この記事をまとめると
■東南アジアなどの新興国でも都市部レベルでは日本よりも多くのBEVを見かける
EVのバッテリーを交換式にすれば充電待ち時間なくなるじゃん! が「画期的アイディア」とならないワケ
■いつまでたってもBEVが普及しない日本を諸外国は「?」という思いで見ている
■BEVの品質や信頼性の分野で日本メーカーが海外メーカーに抜かれる姿は見たくない
新興国の都市部では日本よりもBEVが走ってる
ガソリン価格の高値傾向が止まらない状況が続いている。もちろんガソリン価格の高値傾向は日本だけの問題ではない。政府は当初2023年9月末終了予定だった「ガソリン補助金」を継続し、当面ガソリン価格はリッター当たり175円程度に抑制していくようである。
補助金がなければとっくにリッター当たり200円台も当たり前と言ういまの状況では、脱炭素化という政策目標もあるのだから、購入補助金をさらに手厚くしてBEV(バッテリー電気自動車)の普及促進をはかるということもできるが、日系ブランドのBEVはまだまだ珍しい存在となっている現状では、その普及もままならない。
BEVについてはいろいろな疑問を持つ人もいるだろうが、日本がいま景気浮揚で頼り切っているインバウンド(訪日外国人旅行客)の母国の多くでは、たとえ東南アジアの新興国であっても、首都など都市部レベルでは日本よりはBEVを見かける。
現状では富裕インバウンドが大半を占めているともいわれているので、よりBEVに近い生活を送っているともいえ、日本でごく稀にテスラが走っている風景を見たときに、「日本って遅れているな」と思われているとも聞いたことがある。
BEVをメインで販売しろとは言わないが、多くの世界の自動車メーカーがBEVを積極的にラインアップしているなかで、日本車はいつまで経ってもラインアップが増えないとなれば、「?」と思われても仕方ないだろう。
「耐久性能が高く、壊れにくく、品質が高い」、これは日本車の世界的評価といってもいいだろう。しかし、このような世界的評価は1980年代後半あたりからと筆者は考えている。その少し前、1970年代後半あたりは、燃費のいい安価なコンパクトカーという部分のほうが大きかった。戦後国産車の創成期といわれたころ、北米進出しても「フリーウェイの高速走行に耐えられない」とか、「すぐオーバーヒートする」など、その評判は芳しくなかった。
日系メーカーはBEVに対してあまりに慎重すぎる
筆者の子どものころも、親戚が乗っていた日本車(コンパクトカー)が峠でオーバーヒートして、ラジエターから水が噴き出していた。日本メーカーは、当時のクルマでは当たり前であった故障でも、できるだけ起きないようにしようと努力して、今日の評価を勝ち取ってきたのだ。
あるBEVを扱う海外ブランド系ディーラーでは、「BEVはまだまだ日進月歩が著しい商品ですので、残念ながら再販価値は期待しないでください」とはっきり言ってきた。それでも販売するのは、それよりも良い商品を作っていきたいという気持ちがあるからだろう。
買う側としては、そのような過渡期の商品ならではの面白味を楽しもうとホビー感覚で買う人もいると聞くが、そのほかにも「日本車でBEVが出るのを待つ」という人も多いようだ。そのような期待があるなかで、後出しすらできない現状では、消費者の日系BEVへ対する期待はドンドン高まっていき、売りにくくなるだけだとも思うのだが……。
BEVが一時のブームのようにこの世から消え去ることはないだろう。BEVに消極的にも見える動きが正論だったとしても、世の中は正しいことばかりがまかり通るわけでない。実際にBYDの販売現場では、「トヨタに認められた」(トヨタはEVの分野でBYDと協業している)というようなことをセールストークに使っていた。
安全運転はいいことだが、追い抜かれるばかりになることだけは避けて欲しいと筆者は考える。
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