今年に入ってからは半導体不足の影響もあって、納期遅延が発生している新車がいろいろと目立ってきている。トヨタでは8月2~6日に、高岡工場(愛知県豊田市)第1ラインの稼働を止めることなどを公表していて、カローラの納期に影響が出るとみられる。
また、人気のトヨタヤリスクロスやホンダヴェゼルなどの納期はグレードによって半年待ちと言われているが、6月10日に世界初公開された新型ランドクルーザーは7月から先行予約を開始していて、なんと今や納車4年待ちの状態になっているという。
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4年待ちといったら、通常のクルマのモデルサイクルであればモデル末期になっているほどの期間だ。新型ランクルは、なぜ異常なほど長い納期遅延になってしまっているのか? 新車販売事情に詳しい小林敦志氏が解説する。
文/小林敦志 写真/TOYOTA
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■年間5000台生産に対して1.8万台のオーダー!
新型ランドクルーザー(以下、ランドクルーザーはランクル)が大変なことになっている。発売前だというのに、すでに納車まで“4年”待つというのである。業界事情通氏は次のように語る。
2021年6月10日に世界初公開された新型ランドクルーザー。価格はエントリーグレード「GX」(ガソリン)の510万円から最上級の「GR SPORT」(ディーゼル)の800万円
「聞いた話では、発売当初の国内向け生産枠が年産5000台だそうです。それに対し、私が聞いた時点(7月上旬)ですでに1.8万台の予約オーダーが入っているそうなのです」。
その事情通氏によると、バックオーダーのなかには、“ランクル専門店”や、“SUV専門”といった、カスタマイズショップの発注らしきものが目立つということだ。オプション計上がほとんどない注文が多く、それが“ショップ発注分”ではないかと推測しているようである。
そして、事情通は次のように話を続けた。
「トヨタが8月1日まで、新規の受注受け付けを停止するとの通達を各ディーラーに送ったそうです。探ってみると、専門店などのほかにも納車直後に買い取り専業店などへ売却してしまう“転売ヤー”や、海外への個人輸出を目的とした発注も目立つようで、それを洗い出すための新規受注停止らしいのです」。
その方法は定かではないが、事実上転売ヤーや海外への輸出を目的としたオーダーについて、キャンセルを促すことでバックオーダーを減らし納期遅延期間を少しでも短くしたいようであるとのことだった。
また、今回受注時に一定期間内での名義変更(転売目的などによるもの)を行わない旨の確認書類を交わすことになっているとのこと。
そして、車両代金の支払い方法が現金となっている発注に短期間での転売目的のものが多いのではないかとの判断で、短期間での転売を行わない旨の再確認をしていきながら、商売目的ではないかどうかを洗い出すようだとのことであった。
「納車直後に転売すれば、間違いなく新車時の車両本体価格を軽く超える買い取り額が提示され、利益を出すことができます。とにかく納車まで4年待つのですからね。トヨタとしてもそのような行為を予測していたのでしょうが、そのトヨタの予測を超えた事態となっているといってよいでしょう」。(前出の事情通)。
販売現場では、「ローンを利用しての購入者の受注のみにするなど、物理的な“縛り”を設けたほうがよかったのではないか」という話も聞かれた。
■「新型コルベット」や「光岡バディ」ほかにも年待ちオーダー多数あり!
似たような話が、シボレー コルベットでもあった。ミッドシップレイアウトでエンジンを積む最新のコルベットは、初期ロッド分をあっという間に完売したのだが、その多くがやはり専門ショップではないか? と言われているのだ(転売ヤーなどの存在は確認していない)。
8代目C8型の新型コルベット。長年活動しているレースに勝つために、初代より60年以上続いたFRレイアウトを捨て重量配分とトラクションに有利なミッドシップレイアウトへ刷新した
あるアメリカ車好きは「そもそも、熱狂的なアメリカ車ファンは、今回正規輸入モデルは右ハンドルになっているので、左ハンドルのアメリカ仕様を個人輸入したり、専門業者から購入したりするでしょう」と話してくれた。
光岡自動車初のSUVとなる“バディ”が6月24日に正式発売されたが、こちらは納車待ち2年となっている。手作りで生産されるので、生産台数が少ないこともあるが、こちらは純粋に気に入って購入を決断した個人ユーザーが納車される日を楽しみに待っているようである。
トヨタRAV4をベースに’80sアメリカンSUVをモチーフに作られたミツオカ『バディ』。2021年に130台、2022年に300台の生産が予定されている
最近ではヤリスクロスの“半年待ち”という納期遅延が話題となっているが、今回のランドクルーザーは、いまだに長期の納期遅延が続いているスズキ ジムニーのケースに似ていると考えられる。
スズキは公式には納期というものは発表していないのだが、納車待ちは1年を超えてしまうものとされている。ただ、現状では半導体不足もあるので流動的となっている。
2018年にインドネシアの首都ジャカルタで開催された、GIIAS2018(ガイキンド インドネシア 国際オートショー)会場内に、ジムニーシエラベースとなる、“ジムニーコンセプト”が展示されると、終日地元のメディアや一般入場者などが多数展示車を囲むほどの注目モデルとなっていた。
インドネシアだけでなくASEAN各国でも注目の的となっており、台湾のネットニュースでは、「ジムニーの5ドアが出る!」など、ホットなジムニーに関するニュースが飛び交っていたのを記憶している。
ジムニーシエラは、ようやくインドでも生産されるようになり、そこからもインド以外へ出荷されるようになったが、ランクルに関しては国内で生産し、世界へ輸出されている。海外での人気の高さもハンパなく、おいそれと国内向けの増産ができないという事情も、長期の納期遅延の背景にはあるようだ。
■ランクル人気とされる中東での 本当にモテるクルマとは
ランクルの販売台数が世界的に最も多いとされるのが中近東となっている。筆者は現行モデルとなる、ランクル200が発売直後だった2008年にUAE(アラブ首長国連邦)のドバイへ行ったことがある。仕事の合間に、道なき砂漠をSUVで走り抜ける“デザートサファリ”ツアーを申し込んで参加した。
中東などの砂漠地帯が広がる地域で人気のランドクルーザー。写真は現行型の200系
参加したツアーで使われていたのはすべてランクルで、その多くは100シリーズだったのだが、新車の200シリーズも何台か混じっていた。筆者の乗ったランクルは100シリーズで、ドライバーはパキスタン系UAE国籍の男性であった。
砂漠を走りながら片言の英語でドライバーと話していると、「新型のランクルはノーグッドな部分が目立つ」と話し始めた。「新型は車重が重くなり、頻繁に砂漠でスタックするようになった」と語っている途中で、前方の200がスタックした。
みんなで脱出させて再びクルマを走らせていると、「新型ではトランスファーが電子式となった。これが使いにくい」とし、「さらに新型はだいぶ豪華となった。しかし、ここドバイでは直6のスタンダードグレードがよく売れていた。豪華な装備はいらない。冷温蔵庫だけついていればそれでいいのだ」とも話してくれた。
このドライバーは、過去に日本で中古車ビジネスに携わっていたこともあり、車内ではトヨタ カローラの型式番号を言い合い、通称グレードを当てるクイズなどをして盛り上がった。中古車ビジネスに携わっていた経験も踏まえての発言なので妙に説得力があった。
ドバイでは確かにランクルはよく売れているのだが、よく見ると役所や企業に白いランクルが多数並んでいる。つまり、日本では高級SUVの代名詞だが、少なくともドバイでは値段が手ごろで壊れにくい“実用車”と認知されているように見えた。
前出のドライバーに「何に乗りたいか」と聞くと、レンジローバーや、アメリカンブランドのトラックシャシーベースのSUVに乗りたいとし、明らかにそれらはランクルよりステイタスは上だと話してくれた。そして別れ際に「トヨタは少し勘違いをしているように見える」とも語ってくれた。
中東やアフリカなどの紛争地域では、“UN”とボディに書かれた国連(国際連合)車両のランクルが活躍しているのをニュース映像にて見ることがあるが、これも高級だからではなく、価格と性能、品質のバランスのよさで選ばれているのだろう。
■ランクルの人気が世界的に高いのは間違いない
ただ、ところ変わればではないが、ロシアでは豪華なランクルを飛び越えて、レクサスLXシリーズが大人気となっている。首都モスクワは世界でも最も“レクサスが愛されている街”ともされているが、その大半がLXシリーズとなる。数日間のモスクワ滞在で、東京でLXを見る頻度の10年分ぐらい見かけるといってもけっしてオーバーではない。
2007年にデビューした現行型の3代目レクサスLX。ランクルとは姉妹車であるがレクサスとしてワンランク上の高級感を持つ
ソビエト崩壊以降、ロシアは幾度となく経済危機を経験している。自国通貨のルーブルへの国民の信用は低く、街にはドルやユーロの両替屋を多く見かける。そして、経済危機になると、資産保護の観点から富裕層の多くが高級車を購入することがあるとのこと。
そのなかで、壊れにくく人気の高い日本車としてレクサスが選ばれることが多いそうだ。中国やアメリカでもよく聞くのだが、メルセデスベンツやBMWなど、ドイツ系高級ブランドはロシアでも致命的ではないが、“故障が多い”との話を聞くので、レクサスが選ばれるようだ。
中国では現在、ランドクルーザー、ランドクルーザープラドともにラインナップされていないのだが、まだ販売されていたころに、広州市内の某中古車展示場へ取材に出かけた時、ショールームにプラドが委託販売車(展示場以外の業者の売り物)として展示してあったので見ていると、「それは密輸車両ですよ」と店の責任者が教えてくれた。
確かにドアミラーなどに書かれていた注意書きはアラビア文字で書かれていた。しかし、中国のナンバープレートがついていたので、不思議に思っていると、「密輸車ですけど、書類はすべて正規のものなので、ナンバープレートが取得できています」と、何やら禅問答みたいなことを言ってきた。
つまり、車両は密輸されたものなのだが、税関職員を買収しており、そのため正規の書類を作成してくれるので、“密輸したのだが、正式に輸入した車両になる”との話であった。
当時、プラドは各地で公安(警察)のパトカーになっていたのだが、その多くはそもそも密輸車であるとも教えてくれた。正規販売もされていたのだが、密輸までされるほど人気がたかかったのである。ある意味、まだまだ中国社会がいま以上にイケイケだった時代の話である。
世界中で人気のランドクルーザー。それは悪路走破性と抜群の耐久性の信頼の歴史がブランドとして確立している証
何を言いたいかといえば、使い方や理由は異なるのだが、ランクルの人気が世界的に高いことは間違いなく、それは日本でも同じ。単純に「ランクルが好きだから」といったお客だけではなく、さまざまな目的を持った人も加わり競い合って予約発注する状況は、ヤリスクロスなどとは、少々状況は異なっているのである。
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みんなのコメント
一般ユーザーで所有権ディーラーになってて問題ある人なんてそんなにいないでしょうに。
もちろんランクルは「TOYOTAイチ」と言っても過言では無いブランドだから多くの人が新型を求めて手を伸ばすだろうが、それにしては値段の割に求める数が多すぎる。
新型のアルファードやランクルなんかは然るべき物を買って然るべき売り方をすれば100%儲けられる物件。
プレステ、Apple製品、マスクにスニーカーと来て次は車か。って感じ。
私の思い過ごしなら良いけど。