「交通反則通告制度の運用状況」という、警察庁作成の非常に興味深いデータ(表)がある。たぶんネットでは拾えない。だから今回、ネットでは初出かと。毎年秋に、前年分が出る。以下は最新のもの、すなわち2019年秋に出た2018年分だ。
※表は写真でご確認ください
どうです、交通取り締まりの歴史を見渡すことができるでしょ。え? そもそも「区分」の意味がよくわからない? 確かにそうかも。解説しますので、いっしょに興味深く見渡しましょう。
【車両等の運転車の違反取締り総件数(件)A】
これはずばり、交通取り締まりでいわゆる青切符、赤切符を切った件数だ。シートベルト違反など、いわゆる白切符の違反(2018年は約72万件)は含まない。放置駐車違反で黄色いステッカーを取りつけ「放置違反金」の納付命令をした件数(同約97万件)も含まない。そっちについては別データがある。また今度。
昭和58年(1983年)から昭和61年(1986年)にかけて1300万件を超えている。その後、800万件前後で安定していた。ところが近年ぐんぐん減り、平成30年(2018年)に600万件を割ってしまった。ヤバイでしょ! 警察はなぜ巻き返しを図らないのか。うーん、私だったら…などと腕組みして考えるのが、申し訳ないけど私は好きなのだ(笑)。
【反則告知件数B】
反則告知とは、いわゆる青切符を切ること。超過速度が30km/h(高速道路と自動車専用道路では40km/h)未満のスピード違反、信号無視、一時不停止、携帯電話の使用違反など多くの違反が青切符の対象だ。赤切符の対象となるのは飲酒運転、無免許運転、超過速度が前記以上など、ごく一部の違反だ。
【反則適用率B/A】
これは青切符の割合だ。昭和62年(1987年)と昭和63年(1988年)がそこだけ90%を超えている。1986年(昭和61年)5月の道交法改正で、青切符の対象が超過25km/h以上から超過30km/h以上へ引き上げられた。青切符の幅が広がったわけだ。その影響かと思われる。
平成16年(2004年)に再び90%を超え、最近は95.9%だ。赤切符の違反、つまり超過速度がめちゃ高いスピード違反や、飲酒、無免許運転などをする人は、近年ますます少数派になっているといえる。
ここまでは「歴年」。1月1日~12月31日の統計だ。この先は会計の話になるので「年度」、つまり4月1日~3月31日の統計となる。
【反則金 納付額(円)】
青切符といっしょに反則金の納付書が交付される。知らん顔で払わずにいると、納付書が郵送されてくる。どの納付書であれ、1年間に全国のドライバー、ライダーが払った反則金の、これが総額だ。取りも取ったり、払いも払ったり。合計で何兆円になるのか。反則金は1000円単位なのに、表には1円の単位がある。その理由は? えーっと何だっけ、会計上いろいろややこしいことがあるんだが、詳細は忘れた、ごめん。
この表の上のほうの数年間には、私が払った反則金も含まれている。その後、反則金を払わず不服を主張できる道があることを知り、1回も払ってない。結果、すべて不起訴になっている。「不起訴はもうつまらない」と思い、裏ワザを使ってわざと正式裁判の被告人になったこともある。その話はまた今度。
目を引くのは昭和62年度(1987年度)だ。突然どーんと1000億円を超えている。これはずばり、前年5月の道路交通改正により反則金が全体で1.5倍に値上げされたせいだ。なのに取り締まりをあまり減らさなかったため、こんなことになっちゃたんだね。ちなみに当時と今の運転免許人口はこうだ。
昭和62年(1987年) 5572万4173人
平成30年(2019年) 8231万4924人
当時は、今より断然少ないドライバー、ライダーに対し、今のおおよそ2倍の取り締まりをやっていたわけだ。交通取り締まりに対する怒りの雑誌記事や書籍が多くあった。私が物書きとしてデビューしたのもこのころだ。
【納付率】
反則金の制度がスタートしたのは1967年7月。そこからずっと95%を下まわったことがない。平成30年度(2018年度)は過去最高の98.6%。99%台も間近だ。
反則金の納付はじつは任意なのだが、強制、義務と思い込んでいる方も多いようだ。任意と知っているけれども「めんどくせえ。とっとと払い、嫌なことは忘れたい」という方もおいでだろう。
ドライバー、ライダーたちの内心がどうであれ、反則金が納付されれば警察官としては楽だ。否認事件用の面倒な書類の作成を強いられずに済む。反則金の納付率が100%に近いからこそ、相手が納得できないようなズル汚い取り締まりができる、そういう側面もあるだろうと思う。
【1件当りの金額(円)】
昭和62年度(1987年度)に突然、5644円から9159円にアップしている。前述のとおり反則金が全体で1.5倍に値上げされたことによる。
その後、平成19年度(2007年度)に1万円を割っている。これは、2006年(平成18年)7月1日から放置違反金の制度がスタートしたせいだ。1万5000円がメインだった駐車違反の反則金が、放置違反金として徴収されるようになり、そのぶん反則金の1件当たりの単価が下がったのだ。
2019年(令和1年)12月1日から、携帯電話の使用違反の反則金が約3倍の値上げになった。普通車は6000円から1万8000円になった。今後は単価が1万円を超える可能性がある。
【交通安全対策特別交付金(千円)】
単位が「千円」なので、昭和56年度(1981年度)の「42,304,101」は423億410万1千円ということだ。幼い男の子が「1億万円は~らえ」とか言うが、あれは単位が万円、1兆円を意味すると、男の子は知ってるのかな。
反則金は警察官の小遣いにはもちろんならない。国庫に入る。そののち交通安全対策特別交付金として、規定の計算式にもとづき総務省から都道府県、市町村に交付される。その総額がこの金額だ。
例えば東京都の2019年度の一般会計予算書では、東京都のその交付金の歳入予算は30億658万6千円。前年度より5405万9千円の減だ。
さあ、如何でしたでしょう。こうやって全体を見渡すと、また違ったものが見えてきたりするんじゃないでしょうか。データは面白い。
〈文=今井亮一〉
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みんなのコメント
うっとおしいデータだね。
スピード取り締まりは ほんとに運だよ。
捕まると不運だし 捕まらない人もいる じつにくだらん取り締まり。
取り締まり=商売ってこと
「違反する人が悪い」と言って話にならない人がいる
違反は肯定してないのに