日本市場では長らくトヨタのシェアがダントツだが、それゆえトヨタが苦手としているのが小ロットの車作りだ。大メーカーには生み出せない独創的なモデルが、日本の自動車の“幅”を広げてきた。スバルやマツダ、かつてのホンダも然り。そんな小回りの効く組織ならではのユニークな車・技術と、その車が生まれた背景を改めて振り返る。
文:鈴木直也/写真:編集部
ホンダだからできた「クリエイティブムーバーシリーズ」の大転換
初代オデッセイ(1994年)。クリエイティブムーバーの第一弾として大ヒットを記録。乗用車ベースの上背を抑えたミニバンは当時画期的だった
かつてのホンダは「エンジン命」の会社。ライバルのどこよりもパワフルなエンジンこそがホンダ車の魅力。その代表例が言わずと知れた「タイプR」シリーズだった。
ただ、この手のマニアックなモデルは、ブランドイメージの高揚には役立っても、それで会社が食ってゆけるわけじゃない。
バブル崩壊後の景気低迷によってホンダの業績は急激に悪化。次世代の主力となるべき新車開発が待ったなしの状況に追い込まれる。そこからの変わり身の早さが素晴らしかった。
市場の変化を敏感に見てとって、車作りのベクトルを大転換。オデッセイ、ステップワゴン、CR-Vといった、従来のホンダ車とはまったく毛色の異なる新ジャンルの車で一気に勝負に出たのだ。
この一連の“クリエイティブムーバー”シリーズが面白いように大ヒット。スポーツカーのホンダからミニバンのホンダへ、商品ラインナップをすっかり入れ替えてしまったのだ。
こういう「イチかバチか」みたいな路線変更は、トヨタのような大メーカーには無理。グローバル生産200万台程度だった当時の企業規模と、何より川本信彦さんというヤンチャな社長(第4代社長、1990-1998年)ならではのギャンブルだったと思う。
50年経てフォレスターで結実!スバルの水平対抗&AWD
4代目フォレスター(2012年)。2017年に米国で17万台超を販売し、欧州でもスバル車で最も売れた1台。「ボクサーエンジン×シンメトリカルAWD」という高コストな技術を「利益」に昇華させた
創業者があまりに偉大だったため、後継者が変えるに変えられないというケースがある。わかりやすいのはスティーブ・ジョブスがひいたアップルのデザイン戦略だろう。
クールなルック&フィールと直感的な使いやすさに徹底してこだわり、そのためならコストに糸目はつけない。
この戦略は真似できても、模倣者が利益率でアップルを凌ぐことは不可能。高い利益率を維持する限り(価格が高くてもお客さんが付いて来てくれれば)、この路線は磐石といっていい。
スバルの車作りは、それに似ている。スバル 1000を設計した伝説のエンジニア百瀬晋六は、純粋に技術的合理性から水平対向縦置きFFというレイアウトを選択した。
1960年代当時としても水平対向エンジンは直列4気筒よりだいぶコスト高だったが、技術的によりクールなレイアウトのためなら、百瀬晋六は投資を惜しまなかった。
アップルと違うのは、高コスト体質に苦しめられてその後なかなか利益が上がらなかったことだが、石の上にも50年(?)、近年ようやくスバルの独自技術が脚光を浴びる時代がやってきた。
瞬間風速的数値ではあるものの、スバルの2015年度売上高利益率は驚異の17.5%! 北米を中心に水平対向シンメトリカルAWDの人気が急上昇。値引きしなくても飛ぶように車が売れた結果、8%くらいあれば上出来という常識をぶっ飛ばす高収益を実現したのである。
50年辛抱したからこそ、スバルは水平対向シンメトリカルAWDという高コストなパワートレーンで利益が上がるようになった。
しかし、ライバルが同じ土俵に参入してもコスト的に太刀打ちできないし、失敗したら使い回しの利かないパワートレーンが全部無駄になる。
自分の得意分野を50年というスケールでコツコツ磨き上げる。こういう車作りは、やっぱり大メーカーには出来ない芸当だ。
「ピンチはチャンス」マツダだから成し得たSKYACTIV革命
初代CX-5(2012年登場)。ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、トランスミッション、ボディ、シャシーとSKYACTIV技術を全面採用した初めての車種として、今に至るマツダの礎を築いた
マツダはこれまで何度も経営危機に陥り、そのたびに不死鳥のように蘇ってきた。これは、危機に際してそれを克服するだけのパワーが出るということ。この“危機バネ”の強さこそが、マツダの車作り最大の特徴とさえ思えてくる。
直近の危機は2008年のリーマンショックからの赤字転落だ。ここでマツダはエンジンからプラットフォームまで、すべてのメカニカルコンポーネンツを一新する計画を立てる。
後に「SKYACTIV」という名称で知られる技術革新なのだが、業績好調時でさえ大変な大仕事を、赤字でお尻に火がついた経営状態で実行する決断を下したわけだ。
マツダは見事にその危機を克服し、初代CX-5から始まる商品ラインナップ一新に見事な成功を収める。
この辺の事情をマツダの金井誠太前会長や藤原清志副社長に聞くと、「そりゃみんなが危機感を共有したから出来たんですよ」と口を揃える。
危機に際して一致団結して対処する。それを実行するには、マツダのように広島ローカル色が強く、年産150万台クラスの会社でないと難しい。これはやはり、トヨタのような大メーカーにはないキャラクターだ。
軽に新風を巻き起こしたスズキ/ダイハツの革命児
初代タント(2003年登場)。日本一売れているN-BOXより先にスーパーハイトワゴンの市場を切り開いたパイオニア。スズキは2008年に対抗馬のパレットを送り出し、これが現在のスペーシアに繋がっている
軽自動車という規格は、200万台弱の市場規模にものすごく多様な車種がひしめいているのが特徴。
道具としてのスモールカーなら、アルトやミライースで十分。もう少しユーティリティ性が必要だとしても、ワゴンRやムーヴがあれば事足りる。
実用性では飽和している市場のなか「ウーン」と唸らされたのは、初代タントのモアハイトワゴンというコンセプトだ。
2003年の初代デビュー当時、ムーヴより10cmも高い1.7m超えの車高に果たして意味があるのか、にわかに理解し難かった。
しかし、まずこの車に飛びついた子育て世代のお母さんたちが、その使い勝手の良さを評価。
車内で子供を立ったまま着替えさせられるなんて、自動車評論家には絶対思いつかないメリット。こういう、いろんな人の生活に密着したニーズの掘り下げ合戦が、軽自動車の開発を牽引する原動力となっている。
ここまでユーザーに密着した車作りが行われるのは、軽が日本限定の狭いマーケットで激戦を繰り広げているからこそ。それは、グローバルメーカーには絶対真似できないキメ細かい仕事といえるだろう。
いすゞならではの独自性が生み出したジェミニ
2代目ジェミニ(1985年登場)。「イルムシャー」や「ハンドリング・バイ・ロータス」などのコラボレートモデルは高い評価を得た
現在は乗用車から撤退してしまったが、かつてのいすゞは車好きに評価の高いメーカーだった。
1960年代はベレットGTや117クーペなど、1970年代にGMと提携して以降は、オペル・カデットをベースとした初代ジェミニが、走りの良さで車好きの人気を獲得。ちょうど、現在のマツダ的なポジションのブランドだったのだ。
そんないすゞが最後に独自開発した乗用車が、1985年登場のFFジェミニだ。
オペルベースの初代ジェミニと異なり独自開発のFFプラットフォームを開発し、そこにジウジアーロデザインの端正なボディを架装。
いすゞがユニークだったのは、海外の有名ブランドと積極的なコラボレーションを行なったことだ。
117やピアッツァでの関係から、スタイリングをジウジアーロに任せたのをはじめ、サスペンションセッティングでもロータス仕様やイルムシャー仕様を設定。
シートをはじめとする内装もそれぞれ独自のテイストが与えられていて、半ばセミオーダーメイドに近いカスタマイズ感覚が味わえた。
こうした海外ブランドとの協業は、やっぱり小回りの効く小さなメーカーでないとなかなか難しい。マツダやスバルあたりは、今こそいすゞを研究する必要があると思う。
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