルが50,415ユーロ(約665万円)で間もなく発売が開始される。GTXはヨーロッパ向けで、現時点での日本向け輸出は残念ながら計画されていない。
■ID.4 GTXスペック(これまでに正式発表されている数値)
・システム出力:220kW/299ps
・変速機:1速
・最高速度:180km/h
・0-100km/h:6.2秒
・0-60km/h :3.2秒
・電池容量:77kWh(ネット)
・航続距離:480km
・全長×全幅×全高:4582×1852mm×1616mm
・ホイールベース:2765mm
・トランク容量:543~1575L
・空力特性(Cd値):0.29
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みんなのコメント
まあ、そうなるのはあと10年近く先だろうが・・・
しかし、この性能を持ってしても、アリアの性能は互角以上だから、さすが日産。10年以上のBEVの実績は伊達じゃ無い。
トヨタはコンセプトカーの発表内容では、2025年にこの性能程度には出せるようだが、当面BEVの日本メーカーとしてトップメーカーとして頑張ってほしいものだ。