近年、日本市場に冷たいとファンからも厳しい声が聞こえる日産。その現行型のなかからピックアップしてみたが、いかにモデルライフが長いかがわかる。
エルグランド 2010年登場(10年)
ノート 2012年登場(8年)
マーチ 2010年登場(10年)
シルフィ 2012年登場(8年)
フーガ 2009年登場(11年)
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全ラインナップ(17モデル)のなかで、かなりの割合が8年以上経っているのだ。なぜここまで引っ張る必要があるのか? この影響で、かなり前から日本市場を軽視してるという声があるにもかかわらず、その経営戦略は変化を見せない。
日産のモデルライフが長くなっているワケは何か? そのことが要因となりライバルに後れを取っている事実、日産が元気を取り戻すためにはどうするべきなのか? について、自動車評論家の岡本幸一郎氏が分析する。
文/岡本幸一郎
写真/NISSAN、編集部
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■かつてはトヨタと双璧をなした日産 その厳しい近年の国内状況
若い人にはあまりピンと来ないかもしれないが、日産は日本の自動車メーカーのなかで異彩を放つ存在だった。
昭和43年(1968年)生まれの筆者は、クルマに興味を持つのが非常に早かったため、日本のモータリゼーション発展期における日産の活躍ぶりもおぼろげに覚えているし、子どもの目にも魅力的に映った市販モデルの布陣や、スカイラインが好きな亡父がよく語っていた日産愛などの影響で、日産というのはすごいメーカーなんだと刷り込まれていた。だから販売ナンバーワンはトヨタでも、実力ナンバーワンは「技術の日産」を掲げる日産だと思い込んでいた。
日本の自動車メーカーを代表する双璧である両社の販売シェアは70年代の終盤にはともに30%台で、約5%差まで近づいた時期があったように記憶している。その後、80年代に入るとしばし低迷したのち復活を遂げ、バブル期には話題性のあるモデルを矢継ぎ早に送り出し、印象的なTVCMもあって「元気な日産」と呼ばれたのはご存知のとおり。思い出すほどに、あの頃の日産は本当に輝いていた。
ところが、90年代半ばになると一転して、商品力のあるクルマもいきなりめっきり減って、深刻な経営危機を迎え、「日産、元気出せよ」的なことを言われるまでになってしまった。そして提携したルノーから送り込まれたのが、あのゴーン氏だ。
ゴーン氏が商品企画にどこまで関わっていたのかはさだかではないが、ほどなく2000年代に入るや日産はかなり勢いを取り戻したように見えた。
スマッシュヒットの「初代エクストレイル」をはじめ「3代目マーチ」や「初代キューブ」「3代目セレナ」などの売れ行きは上々で、是か非か論を巻き起こした「V35スカイライン」や「ティアナ」「フーガ」といった大柄なセダンの布陣も存在感を発揮した。さらには「GT-R」や新しい「フェアレディZ」も出てるなどして往年の元気な日産を思わせる活況を見せた。
そして2010年代に入り、そのうちの多くがモデルチェンジを迎えた。問題はそこからだ。
GT-RやフェアレディZのようなクルマが多少は長くなるのは仕方がない、とはいえ長すぎるわけだが、深刻なのは売れ筋の実用車たちの多くが、かなり長い間、現役をつづけたままとなっているのが目立つ。整理すると以下のとおりだ。
2007年発表 初代GT-R
2008年発表 6代目フェアレディZ
2009年発表 2代目フーガ
2010年発表 4代目マーチ、3代目エルグランド、
2012年発表 5代目シーマ、2代目ノート、3代目シルフィ
2013年発表 3代目エクストレイル
2014年発表 3代目ティアナ、13代目スカイライン
あくまで「現行型」として見ると上記が登場時期となる。こうしてみると大規模なマイナーチェンジを行なった車種もあるものの、日産の現行機種で新しめのモデルというのは「セレナ」と「リーフ」「デイズ」および「ルークス」ぐらいしかないことにあらためて驚く。
2007年に登場した「GT-R」は13年、「フェアレディZ」は12年が経過。全17モデルのうち、8モデルが8年以上となっている
2019年3月から発売となった「新型ルークス」。新しめのモデルでフルモデルチェンジしたのは「デイズ」および「ルークス」くらいという国内の状況だ
そういえば1年でまったく日本向けの新型車がなかったり、ごく少数にとどまったことも珍しくない。日産ほどの規模のメーカーでこのような状況でよいはずがない。
どうこういっても、セダンのラインアップがかなり充実しているのは往年の日産らしさを感じさせる部分ではあるが、一方で直近もモデルチェンジすればそれなりに売れたはずのキューブは消滅し、2019年末に欧州では発売された2代目の「新型ジューク」はパワートレインが機構的に日本に不向きとやらで国内の導入予定はなく、かわりに別の新型コンパクトSUVが導入される見込みであるなど、どうして? と感じてしまう面が目立つ。
2019年に日本での販売を終了した「ジューク」だが、欧州では新型が登場。デザインがより洗練され、日本でも導入を求める声は多い
■日本軽視といわれる日産 再び元気を取り戻すのに必要なもの
かくして日産は、いつしか「日本市場軽視」というイメージが強まってしまったわけだが、その背景には業績不振はいうまでもないとして、新しくしたくてもできなかったふたつの大きな要因が考えられる。ひとつはゴーン氏によるグローバルでの拡大路線の弊害、もうひとつが日産をとりまくアライアンスの体制による影響だ。
ゴーン氏は売れる地域に向けて売れるクルマをどんどん送り込もうという、ビジネスとして考えると至極まっとうな方針を打ち出していたわけだが、それが度を超えていた。
逆もまたしかりで、売れない地域にはあえて力を入れない。すなわち伸びのあまり見込めない日本市場は、NMKVのような新しい試みこそあったものの、他の地域に主眼を置いて開発したうち日本でも通用しそうなクルマを売るにとどまったという見方ができる。
そのためここ数年、日本向けの新型車の投入がすっかり手薄になってしまった。それでいて中国では好調ながら、肝心の北米やアジアの状況もあまりよろしくなく、欧州にいたっては撤退も視野に入れた情報まで飛び交うほどとなっているのが始末が悪い。
一方のアライアンスについてご存知のとおり、日産とルノーの関係に三菱が加わり、メルセデスも少なからず関わっている。水面下でどのように話が進められているのかはわからないが、お互いの開発効率を高めるため、日産はCセグとDセグ、フレームSUVを担当し、Aセグ、Bセグ、商用バン系はルノーと三菱に方針をすでに約1年前に明らかにしている。
実際ここ数年、日産もこれまでどおり新型車の開発は行なっていたようだが、それが頓挫したものも少なくないようだ。もっとも開発リソースが豊富なはずの日産が、もっともニューモデルが出ていない感があるのは否めない。
途中まで進んでいたが見直すことになりモデルチェンジが先延ばしにされた車種もあると見られる。そのうちのいくつかは今後、開発が再開されるかもしれないし、いずれにしてもアライアンスによるシナジー効果が形になって世に出てくるのは、これからが本番を迎えるといえそうだ。
むろん日産としても日本市場をあえて軽視するつもりなどなかったのだろうが、結果的にそう見えてしまったのはそれなりの理由がある。
日本軽視と評されたことは日産自身も気にしており、日本向けモデルのインフィニティエンブレムを廃したり、2019年夏のマイナーチェンジでスカイラインを日産っぽいデザインとしたのはご存知のとおり。これは日産は日本を大事にし、スカイラインファンを大事にするという意思表示にほかならない。
2019年のマイナーチェンジでそれまで付けていたインフィニティのバッヂと決別した「スカイライン」。日本市場を軽視はしていないと日産首脳は語るが、ファンとの温度差は大きそうだ
ということで、いまの日産はけっして日本を軽視していない。そんな今の日産が元気を取り戻すべく手がけた日本向けのニューモデルが早く見られるよう期待したいところだ。
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みんなのコメント
アル・ヴェルのデザインが嫌いな人はエルグランドのデザインが良いと感じる場合もある。
中身をしっかりブラッシュアップすれば問題ないと思う。