■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ
日本市場に再参入したヒョンデ(以前は“ヒュンダイ”と発音していた)が販売するのは、EV(電気自動車)とFCEV(燃料電池車)。あえて、エンジン車を日本に持ち込まないのは賢明な判断だろう。
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EVの「IONIQ 5」は、ご覧の通り、とてもスタイリッシュな2BOX型のクルマだ。流行りのSUVではなく、あえてオーソドックスなボディー形状を採用している。全長4635x全幅1890x全高1645mmというサイズは、日本の路上でも大き過ぎず、小さ過ぎることもない。
3000mmというホイールベースは、海外ではライバルとなっているテスラ「モデルX」(2970mm)やフォルクスワーゲン「I.D4」(2766mm)、アウディ「e-tron」(2928mm)などより、長いのが特徴だ。
機械として優れているか? ★★★★ 4.0(★5つが満点)
「IONIQ 5」には、搭載するモーターの個数の違いから2種類のモデルがある。後部に置いたモーターで後輪を駆動するものと、前後に置いた計2基のモーターで4輪を駆動するものだ。航続距離(WLTCモード)は、バッテリー搭載量によって3モデルに分かれ、後輪駆動モデルが498kmと618km、4輪駆動モデルは577km。いずれを選んでも、日本での一般的な使い方では十分だろう。
価格も発表されており、85万円の補助金を差し引くと、後輪駆動モデルが装備の違いによって394万円、434万円、464万円と3グレード用意されている。4輪駆動モデルは504万円のグレードと、後述する装備や機能、スペックなどからするとリーズナブルだ。
今回、4輪駆動モデルの「Lounge AWD」に乗って90分間、都内の一般道と首都高速道路を走ってみた。車内に乗り込むと、空間の広さが印象的だ。それも、ボディーを大きくしただけの広さではなく、他のEVやエンジン車などと違った開発コンセプト「多目的居住空間(Smart Living Space)」が反映された結果としての広さだ。
具体的には、シフトセレクターを運転席と助手席の間からハンドルの付け根に移動し、センターコンソールを廃している。これによって、運転席と助手席の間に障壁がなくなり、往来が簡単になる。もちろん、見た目にもスッキリとする。バッグなどを置くこともできるだろう。
助手席や後席のリクライニングやスライドも、運転席に座ったまま行うことができる。後席のスライド幅などは140mmもあり、車内を広く使うこともできるし、反対に荷室を拡大することもできる。さらには、運転席と助手席のシートのヒザ裏が当たるところに組み込まれているレッグレストを引き出せば、脚を伸ばしてリラックスすることもできる。こうしたシートならば、外出先で充電を行って車内で待つ間に、リラックスした姿勢を取ることができるだろう。
これまでのエンジン車では、シートに求められるものといえば、運転中にいかにしっかりと身体をホールドできるかということだけだった。リラックスできるかどうかなど求められていなかった。走ることと同じだけ、車内で過ごす時間の質と内容が重視されている。文字にすると当然のことと読めてしまうが、それが実践されているクルマは他になかなか見当たらないものなのだ。
細かなところだが、ドアのアームレストが前端から後ろ端まで凹んでいて、どこでも指が掛けやすくドアの開閉に便利にできている。コロンブスの卵的なことだけれども、良く考えられている上に、細部を疎かにしていない。「多目的居住空間(Smart Living Space)」という開発コンセプトは掛け声だけに終わらずに、ユーザーの実利として結実していて素晴らしい。
そして、おそらく現時点の輸入車では唯一と思われるV2H(Vehicle to Home)を実現している点も、「IONIQ 5」の大きな長所だ。「IONIQ 5」のバッテリーを家庭のエネルギー源として活用できる。災害や停電時などに役に立つ。「輸入EVは魅力的だが、V2Hができないので」と、二の足を踏んでいる人には検討に値する。
今までのクルマに求められるものとできることは「走る、曲がる、止まる」だけだった。しかし、これからのクルマは、それらにプラスして様々なことができるようになる。そうした、「クルマの脱・自動車化」の動きを「IONIQ 5」は見事に具現化している。期せずして、開発コンセプトが時流を巧みに捕まえることができている。
商品として魅力的か? ★★★★ 4.0(★5つが満点)
ただ、「IONIQ 5」には難点もある。ひとつ目は、段差や荒れた舗装での乗り心地が急に崩れること。速度域を問わず、路面が悪いと車内へ過大なショックがそのまま伝えられる。重たいバッテリーを床下に積んでいるEVの宿命だが、改良の必要があるだろう。
2つ目は、音声入力の作動不良。こちらの言葉を、90分間一度も認識してくれなかった。特定の言葉に反応するはずだから、「音楽を聞きたい」から始め、そのバリエーションや別の階層となる「イーグルス」や「Spotify」あるいは「CarPlay」など、様々な言葉を発したが、「聞き取れないので、静かなところでやり直して下さい」や「聞き取れないので大きな声でお願いします」と返されるばかりで、つないだ自分のスマートフォン内のCarPlayとSpotify経由でイーグルスを聴くことは最後までできなかった。
明らかに、音声ソフトのバージョンが古いものが使われているのだろう。他のクルマでも同じように使えなかったこともあるが、最新ソフトウェアを搭載しているメルセデス・ベンツやBMWのように便利に使えるようにしてもらいたい。難しい話ではないはずだ。
3つ目は深刻だ。「IONIQ 5」の運転支援機能はレーンチェンジアシストまで可能な最新レベルのものが組み込まれているが、せっかくの12.3インチLCDディスプレイのメーターパネルを使っているのに、表示を変えられないのだ。首都高速で運転支援機能を働かさせても、画面上部の小さな表示で機能が働いているかいないかを確かめなければならない。使いにくく、もったいない。
一部の日本車に残っている、樹脂製のリアルな針が残っているメーターならば表示を切り替えられなくても、まだ諦めが付く。「古いのだから仕方がない」と。しかし、「IONIQ 5」は最新のフルデジタル式モニターなのだ。切り替えられるようにするのは難しくないはずだし、最大のメリットをみすみす活かしていない。12.3インチの広いスペースをギミック的に使っているだけというのは、開発者の見識が疑われる。他のクルマを試してみれば、一目瞭然なのに、社内に指摘する人はいなかったのだろうか?
■関連情報
https://www.hyundai.com/jp/ioniq5
文/金子浩久(モータージャーナリスト)
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