「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回はモデリスタによるトヨタ ヴィッツのチューンドモデルだ。
モデリスタ ヴィッツ「TRDターボM」(2008年)
ディーラーで購入できるという優等生のチューニングモデルながら、ノーマルとはまったく違う世界が楽しめるヴィッツのターボバージョンが、この「TRDターボM」だ。最高出力はノーマル比プラス40psの150ps、最大トルクはプラス5.6kgmの20.0kgmという実力は、いまや死語となった「ボーイズレーサー」という言葉がピッタリな1台だ。
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このクルマ、じつは約10カ月間でチューニングカーとしては異例の約400台を販売。ユーザーの多くは30代以上の男性というから、やはり昔の味が忘れられない層も健在なのだろう。
今回試乗するのは、ベース車となったヴィッツRSのマイナーチェンジに伴い、エクステリアの変更と足まわりのリセッティングを行なった、後期型のターボMだ。好評のエンジンまわりに変更はないようだが、約1年にわたって集めたリサーチ結果はどう反映されているのかが、注目ポイントだ。
まずはエクステリアからインテリアまでチェックしてみると、トータルでターボMの世界を表現しようとしていることが感じられる。今回、新たに設定されたマスターキットと呼ばれる3連メーターや本革巻ステアリング、そしてエアロパーツやタイヤ&ホイールなどの装備により、ノーマルのヴィッツRSでは得られないスポーティな雰囲気を存分に味わうことができる。
あいにくのウエットコンディションの中を走り出せば、2000rpmあたりから立ち上がる0.5kg/平方センチのブーストによって、グッと盛り上がる加速を見せる。ウエットのワインディングを時には乱暴に、時には余裕を持ってスピードを乗せて行くこの感覚は、自然吸気エンジンでは表現できないものだ。
コンパクトな車体にオーバーパワーとも言えるこのテイストは、やはり往年のボーイズレーサーを彷彿とさせる。とはいえ、すべてが懐古主義に浸っているわけではない。
足まわりは今回のマイナーチェンジでややマイルドな方向へと変更され、乗り心地の向上だけでなく、コントロール性を増した印象が強い。今回、コンディションとしては最悪だったウエットのワインディングでこう感じられたことがそれを証明している。これならパッセンジャーから文句が出ることもなく、またロングドライブでも許容できるレベルだろう。マイナーチェンジ前のシャープな乗り味も捨てがたいが、トータルして考えれば正常進化だろう。
リファインされたヴィッツ TRDターボMは、ボーイズレーサーという懐かしさを持ちながらも、現代が求める安全性や快適性をきちんと備えることで成長している。トータル性能を高めたこのクルマなら、今後もより多くのファンを獲得することだろう。
■モデリスタ ヴィッツ TRDターボM 主要諸元
●全長×全幅×全高:3800×1695×1505mm
●ホイールベース:2460mm
●車両重量:1060kg
●エンジン種類:直4 DOHCターボ
●排気量:1496cc
●最高出力:110kW<150ps>/6000rpm
●最大トルク:196Nm<20.0kgm>/4800rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:横置きFF
●タイヤ:205/45R17
●当時の車両価格<税込み>:221万5500円
[ アルバム : モデリスタ ヴィッツ TRDターボM はオリジナルサイトでご覧ください ]
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