内燃機関で走るクルマに比べて、フル電動のEVというと、なんだか味気ないというか、画一的なイメージがあります。それはトラックも一緒。
フル電動化が一律に実現したら、トラックにおける車両の個性、商品差別化はどのようになるのでしょうか? トラックメーカー四社に質問してみました。
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リージョナルな規制による電動化の必然に対して、改造対応による電動化はすでに現実になりました。今は駆動系の中で電動機の配置方法に選択肢があるようですが、ラダーフレームと固定軸というトラックのカタチは電動化の中でどれぐらい変わるのでしょうか?
大中小の車両の大きさによってもニーズや享受されるメリットが異なると思われますが、さて、その回答はいかに?
文/フルロード編集部 回答/トラックメーカー四社
ワンポイントコメント/多賀まりお 写真/フルロード編集部
2021年3月13日発売「フルロード」第40号より
【画像ギャラリー】フル電動化に備えて模索を続けるトラックメーカー……各メーカーの個性や差別化はどうなっていくのか
■自由度のあるパッケージングで多様なカタチのトラックを!/いすゞ自動車
EV化で不要になったエンジンコンパートメント部をフラットフロア化し、キャブバックを荷室と繋げた、いすゞの「EVウォークスルーバン」
まず、いすゞ自動車の回答です。架装に強いいすゞらしく、自由度のあるEVのパッケージングに着目しているようです。
電動車(EV)では、内燃機関などの性能面の商品差別化がむずかしくなるいっぽうで、シャシーや架装のレイアウト自由度が増すので、商品差別化の要素として、お客様が望むトラックの形を実現できるかが重要になると考えております。
いすゞは2019年の東京モーターショーで、EVウォークスルーバンを出品しましたが、これは「ドライバーの労働環境向上」という要望に対し、EVのレイアウト自由度を活かし実現させました。
いすゞ「EVウォークスルーバン」。ハイルーフで大人が運転席から立ち上がっても充分な室内高があり、荷室への移動も容易に行なえる。同車はヤマト運輸でモニター稼働しており、実用化できるほど完成度が高い
配送車両や作業車両などインフラに合わせた車両は、電動化時代でも現在と同じカタチで必要とされると考えます。
いっぽうで電動車は、必ずしもラダーフレームと固定軸という形に拘る必要がないので、商用車としての耐久性等を確保できれば、超低床化や複数の架装物を簡単に交換できるなど、多様な形のトラックが出現する可能性があると考えております。
大中小の車両の大きさごとの電動化については、現在のバッテリー性能では長距離を走行する場合に積載量の確保が難しいのが実情です。いすゞはトラックの用途・ニーズに沿って、EVだけでなくハイブリッド、CNG、LNG、FCVなど最適なパワートレインの開発に取り組んでおります。
次は日野自動車の回答です。拍子抜けするくらい短いんですが、実際にはさまざまなアプローチを試みているハズです。
■ユーザーのビジネスにいかに貢献できるかがカギ/日野自動車
日野が東京モーターショー2019で発表したコンセプトモデル「フラットフォーマー」は、同社が描く近未来の輸送の究極のカタチ。多段ギアやプロペラシャフトを必要としないレイアウトが採れるEVでは、スペース効率を大幅に高めることが可能
これまでディーゼル車やHVでも重視されてきた燃料代(電気代)やイニシャルコストといった経済性に加え、荷台容積や航続距離、荷役作業性などの使い勝手、そして運行サポートといった、お客様のビジネスにいかに貢献できるかという点が個性や商品差別化になると考えています。
電動化に積極的に取り組んでいる三菱ふそうの回答はかなり詳細に渡ります。車両の個性や差別化は、電動化のみならず、自動運転やコネクティビティといった要素も加味して進展するのではないかというのは、なかなか示唆に富んでいると思います。
■電動化をはじめ革新的なさまざまな技術で製品を差別化し続ける/三菱ふそう
三菱ふそうの世界初の量産型小型電気トラック「eキャンターは、プロペラシャフトを介して駆動。また床下はバッテリーや冷却装置のスペースで埋まっており、レイアウト上の制約が伴なう。写真は給電中のひとコマ
電動化の過渡期や実現直後の発展段階においては、車両としての個性よりも、航続距離、充電時間、積載量、価格の面でお客様が納得する商品を提供できるかが、商品の価値に大きく影響すると予想しています。
バッテリー、モーター、インバーター等の電動システムの技術だけではなく、エネルギー回生の最適化、バッテリー搭載スペースの確保、補器類の電動化・効率化など、メーカー間で差が出る要素は多く、当面の間は多様なコンセプトの製品が世の中に送り出されるでしょう。
短期的には、先進安全運転支援機能が業界と製品の両方を形成する上で重要な役割を果たすでしょう。長期的には、自動運転、代替燃料技術、トラックと合わせて提供される各種サービスを中心に、製品は次の段階へ進化するでしょう。これは、車両エンジニアリングの基盤が変化し始める時になるでしょう。
ホイルールベース間とフレーム内にバッテリーパック6基を搭載するeキャンター。近くお披露目されるであろう次期eキャンターはフレーム内にすべてバッテリーが収まると言われており、架装性の自由度も広がりそうだ
現時点の電動トラックはあくまでディーゼル車をベースとした車両がメインですが、大きくて重いバッテリーを現在のディーゼルトラックのラダーフレーム回りに搭載するには大きなレイアウト上の制約を伴ないます。
将来的には各社各々で考える電気トラックに特化した最適なパッケージ、レイアウトの車両開発(例えばEV専用プラットフォーム)を行ない、商品の個性・差別化がなされるのではないかと考えます。また商品のみならず電動トラックをとりまく各種サービスでの差別化も図られるでしょう。
また、現在トラックが迎えている変化が、電動化だけではないことも忘れてはいけません。先進安全装置や運転支援装置の搭載も進んでおります。
コネクティビティや自動運転の実現により物流ビジネスそのものにも大きな変化が起きれば、トラックに求められる形や機能も大きく変わる可能性があります。車両の個性や差別化は、これらの要素も含めて今よりも大きな規模で行なわれていくと考えます。
車両の大小や用途の違いによって電動化のメリットや技術的な課題が異なってくるのはご指摘の通りですが、カーボンニュートラルを実現するためには電動化そのものを避けることはできません。
差が出るのは電力を車両に供給・貯蔵する仕組みです。こちらは多様化し過ぎると社会やお客様に迷惑が掛かりますので、エネルギー供給形態やインフラの整備も含め、ある程度足並みを揃えて最適なソリューションを提供していく必要があると考えます。
私たち三菱ふそうは、お客様のビジネスを実行し、成長させ続けるために、お客様のニーズを最優先に対応しています。安全性、快適性、効率性を向上する革新的な技術で製品を差別化し続けます。また、ダウンストリーム製品も改善するために、顧客体験の全体にも焦点を置いて開発しています。
最後にUDトラックスの回答です。フル電動のEV、すなわちBEVではバッテリーの搭載方法や配置がキモになると思いますが、そりシャシーレイアウトに対する見解を開陳しています。
■当面は現行のシャシーレイアウトを踏襲しフル電動化に取り組む/UDトラックス
UDトラックスが東京モーターショー2019で披露した「雷神」。ただし、フル電動ではなく、ボルボのハイブリッド用バスのコンポーネントを活用した大型ハイブリッドトラックだ。コストが高くなる専用設計より、極力ユーザーの懐が痛まないよう「流用」するのも一つの考え方だ
現行の配置方法が電動化に向けた取り組みの起点になると考えています。これまで、トラックの基本構造や技術に関して重要な決定が下された際、現行トラックのポテンシャルを最大限に活用してきました。
将来的には、コンポーネントがより最適に配置されるなど、配置方法が大きく変わる時がくると思っています。たとえば、電動アクスルや、よりコンパクトなバッテリーパッケージの搭載が配置変更を促すと思います。
こうした状況において、明確なニーズがあり、必要性があるならば、配置を変えますが、そうでなければ、現行のトラックを最大限活用していきます。
結びとして、多賀まりお氏に今回の回答をまとめてワンポイントで解説してもらいましょう。
■ワンポイント解説/電動化によるシャシーレイアウトの自由度を活かした架装のアイデアに期待
日野のコンセプトモデル「フラットフォーマー」に集配サービス用のボディを組み合わせた展開例。配送エリアごとに仕分けされた集配ボックスを自動輸送する。自律走行する自動運転車のため運転席はなく、前端部には自動で梱包する集荷ユニットがある。集配のポイントに到着したら自動台車やルーフ上に格納されるドローンを活用して集配ボックスを個別配送する
既存のディーゼル車のシャシーをベースとするEVトラックの駆動方式は、今のところギアボックスのあった位置に電動機を搭載しプロペラシャフトを介して後軸を駆動するか、駆動軸にモーターを直接組み込んだeアクスルを使うかのどちらか。
そのうえでまだまだ重くてかさばるバッテリーと出力制御用インバーター、各種機器の冷却システムなどを床下スペースに収めるのに腐心することになります。とはいえGVWが大きくなるほどシンプルなラダーフレーム構造からの変更はむずかしいのでは……。
いっぽうEVの専用シャシーは自動運転技術が進めば、運転席を持たない配送用小型車の低床EVシャシーも実現するかも知れません。電動化によるシャシーレイアウトの自由度を活かした架装のアイデアは、これからいろいろ出てくると思うので楽しみですね。
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みんなのコメント
理由として連続運行距離や充電場所、充電時間等の問題が山積してるし、電気を馬鹿食いする冷凍冷蔵機能を持った箱車なんかどうすんだって話だ。
現状ではオルタネータを回す為のエンジンを積んだハイブリッド方式が限界。
最後にフルEV化が進まないだろうと思われる要因として、主にトラックを使う大手やそれに継ぐ中堅以外の建築業や運送業は殆ど中古車両を使用するから。もしくは型落ちの新古車を狙う。