エンジンが非力でも運転の醍醐味を味わえた
日産サニーの2代目であるB110型は、1970~80年代当時、ツーリングカーレースでクーペが大活躍した。その競合は、トヨタ・カローラやスターレット、ホンダ・シビックであり、改造車クラスのレースでは、サニーに一矢を報いることはあったが、量産車をほぼそのまま、車高を下げただけといえるノーマルカーレース(当時はプロダクションカーレースといった)では、向かうところ敵なしの強さを発揮した。
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私も、大学生時代に中古のプロダクションレース仕様車のB110サニークーペGXを中古で購入し、レースデビューを果たしている。レース仕様になった中古車で、当時たしか35万円ほどであったと思う。 排気量1200ccのガソリンエンジンは、OHV(オーバー・ヘッド・バルブ)という古いバルブ駆動形式であったが、レース仕様のそれは毎分7000回転あたりまで軽やかに回り切った記憶がある。1970年代当時、それはとてつもなく高回転であった。軽い車体によって俊敏な動きでもあり、レースで強さを発揮し、誰もがB110に乗った。
友人はスターレットに乗っていたが、市販乗用車としての作りはしっかりして上質だったが、動きはB110サニーに比べると、ホイールベースがやや短かったせいか苦しそうに見えた。
B110サニーは1970年の車種だが、その後の世代は市販車として競合トヨタ車に勝つため上級車種の装いとなって、モータースポーツ向きではなくなった。4代目のB310サニーで再びそぎ落としたような姿のクーペが復活したが、B110ほどの強さを発揮できなかったので、レース界ではB110サニークーペが80年代も引き続きツーリングカーレースでの活躍の中心となったのである。
ラリーで大暴れをした三菱ランサー
ラリー界の様子は、自ら参戦していないので詳しくはないが、三菱ランサーの活躍が印象深い。初代では、海外のサザンクロスラリー(オーストラリア)、サファリラリー(アフリカ・ケニア)での優勝が華々しく伝えられ、三菱自動車の性能の高さを強く印象付けた。
初代のランサーは、やや丸みのある愛嬌のある外観で、その特徴はB110サニーと同様に車体の軽さにあったと思う。高性能車のGSRにはOHC(オーバー・ヘッド・カムシャフト)エンジンが搭載されていたが、やはり軽い車体が操縦性の高さを発揮し、強みを出させたのではないだろうか。
2代目のランサーで、ターボエンジン車が登場する。「ランタボ」の愛称で親しまれたクルマだ。初代から一転して角張った箱型の外観は、それでも簡素な造形で格好よかった。世界ラリー選手権の1000湖ラリーに出場している。
個人的には、ラリー仕様に改造された車両に丸和のダートコースで運転したことがある。トヨタスターレットのKP61で全日本ダートトライアルチャンピオンとなった国政久郎氏を助手席に乗せて運転し、緊張のあまり立ち木にクラッシュしたのは懐かしい思い出だ。グリップの高いサーキットでのレースと異なり、低ミュー路でのいっそう繊細な運転操作の必要性を痛感した。それでも、レースで経験した運転操作そのものは間違いないと国政氏になぐさめてもらい、その後の励みになった。
運転操作の面白さを教えてくれたハチロク
1980年代に、まさに人気を集めたのは、「ハチロク」と呼ばれたトヨタカローラレビンのAE86型だ。
そもそも、カローラレビンとスプリンタートレノは、70年代の2代目カローラの高性能車として誕生し、レース車や日産フェアレディZのZGでしか見ることのなかったオーバーフェンダーが、大衆車のカローラ/スプリンターでも取り付けられた姿に、驚愕したものだった。
そののち、カローラもより上級車種を目指すモデルチェンジが続き、そして5代目のカローラでハチロクが生まれるのである。
それまでトヨタの直列4気筒DOHCエンジンを牽引してきた2T-G型から、新世代の4バルブDOHCエンジンとして新開発された4A-G型を搭載したことも、ハチロクに注目が集まる理由だった。しかしトルクのやや薄いエンジンで、変速機は全体にローギア傾向であり、高速道路で運転するにはエンジン回転数が高くなりすぎてうるさかった。
しかし、フレッシュマンレースなどサーキットでは後輪駆動であること、比較的軽量なクルマであったことなどで、活躍した。そしてスターが誕生する。「ドリキン」こと土屋圭市だ。そもそも注目を集めたクルマだったが、彼の登場である種の伝説のクルマになった。結果、のちに86というスポーツカーも生まれることになる。
振り返れば、まだ衝突安全性能が声高に言われ、重要視される前の時代、軽いことが運転操作の面白さを誰にも味わわせてくれた。エンジンが非力でも、軽さによって運転の醍醐味を存分に、しかも比較的安価に楽しめた時代だった。
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