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GASGAS、KTM、ハスクバーナ…3ブランドの4スト250を田中太一が比較する

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GASGAS、KTM、ハスクバーナ…3ブランドの4スト250を田中太一が比較する

2019年のEICMA(ミラノショー)において、KTMはGASGASをファミリーに迎えることを発表した。旧知のハスクバーナ・モーターサイクルズと同様に、GASGASのエンデューロ/モトクロスマシンは、KTMと同じプラットフォームを使うことになったのだが、その3ブランドには明確なキャラクターの違いが存在する。特に、今回の新生GASGASは扱いやすさを表面に出した万人向けのものだった。Off1.jpが徳島のプライベートコースへ足を運び、徹底テストを試みた。

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まず、オフロードレーサーには「トレンド」があることを知ったうえで
GASGASの立ち位置を理解したい

今回、この3車を比較試乗したのは、日本のレジェンドである田中太一だ。日本人として、唯一エルズベルグロデオを完走しており、2010年代に大きな話題を作った。その後一線を退いてはいるものの、各地でスクールを開講したりと活動を続けている。トライアルIAS出身、世界戦最高位5位。藤波貴久、小川友幸、黒山健一らと戦いの舞台を共にしただけでなく、彼らを世界レベルまで押し上げたブラック団の一員でもあった。

田中太一が言うのは、この十数年におけるオフロードレーサーのトレンドである。「2016年に、KTMの新型車をあつめたローンチイベントへ参加していますが、その時はずいぶんマイルドに仕立て上げられているなと思いました。おそらく、世の中は誰にでも扱えるものを求めていたんでしょう。特に、4スト250は誰にでも乗れる反面、僕らエキスパートからすると物足りなさも否めませんでしたね。

ぱっと3台の2021年モデルに乗って思ったのは、その頃とは違って十分パワフルだということです。近年のトレンドは、パワフルな方向にあるんだと感じました。2019、2020年式に乗ったときも、だんだん走る方向性にしてきたんやな、と思いましたね。2021年式はさらにがらっと変わりました。特に万人向けでマイルドだった250EXC-Fですら、パワフルに感じました。特に違うのは、低回転域でのツキと、車速の伸び。2016年式のマイルドな時期の250EXC-Fも回せば速かったのですが、ツキがかなり抑えられていた印象です。でも、しんどいときはトラコンいれればそれで落ち着いてくれますから。電子制御でどうにでもできるからこそ、しっかりパワーを出してきているのかもしれません。これだけ走るから、もう少しブレーキにパワーが欲しいかなとも感じますね。まあ、パワーパーツの大径ディスクいれるくらいで、十分に対応可能だとも思います」と田中は言う。

エンデュランサーに限った話ではなく、この傾向はモトクロッサーにもみてとれるものだ。市販マシンの開発はマーケットへ出すものである以上、マーケットの希望を色濃く反映する。どのブランドが牽引したものかは明言できないが、2021年現在は、「もっとパワーがほしい」各メーカーはそんな声に応えている。2021年は、パワフルなターンなのだ。

その上で、GASGASに感じたのは、他の2ブランドにくらべてマイルドであることだと田中は言う。「低速のピックアップだけでも、かなり違います。マッピングや、コンポーネントは同じだと聞いていたので、なにか組み間違えているのかも、と勘違いしたほどです。それで思い出したのが、2016年のこと。GASGAS EC250はその頃の特性によく似ている。ただ、回せばパワーはしっかり乗ってるので、感覚的には2スト125ccのようです」と。長々とした説明になったが、長くエンデューロマシンを乗り継いでいる方々にはとてもわかりやすい評だと思う。「ハスクバーナは、3車のなかでも若干トルクがあるように感じます。リアサスが違うことから、トラクションのかかり具合が違うから、僕が使っている回転域も違うのかもしれない」と田中。

KTM 250EXC-F

Husqvarna FE250

GASGAS EC250F

基本スペックは、どのマシンも同じだ。外観でおもしろいのは、GASGASはクラッチカバーが旧GASGASの意匠を継承していることである。3台のうち、最もコストパフォーマンスに優れるだけあって、ローフィニッシュであるところも潔い

エンジンについて、マッピングや内部パーツは、GASGAS、KTM、ハスクバーナ3車とも同じはずなのだが、KTM・ハスクバーナが乗り味が異なるのは例年通りである。だが、GASGASは群を抜いて扱いやすさに際立っている、というのが田中の評だ。もっと言えば、編集部で聞く限りの他のライダーのGASGAS評も、同じようなフィーリング。扱いやすさに長けるのである。一つ気になるのは、出荷時期の関係でKTMとハスクバーナはEURO5対応、GASGASはEURO6対応であることだ。どの車両も、ストリートリーガルとして組んでおらず、クローズド専用のフルパワー仕様にしているのでこのEURO5/6対応は本来関係ないはずだが、細かいところでもしかすると違いが出ているのかもしれない。

リンクレスのKTM、リンク式のGASGAS・ハスクバーナ
そもそも、この3台は2021年型としてどう違うのだろうか。

2020年まで、KTMとハスクバーナのエンデュランサーは明確に違うところが2点あった。一つはリアサスペンションの形式だ。KTMの場合はリンクレス、ハスクバーナはリンク式。

リンクレスのKTM

リンク式のハスクバーナ

リンク式のGASGAS

そしてもう一つが、サブフレームの構造である。KTMはコンベンショナルなタイプで、ハスクバーナは樹脂製である。GASGASはこの2つの違いについてどうかというと、リアサスペンションがリンク式、サブフレームがアルミのコンベンショナルなタイプで、KTMとハスクバーナの両方の特性を併せ持っている。

田中は、特にサスペンションについて言及した。トライアルでも、古くよりリンク式とリンクレス式のサスペンションがあったから、その違いについても明確に説明できるのだ。「リンク式は、サスペンションの反応が曖昧ですが、リンクレスはサスペンションの反応が鋭いです。リアサスの反動を使おうとしたときに、シビアだけど使いこなせればシャープで強い反動が返ってくるのが、リンクレスの強みですね。トライアルやってきた僕からすると、リンクレスのほうが自分でバイクを操ってるって思えます。逆に3段ステアなんかでリアサスをあわせようとすると、かなり大変。リンク式なら、あまり考えずに開けていけばクリアできちゃったりもします。KTMのリンクレスも同じです。ただ、車体がトライアルより圧倒的に重いので、トライアルほどその性格がシビアには表れません」と田中は言う。

「エンデューロバイクだと、コーナリングにも違いがあります。リンクレスの場合は、コーナー中に開けた時のリアの動きが、ダイレクトですぐ外に出てしまいます。だから、様子をみながら開けなきゃいけないですからね」とのこと。GASGASとハスクバーナならば、こういった難しさは無くなるというわけだ。「リンク付が滑らないわけではないんですが、どれくらい滑るかというのが把握しやすいんですね。滑り方もじんわりくるので、安心感がありますよ。特に、クロスカントリーなんかでは武器になりますよ」

フロントサスペンションは、この3台について共通である。マニュアル上、シムスタッキングも同様だそうだ。「20との比較でいうと、ボトム付近の質感がすごく上がっていますね。それに加えて、前はボトム付近をカバーするためなのか、その前までの動きが少し鈍かったのが、21モデルでよく動くようになったフィーリングがあります。たとえば、ブレ−キングでサスがしっかり入っていくじゃないですか、その姿勢のまま何かあるとボトミングしてガツーンと衝撃があったんですが、21モデルはぐっと踏ん張ってくれるし、欲しいだけ動いてくれる。すごくいいフィーリングです」と田中。

コンパクト感はハスクバーナと、GASGASに分がある
この3台を語るに、スペック表はあまり参考にならない。車格に関しても、それは同じだ。たとえば、スイングアームの違いからKTMは他より5mmホイルベースが短い。そして、シート高はわずか10mm高いのである。だが、その数値とは関係なくハスクバーナのFE250はコンパクトに感じると田中は言う。「シュラウドとヒザの関係性が、スリムですね。乗っていてぴったりくるのは、ハスクバーナです。シート高なんかは、よくわかりませんが。またがった時に、ハスクバーナはぐっと下がる量が多いようにも感じます」と。

一方、GASGASもコンパクトに感じると田中。「特に、スタンダードのハンドルセットアップが、他よりも低いんですよね。それでだと思うのですが、前傾姿勢になって地面とも近くなるから車体もコンパクトに感じます。女性にも、しっくりくる車体感だと思います。ただ、これはあくまでハンドルポジションのおかげだと思いますね。シュラウドの形状でコンパクト感を感じさせるハスクバーナとは、ちょっと違います。あと、またがった時のサスペンションの沈み込み量は、ハスクバーナよりもさらに多い。足付きは、GASGASがいいです」と。

コンポーネントのフィーリングには、値段の差は感じない
だが、まとめると3車には明確なコンセプトの違いが現れている



この3台、ブランドの押し出し方は、プレミアブランドのハスクバーナ、スタンダードのKTM、ファン要素の強いGASGASと言えるかもしれない。GASGASは、スーパークロス開幕から優勝してしまったから、レーシングイメージが強く付いてしまった感があるが、特にそのPVを見る限りはヨーロッパ西部、ラテンのノリのファンライディングが全面に表現される。

KTM 250EXC-F SIXDAYS
139万6000円


Husqvarna FE250
132万円

GASGAS EC250F
114万3000円


これは、価格にも顕著だ。KTM 250EXC-Fはシックスデイズモデルなので139万6000円。ハスクバーナFE250は132万円、GASGAS EC250Fは114万3000円である。この3台のコンポーネントは、明確に違っていて、最もめだつところではブレーキパーツが違う。KTMにはブレンボ、ハスクバーナにはマグラ、GASGASにはブレーキテック。田中は「あ、そうか。でも、違いはあまり感じませんね。GASGASだけ新車をレビューしたので、ブレーキのあたりが出ていないのですが、そこまで違うなとは思いませんでした」と。タイヤは、KTM/ハスクバーナがメッツラー、GAGASはマキシスが組まれているのだが「GASGASのエンジン特性は2台とだいぶ違うので、タイヤの差は語れる範疇にはない」とのこと。ただ、エンデューロバイクだから、最初についているタイヤはあまりユーザーの気にならないだろう。

田中がこの3台で特に声を大にして言うのは、GASGASの異質さだ。KTMとハスクバーナは、これまでもリンクの有無で差が語られてきた部分である。ただし、ともにレーシングマシンとして認識されてきたし、パワー感も十二分。特に、20モデル比較でもそのパワー感を高めてきた。だが、GASGASは向いている方向が違うと判断できる。基本構成が同じでも、こうも特性を変化させられるものか、と感心するほどに扱い安い。KTMやハスクバーナが木の根を越えるときに、少し緊張間をともなうのに対して、GASGASの場合はラフにスロットルをあけてもクリアできてしまうくらいの扱いやすさがある。だが、その反面田中からすれば「僕らプロからすると、物足りなさは否めない」とも。メディアの我々が感じるには、どちらかといえばGASGASは日本人に向いているのではないかと思う。

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みんなのコメント

2件
  • こういう記事はありがたい。

    某オフ系メディアに「ぜひオフでの乗り比べを」をコメント書いたら、「借りたバイク傷つけてまでやるの意味ない」旨のコメントをもらいました。どこも事情があるでしょう。

    今のバイク、特に本気系のバイクは100万しますので、そういう意味ではwebオートバイのオフ系記事、ガチにやり込んでて購入に向けての参考になります。これからも楽しみにしています。
  • 自分は250EXCTPI20モデルを所有していますが記事の3台に乗る機会が無く。ちょっと乗ってみたいなと思いました。まぁハスクバーナは近くに無いので無理なんですけどね。

※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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