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カッコよくなった新型プリウスはAピラーに弊害あり!? マツダ3は内装がイイ! 国産Cセグ2台を辛口評価

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カッコよくなった新型プリウスはAピラーに弊害あり!? マツダ3は内装がイイ! 国産Cセグ2台を辛口評価

 日本の道路を走るにはちょうどいいサイズのCセグメントハッチバック車。オーソドックスなマツダ3と、かなり振り切った新型プリウス。それぞれの個性を徹底的に解剖していこう!!

※本稿は2023年6月のものです
文/水野和敏、写真/TOYOTA、MAZDA、ベストカー編集部、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2023年7月26日号

カッコよくなった新型プリウスはAピラーに弊害あり!? マツダ3は内装がイイ! 国産Cセグ2台を辛口評価

■プリウスのフォルムから「苦悩」を感じる!?

今回、水野和敏氏にはトヨタ プリウス(Z E-Four)とマツダ マツダ3ファストバック(20S PROACTIVEツーリングセレクション)を斬っていただいた

 さて、今回は新型プリウスを評価していきたいと思います。それにしても凄いプロポーションです。

 ひと言で言うと、例えばエスティマがミニバンの実用性を削ぎ落としてまでスタイリッシュさをアピールしたように、スタイリッシュ4ドアクーペを作ってきたというフォルムです。Aピラーもミニバンフォルムの位置から、前後配置はそのままで、高さを削ぎ落とした形状です。

 トヨタは、今回のプリウスの開発では大いに悩んだのだと思います。

 つまり、プリウスはこれまでECO技術の先進性とそれを表現するユニークさをアピールポイントにして、ハイブリッドや、ECOカーというキーワードで、世界にアピールしてきました。

 実際、それはプリウスが存在する意義として初代から継続して認知されてきました。もちろん、居住性などの実用性や利便性の賢さも、ECOの先進性とともに併せ持ち、「プリウス」という独特の市場をつくっていました。

 しかし、今の時代になってトヨタ車のラインナップの中でもハイブリッド車(HEV)は当たり前となり、世界を見てもHEVはもちろん、EVやFCEV(燃料電池車)なども実用化されました。

 こうなると、「ECO先進技術のプリウス」というユニークポイントはありません。また、燃費のよさではトヨタ車のラインナップにもヤリスハイブリッドがあるし、ホンダのe:HEVや日産のe-POWERもあり、特段の優位性はなくなりました。

 そのなかで「これから先のプリウスの存在意義」をどうするか?

 今回のプリウスでトヨタが出した回答は「特異性のユニークプロポーション」でした。

 ミニバン的な前から後ろまで一体化したモノブロックプロポーションから、実用性や利便性を2ドアクーペのレベルまで削ぎ落としたスタイリッシュ4ドアという、ユニークさを特異性の領域まで踏み込んで誇張した新しい4ドア車を提案してきました。デザインのユニークな変革と、走行安定感の演出性です。

 これはフルラインナップメーカーのトヨタだからできることです。燃費のよさはヤリスやアクアに任せる。後席を含めた居住性や使い勝手はカローラやカローラツーリングがある。プリウスがダブってそこを担う必要はないのです。

■「2ドアクーペ感」を選択したプリウス

プリウスの後席乗降性は低いルーフではあるが、決して悪いものではない。足の通過性も良好だ

 だからこそ4枚ドアではあるものの、居住性、乗降性や実用視界などは割り切って、2ドアクーペのような新型プリウスを作ってきたのです。

 前型プリウスからも、次(今回のプリウス)はこうなるな、と、容易に予測はできました。こうするしかプリウスが生き残る道はなかったのです。思い切った割り切りによる、特異性のあるユニークデザインや、走りのイメージでプリウスだけの独自の存在領域を作ったのです。

 例えば、前席の乗降性や前方側面の実用視界&視認性をトレードオフして、ミニバン並みに寝かしたAピラーの傾斜(ミニバンは高さがあるので視界は得られる)や、ガラス側面部を透過する視界の歪みを、法規限界まで追いかけたフロントガラスのデザイン(私はこの視界の歪みはきつく感じますが)などです。

 ペダルの配置も全体的に車体内側にオフセットしています。

 アクセルペダルはオルガン式ですが、通常の操作性をよくするために、付け根付近はブレーキペダル側に寄せて斜めに配置しているため、ブレーキペダルの中心から少し右にずれてペダルを踏むと、靴の右側面がアクセルペダルに引っかかりやすくなっています。

 先ほどマツダ3に乗ってみましたが、アクセルペダルは真っすぐで、ブレーキペダルと離れて配置されており、共踏みの危険性は低くなっています。

 プリウスの運転席に座ると、先ほども指摘したように斜めに角度の付いたAピラーがドライバーの視界を遮ります。

 右折時の対向車の確認や、曲がっていった際の歩行者の確認で視線を送りたい部分が、シートの着座位置の低さも重なりよく見えません。左も同様。左折時に歩行者を確認したい部分がちょうどAピラーの付け根で死角になってしまいます。運転では注意が必要です。三角窓はありますが、死角は補えてはいません。

■フロントウィンドウを寝かせたことによる思わぬ弊害

プリウスのAピラーは急角度で寝ているため特徴的なプロポーションだが、乗降性は決してよくない

 小さいメーターパネルがインパネの奥、遠くに置かれています。視点が遠いのはいいと思います。特に高齢者では、目の焦点合わせが遅れるので、運転視界とメーター視認が同じような位置関係のメーターはガラスに投影するヘッドアップディスプレイよりもいい。

 ですが、残念なことにこのメーターパネルは小さすぎて、表示される文字も小さく見づらいです。また、ステアリングの上から視線を送って見るのでしょうが、ステアリングのチルトをどこにセットしても、ステアリングホイールが邪魔して、メーターが隠れます。

 このレイアウトはプジョーが最近やっていますが、プジョー車はステアリングの上下を平らにした楕円形のステアリングにして視認性を確保しています。

 シートは悪くないです。かといって素晴らしい、というシートでもありません。まあ普通です。

 寝かせたフロントウィンドウのため、インパネ上面が窓に映り込んでしまいます。この窓映りは前方視界を邪魔し疲れます。インパネ上面の映り込み防止対策を切望します。

 後席の乗降性は悪くありません。ルーフが低いことは、さほど気になりません。足元の通過性も悪くありません。しっかりとドア開口部の広さがあります。

 座面はクッションが薄く見えますが、座ると底付きするようなこともなく、問題はありません。しかし、足元は靴先が前席下に入らず、ちょっと窮屈な姿勢です。ルーフを低くしたため、それに合わせて前席のヒップポイントをスポーツカー並みに低くしたためです。

 後席の居住性は、全体的に評価をすれば、決して悪いものではなく、充分実用的です。ルーフ後端が低くラウンドしていますが、頭上スペースは決して窮屈ではない。2ドアクーペのようにサイドを絞っていないので狭さを感じません。後席側窓は上下が狭いのですが、全開するので閉塞感はさほどありません。

 これはプリウスの革新的なフォルムを優先する結果ですが、車両後部の空力性能は苦しそうですね。リアクオーターピラーから車体後端までが斜めのガラス面だけでつくられていて、後端に水平な面がありません。

 空力的には水平な面を作って、風を車体の上方向に流したい。プリウスの形状だと、後端に小さなスポイラーが付いてはいますが、整流させる水平な面がないので、車両の後端から離れる風は、車体の後端に廻り込んで大きな渦を作っています。

 この渦の内部は台風と一緒で、大きな負圧が発生し、クルマの走行抵抗になります。このデザイン処理での空力Cd値は、床下カバー類の処理を含めて、ムービングベルト風洞では0.27~0.28前後と予想します。前型に対して向上はしていないと思われます。

 フロント周りも空力より、ブランド意匠を優先したデザイン処理です。バンパーサイドから車体側面に整流風を流す形状ではありません。

 また、サイドシルの形状も、床下の走行風をシル横から排出して、前方からの流れと干渉させて抵抗を作ります。通常サイドシルの下はスカート形状として車体下面の風を側方に出させないようにするのです。

 タイヤハウス開口の隙間はしっかりと詰めていて、これはいいですね。詰めながらもクロスオーバー的な雰囲気を見せるためにブラックのモールディングで視覚的効果を狙っているのは面白い工夫です。

 ただ、このモールディング部の段差が車体サイドを流れる風を乱します。ここでも空力よりもデザインを優先していますね。

プリウスが採用する幅狭大径タイヤは理にかなったコンセプトだと解説

 195/50R19サイズのタイヤは、いわゆる幅狭大径のコンセプト。私は2001年のV35スカイラインですでにこの考えを盛り込んでいました。それを極端にしたものがBMW i3のタイヤです。そして究極が自転車のタイヤです。

 ツールドフランスなど、あんなに細いタイヤでハイスピードダウンヒルコーナリングができるのは、大径のため縦方向の接地面積が確保されているためなのです。

 マツダ3は215/45R18で、一般的な外径、トレッド幅のタイヤです。マツダはまだその考え方には至っていません。

 マツダ3も空力面ではプリウス同様、突き詰めてはいません。相変わらずのマツダ顔と後ろ姿の造形で、フロント周りが長くて重ったるく、後ろは風を巻き込んで渦を作りやすい形状です。床下にも両車ともにカバーなどはなく、特段の空力処理はしていません。

 さてエンジンルームを見てみましょう。

 プリウスのパワーユニットは直4、2Lのハイブリッド。このエンジンは直噴とポート噴射を併用する方式で、燃料と空気を最適な状態で混合して燃焼の効率化を追求している点を高く評価しています。

 車体構造は最近のトヨタFFプラットフォームのガッチリした構造です。ストラットアッパーはしっかりとダッシュパネルに直付けされています。

 エンジンルームとダッシュパネル間の、騒音や熱気を遮断するゴムシーリングはしっかりとしたものを付けてきました。エアコン外気導入口から音を入れないために必要なことです。

 マツダ3もゴムシールはサイドまで回していますが、材質が薄くてペラペラ。これでは遮音や断熱効果が半減です。

 マツダはエンジンマウントとインシュレーターにお金をかけています。エンジン側はガッチリしたアルミ鋳物でサポートも入っていて、車体側のブラケットもアルミ鋳物でガッチリしています。

 シリーズにディーゼルエンジンがあるため、振動やエンジン本体の重量に耐えるため、しっかりとしたエンジンマウントが必要なのです。滑らかなモーター主体のプリウスのエンジンマウントと比較すると、数段ガッチリしています。

 車体構造はガッチリしています。ストラットアッパーはダッシュパネルにガッチリ直付けされていて、左右をつなぐアッパーレインフォースで補強されています。ガッチリした車体構造です。

■マツダ3の内装はクラス以上!

マツダ3のインテリアはソフトパッドの使い方やカラーコーディネイトなど、クラスを超えた上質感がある

 マツダ3の内装はラグジュアリーでいいですね。インパネ上面やセンターコンソールのトリムにはしっかりとソフトパッドが使われていて、質感の高さを感じます。

 今回の車両はオプションのレザーインテリアですが、シートやインパネ、ドアトリムの表皮の仕上げも丁寧。ステアリングの握り感もしっとりとしていていい感触です。

 マツダ3のインテリアは、200万円台という車両価格を考えたら、圧倒的にバリューが高い。天井内張のクロスの質感も高く、いい素材をしっかりと使っています。

 メーターパネルは丸形メーターをセンターに置いたオーソドックスな造形ですが、視認性に優れていていいと思います。メーター表示の書体とサイズのバランスがいい。

 そして先ほども書きましたが、ペダルレイアウトも変にオフセットすることはなく自然な位置。アクセルとブレーキペダルの位置関係、段差などもよく考えられていて、踏み間違えを起こしにくいし、操作感も滑らかでいいです。

 またインパネのスイッチ類の配置も使いやすいし、メッキの色合いが統一されていて、カラーコーディネイトも上手で、質感を高めています。上級車の内装です。

 後席の乗降性はいいですね。ドア開口部の足元は広く、足の通過性がいい。シル段差も深くないため、降車時の足の通過性も問題ありません。頭の通過性も良好です。

 後席に座った際の足元は、しっかりと靴先が前席下に入るので、前方に足を投げ出した姿勢をとれるため、窮屈さがありません。座面クッションのストロークが大きく、スッとお尻が沈み込んで座り心地がいい。背もたれの高さもあり、後席の居住性は高いです。これはよくできています。

 リアの荷室は、まあ車体サイズを考えれば標準的な広さです。フロアボードをめくるとジャッキとホイールナットレンチが搭載されています。最近のクルマでは珍しいです。後席を前倒させると、しっかりとフラットになります。

 プリウスの荷室は、ハッチゲートの開口部の左右幅が狭く、斜めに角度がついているため、大型のスーツケースを2段重ねに積むことができません。実質的な深さが足りないのです。

 トノカバーはついていません。深さがないためトノカバーをつけると、さらに荷物の積載性を損なうので敢えてオプションとしたのでしょうか? 後席の分割可倒はフラットになりますが、床面はかなり高いです。

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  • ヨイショばかりの(自称)自動車評論家より、水野氏みたく実際に開発に携わった人のインプレは説得力がある。
  • プリウスのコストダウンが残念。ドアを閉めた時に軽自動車並の薄っぺらい音がして興冷めした。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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