アルミ製エンジンブロックを新調
AC 16/80のレストアを仕上げた、オーナーのナイジェル・フィリップス氏が振り返る。「独自性や個性を保つことを優先しました。メカニズムは丁寧にレストアしながら、表面的な部分は磨いて時間的な風合いを残しています」
【画像】デモ・レーサー AC 16/80 後年のアシーカと現代版コブラ 同年代の美しいクラシックも 全115枚
エンジンのリビルドや、ボディの塗装以外の作業はフィリップス自身が進めた。ボディが降ろされたシャシーは、リーフスプリングを支えるシャックルやキングピンに至るまで、良好な状態だったという。
直列6気筒エンジンは、レストアのメインイベント。新しいアルミニウム製ブロックに、オリジナルのシリンダーヘッドを組み付けている。ブロックの製作を請け負ったのは、ブルックランズ・エンジンクラフト社だ。
クランクシャフトは磨かれ、新しいピストンとライナー、バルブが作られた。パワーアップを目指し、フィリップスは新しいカムシャフトと大きいSUキャブレターを準備した。
「1950年代に加工されたボンネットは、歴史の一部として残しています」。トランスミッションは、専門家のポール・キッチャー氏によってリビルド。スポークホイールも組み直してある。
外注したメカニズムが戻るまで、彼はボディのレストアを進めた。「アッシュ材のフレームは修理しましたが、可能な限りもとのボディを保つよう工夫しました。リアフェンダーやサイドのランニングボード、スペアタイヤ裏のパネルなど」
「パネルを交換すると、デザインの繊細さが失われがちです。古巣のロッド・ジョリー社と共同で進めることで、細部にも気を配ることができましたね」
偶然に辿り着いた初代オーナーの写真
塗装を担当したのはタウンゼント&ホール・コーチワークス社だ。「セルロース塗料を使う必要がありました。仕上がりには悩みましたが、使い古したようなエイジング加工はせず、自然に経年変化する方を選んでいます」
前オーナーのデビッド・ヘスクロフ氏による保管状態は素晴らしく、オリジナルのインテリアの復活は難しくなかったという。グリーンのカーペットは、トリミングス・バイ・デザイン社によって再現されている。ソフトトップとトノカバーも新調された。
メーター類はムーブメントを一新しているが、クロームメッキのベゼルと文字盤はオリジナルのまま。細部の仕上げでは、ACカーズの歴史に詳しいリンジー・ミルズ氏が大きな助けになったと感謝する。
この16/80はACカーズのデモ車両として、多くの写真が残っていた。レストアを進めていた2019年、偶然にもインターネット上で貴重な情報に辿り着くこともできた。
「古い家を改装していた人物がACカーズの写真アルバムを発見し、カークラブの掲示板に投稿していたんです。PDP 40のナンバーのクルマを知っている人を探していると」
「リンジーさんがその投稿を見つけ、最初のオーナーの写真を目にすることができました。トライアル・イベントで獲得したメダルやカップもね」
直列6気筒エンジンは、シグマ・エンジニアリング社の調整を受け完璧な状態に整った。「回転上昇時にフラットスポットがありましたが、今ではトルクは充分以上です」
素晴らしい仕上がりが表れた走り
果たして、ACカーズのレストアは完了。フィリップスは前オーナーのデビッド・ヘスクロフ氏を誘い、16/80でリンジーを訪ねた。「とても印象深い時間でした。リンジーさんにも喜んでもらえました」
「過去のトライアルで走った区間にも寄りました。16/80の価値を考えて、攻めませんでしたが」。と話すフィリップスだが、走りがいのある道で戦前のスポーツカーを運転する体験は、極めて特別だとも認める。
グレートブリテン島の南部に住む彼は、南岸のパーベック岬の道がお気に入りらしい。古びたラルワース城の石垣に排気音が反響し、タイムワープするような気分になれるという。
夏の夕暮れ時にオープンカーで走る爽快さは、ほかの季節では味わいにくい。復活したACカーズは、素晴らしい仕上がりにある。フィリップスのガレージまでの道で、筆者にステアリングホイールを握らせてくれた。
すべてが走りに表れている。トランスミッションはゲートが通常と逆だが、1速のギア比が低くトライアルでのスタートダッシュにピッタリ。ギア比の差が大きく、滑らかな変速には慣れも必要だが、それ以外のフィーリングは良い。
ストロークは短く、機械的な感触が伴う。タイトコーナー手前でのダブルクラッチ・シフトダウンに、満足感が漂う。
ステアリングは正確で重み付けも丁度いい。レシオがスローでヘアピンカーブでは大忙しとはいえ、緩やかなルートではリラックスして流せる。ケーブルで動作するドラムブレーキの効きも充分。ペダルの感触も自然だ。
戦前モデルとして動的能力に非の打ち所なし
路面の凹凸が酷いと、ステアリングホイールへキックバックが伝わり、シャシーが震える。舗装が新しければ、驚くほど乗り心地は良い。最初のオーナーが、長距離移動も苦にしなかった事実にうなずける。
フィリップスはエンジンを4000rpmまでに制限しているが、128km/hは出せる。110km/h前後でのクルージングは、意外なほど快適で不安感がない。戦前のモデルとして、動的能力に非の打ち所はないといえる。
ACカーズのデモ車両だったというPDP 40の過去が、特別な個性を醸し出している。ルーカス社の大きなヘッドライトで林道を照らしながら駆け巡った当時の様子が、自然と想起される。
16/80の完成に3年を費やした彼は、新しいレストア対象を探しているという。「作業リストを確認しながら、ガレージで費やした時間が懐かしいんです」
「新しいサンプガードを付けて、ウェセックス・トライアルへ出場しようと考えています。妻のポーラも、今度は参加したいと話してくれています」
発見された初代オーナーの写真を参考に、歴史の再訪にも意欲的だ。「1937年のコロネーション・スコティッシュ・ラリーの舞台には、ぜひ訪ねてみたいですね。スコットランドへのロードトリップは絶対です」。とフィリップスが笑顔を見せる。
16/80の長いボンネット越しの景色は、生涯に残る記憶を生むはず。実際、ル・ジューンと呼ばれた鼻先のマスコットが、過去の時間へも先導してくれるようだった。
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