■これが新生三菱なのか! 新型「アウトランダーPHEV」が凄すぎた!
三菱の世界戦略車であると共に、現在同社のフラッグシップとなるモデルが「アウトランダーPHEV」。
2013年に登場以降、毎年のように進化・熟成をおこなってきましたが、約9年ぶりにフルモデルチェンジを実施しました。
【画像】 新型アウトランダーPHEVの内外装がスゴすぎた!(35枚)
その内容は単なる世代交代ではなく、加藤隆雄CEO体制となった“新生”三菱の方向性を強く示す1台になります。
さまざまなメディアより第一報が発信されていますが、筆者(山本シンヤ)は、実際に「見て・触れて・乗った」印象をお届けします。
すでに海外向けモデルは発表済ですが、日本向けにはガソリン仕様はラインナップせずPHEVのみの設定です。
この辺りは先代の販売状況などを踏まえ、「選択と集中」をおこなったのでしょう。
エクステリアは東京モーターショー2018でお披露目されたコンセプトカー「エンゲルベルクツアラー」のイメージをほぼ受け継いでいます。
フロントマスクは三菱のファミリーフェイス「ダイナミック&シールド」の進化版を採用。
よりスタイリッシュ、よりスポーティなフォルムに刷新。線が細く、内股だった先代と比べるのはちょっと酷で、まさに「隔世の感」を覚えました。
個人的にはオンロードでは力強さ、オフロードでは頼もしさとシーンを選ばないデザインだと思います。
ボディサイズは全長4710mm(+15)×全幅1860mm(+60)×全高1745mm(+35)、ホイールベース2705mm(+35)と拡大されていますが、先代がミドルクラスSUVとして見るとやや中途半端なサイズであったこと、そして弟分となる「エクリプスクロス」との関係性を考えると納得できる部分だと思います。
インテリアは水平基調で力強い造形「ホリゾンタル・アクシス」の思想は不変ですが、エクステリアに負けない刷新です。
インパネ周りは煩雑なレイアウトだった現行モデルの面影は微塵もなく、シンプルでクリーンな印象。失礼ながら「本当に三菱車なの?」と思ってしまったくらいです。
フル液晶メーターや9インチのタッチスクリーンなどのデジタル化はもちろん、ソフトパッドやダイヤモンドキルト仕上げのトリム、ダイヤモンドカットが施された操作系、リアルアルミニウム採用の加飾など細部までこだわった質感の高さ、さらにBOSEオーディオやウィンドウタイプのHUD(三菱初)など充実装備もポイントです。
インテリアカラーはブラック&サドルタン、ブラック、ライトグレーの3タイプを用意。
個人的なツボはライトグレーで、今まで三菱では考えられないコーディネイトとなり、インテリアをより引き立てています。
また、静粛性アップも大きな進化のひとつで、遮音フィルムを挟んだ合わせガラスの採用や各部の最適設計による風切り音の低減、インバーターからの高周波音のシャットアウトなど、電動車だからこそより気になる振動やノイズを低減しています。
ボディサイズ拡大に合わせてパッケージも再構築。全幅拡大で左右のカップルディスタンス、ホイールベース延長は後席の足元スペースの拡大に寄与しました。
さらにプラットフォーム刷新による最適レイアウトにより、PHEV+3列7人乗り仕様を両立(先代はガソリン車のみ3列、PHEVは2列5人乗りのみ)。
3列目スペースは大人だと近距離限定といったスペースですが、あるかないかでは大違いです。
■色々と進化した新型アウトランダーPHEVの中身は?
パワートレインは2.4リッターエンジン+前後モーターを採用するPHEVという意味では先代と同じですが、システムは刷新。
エンジンは先代の2018年の改良で投入された2.4リッターMIVECですが、ある意味新型用を先行採用したユニットになります。
もちろんさらなる進化もおこなわれており、ミラーサイクル化やエキゾーストマニホールド一体型シリンダーヘッド/EGRクーラーの採用による燃費向上と合わせて高出力化(94kW→98kW)もおこなわれています。
電動化の要となるモーターとバッテリーは新世代へと刷新。フロントモーターは大きさを変えずに出力をアップ(60kW/137Nm→85kW/255Nm)、リアモーターは小型化させながら出力をアップ(70kW/137Nm→100kW/195Nm)。
駆動用バッテリーは電池パック構造の見直しやコンパクトな冷却システムの採用などより、体積を小型化しながら送電圧・総電力量を引き引き上げています(300V/13.8kWh→350V/20kWh)。
これらの進化により、EV航続距離(JC08モード)では、65km→99kmに向上。
日常域での使用では「ほぼEV」、長距離での使用ではガソリンタンクの大容量化(45L→56L)も相まって総航続距離の伸長と、PHEVのメリットがより実感できるシステムに仕上がっています。
車台はルノー・日産・三菱アライアンスのメリットを最大限に活かした、新開発となるCMF-CDプラットフォームを採用。
環状構造やホットスタンプ式高張力鋼板、アルミ/樹脂製パネルの採用などにより、高剛性と軽量化を高次元でバランスさせた物に仕上がっています。
開発はアライアンスパートナーの日産がイニシアチブを取っていますが「日産の物を流用」は間違いで、担当企画段階から3社が必要な要件を盛り込んだ設計となっています。
三菱のエンジニアは、「三菱の設計要件は他社より非常に厳しいのですが、要望はかなり入れてもらいました」と語っています。
ちなみにある事情通によると、「CMF-CDは三菱さんに色々いってもらったことで、ほかのクルマ(=新型エクストレイル)のレベルアップにも繋がっているはずですよ」と。
加えて、ステアリングはデュアルピニオンタイプのEPS、サスペンションは新開発(フロント:ストラット、リア:マルチリンク)で、アルミ製ナックル(三菱車初)や中空スタビライザーなどが奢られています。ブレーキも20インチタイヤ&ホイール採用に合わせて大径化されるなど抜かりなしです。
駆動方式は前後モーターを独立制御する「ツインモーター4WD」+「S-AWC」の組み合わせです。
アウトランダーPHEVのS-AWCをおさらいすると、ツインモーター4WDをベースにアクティブスタビリティコントロール(ASC)とアンチロックブレーキシステム(ABS)、ブレーキで左右輪を制御するアクティブヨーコントロール(AYC)を統合制御する高度なシステムになります。
新型は後輪へのブレーキ制御の追加(先代は前輪のみ)に加えて、プラットフォーム刷新による基本性能の大幅向上に合わせて、制御をより正確、より緻密におこなえるようになったといいます。
先代も路面状況や運転スタイルに合わせて走りの特性を選択できるドライブモードは、新型は7つに拡大(ノーマル、運転スタイルで選ぶ:エコ/パワー、路面状況で選ぶ:ターマック/グラベル/スノー/マッド)。
もちろん、先進安全機能も充実。軽自動車「eKシリーズ」に続いて、高速道路同一車線運転支援技術「MI-PILOT」を搭載。
また、コネクテッド技術も抜かりなしで、「三菱コネクト」が搭載される。この辺りもアライアンス効果を上手に活用しています。
■乗ったら分かる! 新型アウトランダーPHEVの魅力とは
では、実際に乗ったらどうだったのでしょうか。
量産モデルをクローズドコース(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)で試乗しています。
スポーツモデルでない場合はパイロンなどを用いてスピード制限をおこなうのが一般的ですが、今回はまったくなし。筆者は開発陣の走りに対する“自信”の表れだと解釈しました。
最初は一般道を想定した速度で走ってみます。運転席に座ってシートとステアリングを調整。
平板のような先代から大きくレベルアップしたシートの掛け心地の良さに加えて、ステアリングのチルト量/テレスコ量の拡大により正しい運転姿勢が取りやすくなったのは大きな進化です。実は先代はそんな基本的な部分にも課題があったのです。
ゆっくりとコースイン。EVならではのアクセル操作に対する応答性の高さや力強さは先代でも実感できたものの、新型はそれに加えて静かでスムーズ。
出力は先代よりアップしていますが車両重量は2トン近いので「凄く速くなった」わけではありませんが、穏やかだけどトルクフルな印象です。
音の静かさはプレミアムブランド顔負け。アクセルをグッと踏み込むとエンジンが掛かりますが(新型はほぼ全開にしないと始動せず)、先代は明確にそれが解るどころか「電動車なのに……」とガッカリポイントだったのです。
しかし新型は注意して聞いていても解りにくいレベルで、何も気にせずに乗っていたらエンジンが始動したことが解らないと思います。
この静けさは100km/hを超える速度域まで持続、逆にタイヤが発するノイズのほうが気になるくらいのレベルです。
この辺りは、静粛性をウリにするプレミアムブランドに匹敵するレベルで、色々な所から賑やかな音が聞こえてきた先代を知ると「三菱、どうしちゃったの?」と思ってしまったくらいです。
フットワークは今回の進化のなかでもっとも大きな進化です。ステア系は軽い操舵力ながら正確性は高さに驚きます。
よくいえばおっとり系、悪くいえばすべてが曖昧な先代のそれと比べるのは酷です。
ロックtoロックは3.3から2.6とSUVにしてはかなりクイックレシオ化されていますが、シビアな印象はなく非常に扱いやすいと感じました。
車体は剛性感ではなく剛性の高さを実感できます。先代も改良でスポット溶接/構造用接着剤により剛性を高めてきたものの、新型はその次元が違います。
それもそのはずで、先代のプラットフォームは初代アウトランダー(2005年)から長きにわたって使われてきたGSプラットフォーム、逆をいえばよくあれで頑張っていたなと思います。
体幹が高められたことで応答性の高さや力の連続性の大幅なレベルアップはいうまでもなく、電動車ならではのフロア下のバッテリーレイアウトやアクスル上のモーター配置など、見た目以上に重心が低いことも相まってコーナリング姿勢も非常に安定しています。
さらに前後左右の無駄な動きを抑え、常にフラットで安定した車両姿勢は快適性の高さにも効いており、恐らく「総合性能」という意味では三菱車史上最良といってもいいでしょう。
■新型アウトランダーPHEVは「まだまだ化ける」かも?
ちなみにS-AWCの制御は、正直にいうと先代よりも解りにくいかもしれません。
しかし、コーナリング時のステアリング舵角の少なさから前後重量配分のバランスが変わったかのように4輪を上手に使って旋回する感じは確実にありますが、より自然に、よりシームレスに制御が介入しているのでしょう。
思えば、先代は基本素性の悪さを制御で補うための制御だったのに対し、新型は基本素性の良さをより活かすための制御なのです。
今回はクローズドコースということで、日常域を超えた速度域も試しましたが、ここで新型の潜在能力の高さを実感。
ドライバーが荷重移動をシッカリおこなうとゼロカウンターでコーナーへ進入も可能です。
もちろん、スタビリティコントロールが働くので安定方向に戻りますが、雪道やウエット路面ならともかくドライ路面でそれができるとは「新型アウトランダーPHEV恐るべし」です。
ちなみに三菱のエンジニアは「どのようなシーンでも安心して走れる性能を備えましたが、実はフラットダートが凄く楽しいですよ」ということなので、可能ならどこかで試してみたいところです。
とはいっても、車両重量が2トンを超えるので無理は禁物。加えて、転がり抵抗を重視したタイヤがシャシに対してやや負けている(とくにウエットグリップ)のが数少ないウィークポイントのひとつです。
ただ、これはあくまでも限界域の話で、通常走行ではまったく問題ないのでご安心を。
逆をいえば、新型は「まだまだ化ける」ということを意味しています。
もし新型に復活を宣言した「ラリーアート」が存在するならば、より走りを意識したタイヤがセレクトされるはずです。
ちなみにドライブモードによる走りの違いは先代以上に明確です。周回数が限られていたので全てを試す事はできませんでしたが、ターマックは旋回性の鋭さ、グラベルはトラクションの良さ、スノーは安定感の高さを実感しました。
ただ、7つのモードは多すぎで各モードの使い分けも解り辛いので、もう少し整理したほうがいいと思いました。
※ ※ ※
すべてが生まれ変わった新型は、まさに「革命」レベルの伸び代です。
価格は先代(364万8000円から529万4300円)から若干アップ(462万1100円から532万700円)していますが、上記のような内容を考えると正直バーゲンプライスといっていいでしょう。
先代オーナーが試乗したら絶対に欲しくなるし、今まで三菱から遠ざかっていた人も選択肢に入れたくなる魅力が備えられています。
個人的にはランエボ/パジェロの呪縛から解けた、新たな「三菱らしさ」を持ったモデルといっていいと思っています。
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みんなのコメント
GG3Wに三年
乗ってる私がいいますが
この車は乗ったら分かります。
乗ったことない人間がガタガタ言うもんではない。
自称ヒョウロンカの似非コメよりは遥かに信ぴょう性あると思いましたね。