今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代の輸入車ニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「メルセデス・ベンツ トランスポーターT1N」だ。
メルセデス・ベンツ トランスポーターT1N(2002年)
ダイムラー・クライスラー(編集部註・2002年当時の社名)は商用車の歴史も古い。初代のダイムラー トラックが登場したのは、1896年のことだ。それから100年以上の歳月を経て、今回試乗した中型商用バンの「トランスポーターT1N」は、1995年に登場し翌96年から日本にも正規導入されている。都内近辺在住の人なら、救急車や機動隊の車両で見かけたこともあるだろう。
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そのT1Nが、今年(編集部註・2002年)大がかりなマイナーチェンジを受けた。外観上ではフロントまわりが最近のメルセデス乗用車にも似た顔つきとなり、クラッシャブルゾーン拡大のためフロントのオーバーハングが57mm延長された。インテリアは乗用車的なデザインとなり、インパネシフトの採用でウオークスルーも可能になった。最大の変更点はエンジンで、2.2Lの直4 コモンレール式ディーゼル(4バルブDOHCだ!)にターボを装着。ミッションは6速のセミAT(スマートと同様のシステム)を採用している。
なお、T1Nには標準ルーフ&ショートホイールベースの311CDIとハイルーフ&ロングホイールベースの313CDIがあり、それぞれにリア&サイドウインドー付きとパネル式がある。311と313は排気量は同じだが、CPUの違いで313の方がパワーがある(129ps/30.6kgm)。車両価格は、399~453万円。日本での登録は、基本的には「1」ナンバーとなる。
今回の試乗車は、311CDIのウインドー仕様。全長こそSクラスより短いが、幅は2m近く、高さは2.3m以上ある。しかも全体的にスクエアだから、スタイルは巨大な箱といった印象だ。開口角度の大きなドアを開け、ヨイショと乗り込むと、助手席との距離はあるがインテリアは商用車にありがちな安っぽさはない。
アイポイントが高くて見切りがよく、またドアミラーは縁石まで見える視野の広いもので、車両感覚はつかみやすい。撮影のためにエンジンをかけて動かすと、さらに驚いた。ホイールベースが3mもあるのに、小回りが効くのだ。駆動方式はFRなので、最小回転半径は5.2m! ちなみにひとまわり以上小さいミニバンの日産エルグランドで5.6mだから、これは驚くべき数値だ。
1500kg以上の積載が可能なクルマだが今回は大人2人乗車での試乗なので、ディーゼルターボの走りはいたって軽快。4000rpmくらいで頭打ちになるが、セミATでシフトアップしていけば、都会のクルマの流れをリードすることも可能だ。フル積載でもパワー的には十分で、ポンポンとした乗り心地も落ち着くだろう。ブレーキの効きもいい。
商用車の世界もコスト削減はきびしく、なかなかこうした(商用車としては)高価なクルマは普及しにくい。だが、コマーシャルビークルらしい機能性に加え、安全性や快適性も追求しており、「ウチはこんないいクルマで大事な荷物をお運びします」という展開で顧客が増えることも考えられる。メルセデス以外のヨーロッパ ブランドの商用車も日本に導入されると、街中の光景もより楽しくなるに違いないのだが・・・。
■メルセデス・ベンツ トランスポーターT1N 311CDI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4890×1940×2345mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:1900kg
●エンジン形式:直4・DOHCディーゼルターボ・FR
●排気量:2149cc
●最高出力:80kW(109ps)/3800rpm
●最大トルク:270Nm(27.5kgm)/1400-2400rpm
●トランスミッション:6速2ペダルMT(マニュアルモード付き)
●タイヤ:225/70R15
●車両価格(当時):414万円
[ アルバム : メルセデス・ベンツ トランスポーターT1 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
ベンツのまま代替えしていないのを見ても、やはり良くなかったのだろう。
直近、田舎県でたかが1台のセンチュリー購入が批判されていたが、本当はこんなのの方が遥かに多額の公金無駄使いになってる。