クルマを造ってた人、4輪操舵も経験している人。元ホンダで車両開発統括だった繁浩太郎さんに新型ルノー・メガーヌを試乗してもらいました。どんな感想を持ったのか?さっそくレポートをお届けしましょう。
■最新のルノー・メガーヌとは
ブリヂストン 高い氷上性能と摩耗ライフ性能、静粛性を実現した「ブリザック VRX2」を北海道で試乗
日本のルノーは「カングー」、「トゥインゴ」など他のメーカーにはない個性のある車種を揃え、その販売は好調でバックオーダーを抱えるほど売れている。さらに、中心車種の「ルーテシア」と「メガーヌ」にはルノー・スポールが手掛ける「R.S.(ルノー・スポール)」というスポーツグレードが存在する。
「メガーヌ RS トロフィー R」は、2014年にドイツのニュルブルクリンク北コースで、FF最速の7分54秒36を叩き出し、最速タイム競争に火を付けた。その後、2015年3月ホンダ「シビック TYPE R」が7分50秒63で記録を塗り替え、2016年5月に「ゴルフ GTIクラブスポーツS」が7分49秒21を記録している。そして2017年になって、新型「シビック TYPE R」が7分43秒80(Honda測定値)という展開になっているのが現状だ。各社の熾烈な競争は、ファンにはたまらない話題となっている。
しかし、今回の新型ルノー・メガーヌは、単にスポーツ性を追求しただけではなく、市街地走行など普段の走行性能にもこだわって「走りと乗り心地の両立」をめざし、Cセグメントでの存在感を強化させる戦略だと考えられる。
その技術の中心が、ハッチバックGT、スポーツ・ツアラー(ワゴン)GTに採用されている電子制御のアクチュエータでタイロッドを動かし後輪を転舵する「4コントロール」、いわゆる4輪操舵システムである。
これは、60km/h以上(スポーツモードでは、時速80km/h以上)では前輪と後輪は同方向に切れ、60km/h未満 (スポーツモードでは、時速80km/h未満)では、逆方向に転舵するもので、ルノー・スポールによってチューニングされており、制御も昔の4輪操舵とは違って細かくなっている。
この「4コントロール」のメリットは、中高速域の走行では機敏なハンドリングになり、低速では最小回転半径が5.2mと小回りができる。さらにコーナリング性能が飛躍的に向上し、その分サスペンション設定を柔らかくできるので乗り心地も向上することにある。
ドライブモードとして、「スポーツ」、「ニュートラル」、「コンフォート」、「パーソナル」と4つを選ぶこともできて、「走りと乗り心地の両立」が際立っている。
そのエンジンは、GTとスポーツ・ツアラーGTに1.6L直噴ターボエンジンを搭載し、最高出力205ps/6000rpm、最大トルク280Nm/2400rpmを発生する。エントリーグレードのGT-Lineが1.2L直噴ターボエンジンで、最高出力132ps/5500rpm、最大トルク205Nm/2000rpmだ。これらに電子制御7速デュアルクラッチ (7EDC)トランスミッションが組み合わされる。
「走りと乗り心地の両立」だけでなく、今回初の装備となるミリ波レーダーとフロントカメラ、超音波センサーで構成された運転支援システム(ADAS)など、安全性から使い勝手まで十分な装備も万全だ。
■デザイン
エクステリアデザインを見ると、先代モデルに比べ、フロントフェンダーが長くなり、ドア下部の凹みはより鋭くなり、さらにCシェイプとメーカーが呼ぶ、ヘッドライトとバンパー両サイドのエアーインテークのデザイン、幅広で深みのあるLEDテールライトなど、よりルノーの個性を際立たせ、全体的にプレミアム感のあるデザインとなっている。
インテリア・デザインでは、インパネ全体を少し起こして立てており、ドライバーは心地よい包まれ感で運転に集中できる。また、メーターの見やすさ、マルチファンクション・タッチスクリーン、さらにアルカンターラのスポーツシート(GT/ツアラーGT)など、スポーティさと上質さを両取りしたインテリアとなっている。
■試乗インプレッション
動的には、今回は何と言っても全車に採用された「4コントロール」がキーとなる。4輪操舵は日産自動車やホンダでも80年代から採用し、現在でも採用しているクルマはあるが、当時のものは高速ではスパッと俊敏すぎるほどの車線変更で、低速では大きくお尻が振れる感覚だったのを覚えている。
しかし、今回のメガーヌの「4コントロール」は、最初こそお尻が振れる感覚にとまどったが、次第にクルマがスッとインを向いて入っていく感じが素直なので、コーナリングする気持ちよさが勝って、1時間も乗ると違和感はほぼ感じなくなった。
これは、「4コントロール」が以前のものよりもより詳細な制御になり、これはルノー・スポールによってチューニングされていることによると思われる。
この走りは高速コーナーでより真価を発揮する。ロールを感じないままスッとクルマがインを向いて素直に入っていく感じで俊敏過ぎることはなく、また一般的なFFのアンダーステアをねじ伏せるようなドライビングには決してならない。コーナリング後半のおつりもこない。さらにコーナリング中の路面に凹凸があってもサスで吸収され安定性が際立っている。
低速コーナーでは、少しお尻を振って入る感じはわかるが、クルマがインを向いてスッと入っていく様は、感動的ともいえる。とにかく、低速から高速域までスイスイとコーナーに入って出ていく。一方で、「4コントロール」によって、バネを柔らかくできるため、乗り心地が良く、いわゆるNVH(Noise、Vibration、Harshness)もよくて、特にハーシュネスはクラスを超える。
走行モードの切替は顕著にわかる。「スポーツ」にするとセナ足(アイルトン・セナのような繊細なアクセル操作)でないと、ガツンと加速する。街中を走るには、「ニュートラル」よりあえて「コンフォート」くらいのほうが名称の通りスムーズに走る。それくらい走りたがるクルマだ。
さんざん試乗して最後に気がついたのが、シートの良さ。もちろん量産車なので普段の乗降性や乗り心地を守りつつ、スポーツ走行にもシッカリ対応してくれる。さすが「おフランスのクルマ」と感心してしまう。
■まとめ
このように、ルノー・メガーヌGTシリーズには「4コントロール」が標準装備されているので、その走りに最初は少しアレ?と思うが、慣れてくると走り良さの方が勝ってくる。
トータルでみてCセグメントの中では、その走りと乗り心地の両立、NVHもクラスを超えていると感じる。さらに、そのシートやメーター、ヘッドライト、テールライトなどとあいまって、動的、静的品質が両立していてトータルで「プレミアム」感を感じることができた。
グローバルで競合の多いCセグメントで生き残り、さらに勝ちをめざしてチャレンジングに「プレミアム」にこだわるルノーを評価したい。
しかし、このメガーヌの価格は「プレミアム」ではなく、すごく廉価である。
■価格
新型ルノー・メガーヌのメーカー希望小売価格
・ルノー メガーヌ GT 334万円
・ルノー メガーヌ スポーツ・ツアラーGT 354万円
・ルノー メガーヌ GT-Line 263万円
※リサイクル料金:GT/GT-Line 1万6600円、スポーツ・ツアラーGT 1万6890円
ボディカラー
・GT/スポーツ・ツアラーGT : ブルーアイロンM、ブランナクレM、グリチタニアムM
・GT-Line : ブルーベルリンM、ブランナクレM
※M:メタリック ※ブラン ナクレ M のみ 2万1600 円高(税込)
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