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ロイヤルエンフィールド新型「ベア650」の乗り味は? カリフォルニアで歴史を刻んだネオ・スクランブラー

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ロイヤルエンフィールド新型「ベア650」の乗り味は? カリフォルニアで歴史を刻んだネオ・スクランブラー

カリフォルニアに、「ベア650」のルーツがあった

 ロイヤルエンフィールドのモダン・スクランブラーとなる新型モデル「BEAR 650(ベア650)」のメディア向け試乗会が、アメリカのカリフォルニア州で開催されたので参加してきました。「ベア650」は定評のある「INT650」の派生モデルで、排気量648ccの空冷並列2気筒エンジンを搭載し、前後サスペンションはスクランブラーらしくストロークを伸ばし、タイヤもブロックパターンに変更され、各部に専用装備を施すことで「INT650」とは差別化しています。

【画像】ロイヤルエンフィールド新型「BEAR 650(ベア650)」(全5色)を画像で見る(18枚)

 ロイヤルエンフィールドの650ccシリーズは、近年着実にラインナップを拡大しています。2018年(発表は2017年のEICMA)にカフェスタイルの「コンチネンタルGT650」とオーセンティックな英国スタイルの「INT650」が登場し、現在はクルーザーである「スーパーメテオ650」や「ショットガン650」もラインナップ。ここに2025年モデルとして、シリーズ初のスクランブラーである「ベア650」が加わることになったのです。さらに2024年のEICMAでは、「クラシック650」も発表されました。

 それにしても、インドに拠点を置く現在のロイヤルエンフィールドが、「なぜ、アメリカ?」と思いつつ向かったのですが、アメリカで開催しなければならない理由がしっかりとありました。また、「ベア=熊」と、なんだか不思議なネーミングですが、そこには興味深い歴史が刻まれていたのです。

 実はカリフォルニアでは、1960年代に「ビッグ・ベア・ラン」というレースが開催され、それに勝利したバイクこそが、ロイヤルエンフィールドだったのです。765台が参加し、197台しか完走できなかったレースで、今回の発表会には当時16歳で優勝したエディ・マルダーさんも登壇してトークショーを開催。「フットペグが折れたり、ショックが壊れたりしながら完走したんだ」と、その過酷さを思い出すように語ってくれました。

 エディさんの成功を基に、ロイヤルエンフィールドはアメリカで成長していったとのこと。同時期に「インターセプター」(=INT。アメリカと日本では、インターセプターの車名はホンダの商標があるためINTとして販売)が生まれ、ロイヤルエンフィールドにとって「ビッグ・ベア・ラン」は歴史上、欠かせないレースだったというわけです。

 ロイヤルエンフィールドは、こういった歴史的なフィロソフィーを新車発表時にとても上手く取り入れてきます。すべてを理解すると、アメリカで試乗会を開催しなければならなかった理由と、その車名がシンクロします。

「INT650」をベースに、70%以上のパーツを見直してスクランブラー化

「ベア650」は「INT650」をベースにしていますが、そのつくりは別物です。実に70%以上のパーツを作り変えています。スタイリングはスクランブラーをイメージするため前後サスペンションを延長し、ブロックタイヤを装着。フロントフォークはショーワ製の倒立となり、剛性を高めたステムや、重量が増えたフォークやホイールに対応するためフレームも強化。ステムまわりには大きなガセットが入れられています。

 排気量648ccの空冷ツインエンジンには、シリーズとしては初の2-1集合マフラーを採用しています。パワーは既存のモデルと同様の47.4psですが、8%も向上したというトルクは、走り出した瞬間に力強さとして伝わり、回転を上げると速さにも直結していました。「空冷は規制を通しにくい、パワーやトルクを出せない」そんな噂を払拭するように、ロイヤルエンフィールドは空冷エンジンのスペックを向上させています。

 ポジションや車格は排気量からイメージするよりも大柄です。830mmのシート高は、身長165cmの筆者(小川勤)の場合、両足を着くのは困難ですが、少し腰をズラすと安心感を持って片足で支えられます。しかし、これにはキャリアが必要かもしれません。

 少し気なるのは、サイドスタンドの傾きが強いため引き起こしが重たいこと。この辺りは日本に導入されたら、実際に体感してもらいたいところです。

オンもオフも楽しめる絶妙なバランス。市街地ではおしゃれに楽しめる

「ベア650」は走り出した瞬間からリラックスすることができます。「INT650」よりもハンドルはワイドでステップは下げられているため、ポジションに解放感があるのです。

 試乗ルートは市街地や高速道路を抜けるとすぐに郊外へ。高めのアベレージでワインディングを抜けていきます。

 ハンドリングは軽快で、馴染みやすいもの。ただしサスペンションは少し硬めです。大きな不安は無いのですが、特にリアのストロークをあまり感じることができませんでした。またコーナリングを楽しんでいると、若干フロント周りの剛性が高く感じることがありましたが、慣れるとこれが手応えに変わって操る楽しみを感じさせてくれる部分でもあります。

 ダートに飛び込んでもフレキシブルなエンジンが車体を操る楽しさを教えてくれます。ブロックパターンのタイヤはインドのMRF製で、ロイヤルエンフィールドとしては初採用とのことですが、舗装路と未舗装路でほどよいバランスを見せてくれました。

 特筆すべきはエンジンで、この空冷ツインは本当に気持ちが良いことを実感。クラシカルな見た目が醸し出す空冷ならではの味わいがある一方で、新しさと速さを宿しているのです。さらに270度クランクが生み出す不等間隔爆発は、官能的な気持ち良さを持っています。

 今の時代にあえて空冷を選択し、最新技術でパフォーマンスではなく昔ながらのテイストを作り込んだ唯一無二のエンジンと言ってよく、これは130年以上の歴史を持つロイヤルエンフィールドの強さのひとつでしょう。

 クラシックさとモダンさを兼ね備えたスクランブラースタイルの「ベア650」。この絶妙なバランス、待っていた人も多いのではないでしょうか。

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