走りのステージでは欠かすことのできない存在
日産シルビアS13の姉妹車として1989年に登場した180SX(ワンエイティ)。5ナンバーサイズのボディにFRレイアウトを採用したことと、当時の新車価格が179万円~と、安価に手に入ったことから、当時の走り好きな若者たちから支持された1台だ。今回、あらためて同車の魅力を紹介していこうと思う。
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リトラクタブルライトでスポーティ路線に振ったS12
◆S12シルビア/ガゼール(1983年8月~1988年)
かつて2ドアクーペがスペシャリティカーとして人気だった時代、S12シルビア/ガゼールは、R30スカイラインRS譲りのFJ20ETを搭載して1983年に登場。輸出モデルは「NISSAN 200SX」の名称が与えられた。リトラクタブルライトとウェッジシェイプのスタイルはクーペとハッチバックが設定され、スポーツスペシャリティカーとして走りを前面に打ち出し、グループ5レースカーとしても活躍する。
しかし、後に登場したホンダ プレリュード(AB/BA1型)が、ワイド&ローを強調したデザインと、S12同様のリトラクタブルライトを採用して、若者の人気を一気に集め、スペシャリティカーの代名詞となった。レース参戦でスポーツ路線に振ったS12はどこか泥臭く感じられたのか、お洒落なイメージのデートカーとしてのプレリュードに苦戦することになる。
また1987年にプレリュードがBA4型にモデルチェンジすると、先代からさらにスタイリッシュなデザインに進化して、スペシャリティカーの王者に君臨するようになり、S12では全く歯が立たなかった。
【シルビア HB ターボRS-X(1983年~1988年)】◆全長:4430mm◆全幅::660mm◆全高:1330mm◆車両重量:170kg◆FJ20ET型 直4 DOHCターボ◆最高出力:190ps/6400rpm◆最大トルク:23.0kgm/4800rpm◆排気量:1990cc◆パワーウェイトレシオ:6.15kg/ps
起死回生を賭けたS13の登場 「901運動」の先鋒として市場を奪還
◆180SX TYPE II(1989年4月~1991年1月)
1988年5月、日産は打倒プレリュードを目指してシルビア(S13)を登場させた。超薄型ヘッドライトとクリスタルグリルを採用し、未来的なデザインでスタイリッシュに生まれ変わった2ドアクーペは、「ART FORCE SILVIA」と表現されて注目を集めた。
北米や欧州向けに開発された輸出仕様は240SXと呼ばれ(欧州名は200SX)、北米の保安基準規定に合わせたリトラクタブルライトを採用したノッチバッククーペだった。一年ほど経った1989年5月、スペシャリティカーの王座奪還への強力な助っ人として、240SXをベースに国内向けにリファインした180SXが登場した。
リトラクタブルライトとハッチバックスタイルのエアロフォルムデザインに、シルビアK’sの1800ccターボ、CA18DET型を搭載。そのフォルムは、まさに打倒プレリュードの真打ちといった感じだった。初期型の特徴はフロントバンパーにダミーグリルが採用され、前席シートがヘッドレスト一体型になっていた。そしてS13シルビアと180SXはプレリュードの牙城を打ち崩し、スペシャリティカー市場を席巻することになる。
【RS13 180SX TYPE II 前期型(1989年4月~1991年1月)】◆全長:4540mm◆全幅:1690mm◆全高:1290mm◆車両重量:1170kg◆CA18DET型 直4 DOHCターボ◆最高出力:175ps/6400rpm◆最大トルク:23.0kgm/4000rpm◆排気量:1809cc◆パワーウェイトレシオ:6.6kg/ps
新型エンジン「SR20DET」換装でリニューアルした中期型
◆RPS13 180SX TYPE II(1991年1月~1996年8月)
1991年にシルビアが2000ccに変更されたと同時に、180SXもSR20DET型エンジンに換装しパワーアップ。それまで非力といわれていたが、SR20DETに変わったことで、走行性能が飛躍的に高まり、スポーツ走行やチューニングベースとして新たな層を開拓していった。スタイリングではフロントバンパーに変更を受けたマイナーチェンジが施された。
フロントフェイスはダミーグリルが廃止され、段付きのないラウンドフェイスになり、ウインカー形状が丸いくさび形になった。リアスタイルは変更なく前期型と同様で、このモデルは中期型と呼ばれる。四輪操舵システムのHICAS IIはSUPER HICASに進化し、タイヤサイズも205/60R15にワイド化され、アルミホイールのデザインも変更されるなど、かなり多岐にわたった変更が施された。
1994年にはグレード名が変更され「TYPE III」が「TYPE X」に、「TYPE II」が「TYPE R」となり、「TYPE I」は廃止された。この時、SR20DETのヘッドカバーが赤色から黒色に変わっている。
【RPS13 180SX TYPE II 中期型(1991年1月~1996年8月)】◆全長:4520mm◆全幅:1690mm◆全高:1290mm◆車両重量:1220kg◆SR20DET型 直4 DOHCターボ◆最高出力:205ps/6000rpm◆最大トルク:28.0kgm/4000rpm◆排気量:1998cc◆パワーウェイトレシオ:5.9kg/ps
大幅に変更を受けた後期型 シルビアがモデルチェンジしても継続生産!
◆RPS13 180SX TYPE X(1996年8月~1998年12月)
もともとシルビアよりもスポーツ性を強調していた180SXは、エンジンのパワーアップとFRスポーツの素性が改めて評価され、チューニングベース車としても人気があり、走りのステージでは欠かすことのできない存在になっていった。
1993年にシルビアがS14にモデルチェンジしても継続して生産され、1996年にスタイリングを大幅に変更された後期型になった。開口部の大きいエアロダイナミクスを重視したデザインのフロントバンパーと大型のウィングスポイラーが採用され、より迫力が増した。
テールランプはスカイラインのイメージを取り入れた、スポーティな丸型四連タイプに変更され、リアガーニッシュがボディ同色タイプになっている。もうひとつのトピックとしてSR20DEを搭載したTYPE Sが設定され、新180SXを掲げ、よりスポーティさを打ち出していった。
その後、1999年のS15登場時まで9年間継続生産されたロングセラーモデルになったが、メカニズム的にはS14で採用された可変バルブタイミング機構付きのSR20型を搭載することはなかった。
【RPS13 180SX TYPE X 後期型(1996年8月~1998年12月)】◆全長:4520mm◆全幅:1695mm◆全高:1290mm◆車両重量:1220kg◆SR20DET型 直4 DOHCターボ◆最高出力:205ps/6000rpm◆最大トルク:28.0kgm/4000rpm◆排気量:1998cc◆パワーウェイトレシオ:5.9kg/ps
再評価されたスポーティハッチバックの魅力FRの素性とチューニングの可能性
お洒落なデートカーとして若者向けに開発されたS13シルビア/180SXだったが、FF主流のスポーティモデルが多い中、FRであることが再評価され、走りを楽しむ層にも注目を集めた。峠やサーキットをステージとした走り屋は、旧さを感じてきたAE86からの乗り替えとして、同じFRのS13を選ぶ人が目立ってきた。
テンロクスポーツは全てFFになっていて、2000ccクラスはスカイラインやマークIIなどの6気筒モデルが主流なので、軽量コンパクトな4気筒、後輪駆動のS13の魅力が際立ってきたのだ。とくにFRが前提のドリフト競技などではシルビア/180SXが多くなってきてドリ車のイメージが定着する。
チューニングメーカーも、それに合わせて様々なチューニングパーツを開発して、人気が盛り上がってくると、大径タービンを組み込んだパワー重視のチューニングで、豪快なハイスピードドリフトを可能にする本格的な仕様から、ブーストアップとLSDを組み込んだ手軽なライトチューンでドリフトを楽しめる、コスパの良いベースモデルとしても人気を集めた。
スタイリングでも、人とは違ったクルマにしたいということで、フロントをシルビアに変更することが容易だったため、180SXをベースにハッチバックスタイルのシルエイティがユーザーの間で流行し、一部の日産正規販売店からも特別仕様車として限定販売されるという珍しいこともあった。
【現在から今後の中古車動向】今となっては希少な軽量FRターボモデル
180SXは生産期間が長かったので、それなりにタマ数はあるが、現在の旧車人気を受けて’90年代のスポーティモデルも注目を集めている傾向もあり、年々中古車相場の上昇が見られる。前期型のCA18DET搭載車は、個体数も少なく程度の良いものも残ってないため、もうほとんど市場に出てこなくなった。
たまにあっても250万円前後で走行5万キロ程度の極上車くらいで、すでにコレクターズアイテムになっているのかもしれない。中期型のメインは’94~’96年式あたりが多い。概ね200万円くらいといったところで、走行距離は10万キロが平均になっていて、年式と距離から考えると、かなり高価になってきているのがわかる。最近まではタマ数も多く選べる幅が大きかった中期型だが、年々減少傾向のため、現在では後期型の方が手に入りやすくなってきた。
エアロフォルムが人気の後期型は’97年式あたりが中心で、230万円くらい。走行距離も10万キロ手前と、中期型とほぼ変わらないので年式を考えると狙い目だろう。今後はどんどん数も減っていくため、新車価格で一番高価だったTYPE Xが250万円だったことを考えると、すでに超えている個体もあり、さらに平均でもジリジリ上がっていくと考えられる。
また、スポーティカーの定石で、荒く乗られていない安価なAT車をベースにMT載せ換えといった方法があるが、180SXの場合、ほぼMTしか出回っていないので無理のようだ。最終モデルでも23年も経っているのでボディの状態や程度を見極めることが大事。とくにサビの進行具合には注意したい。
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みんなのコメント
あれはリミッター解除だけで200km/h出ましたが、ATのせいか全然加速感(トルク)なかった。
あの1800ccの180SXはもう日本中古車にないんでしょうね。。。