現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則206】ジープ・コマンダーは伝統的なジープらしいデザインが受けた

ここから本文です

【ヒットの法則206】ジープ・コマンダーは伝統的なジープらしいデザインが受けた

掲載 更新 3
【ヒットの法則206】ジープ・コマンダーは伝統的なジープらしいデザインが受けた

2005年のニューヨークモーターショーで発表されたジープ・コマンダーは「7人乗り3列シートの初めてのジープ」として大きな話題を呼んだ。3代目グランドチェロキーをベースに、さらに大きく豪華で、デザインがよりジープらしかったのが特徴で、現在でも中古車市場で人気となっている。当時の試乗記から、どんなモデルだったのか、振り返ってみよう。(以下の試乗記はMotor Magazine 2006年8月号より、タイトル写真はコマンダー リミテッド 5.7 HEMI)

シャシはグランドチェロキーと同じ
ジープ・コマンダーの広報資料にこんな一節がある。「新型コマンダーに、大理石をハンマーとノミで彫って作り上げたような優美さはありません。(中略)細部に凝り過ぎていません」。これって、とっても謙虚な言い回しだが、実は自信の裏返しで、「どうです、カッコいいでしょ」と言いたいのである。

【くるま問答】トヨタ2000GTのサイドにある四角い部分には、いったい何が入っているのか?

コマンダーはディター・ツェッチェ(元クライスラーグループ会長、現在はダイムラークライスラー会長)の肝いりで開発が進められた、ジープブランド初の7人乗り3列シートのSUVだ。

ボディラインはボクシーでクラシック。デザインエレメントは「伝説のジープ」と呼ばれるウィリス・ステーションワゴン(1946年)、ジープ・ワゴニア(1963年)から採り入れているが、最もイメージ的に近いのがジープ・チェロキー(1984年)だ。エッジが効いて引き締まったボディは、まさしく「ジープ」そのもの。

7本の縦型スリットグリル、台形のホイールアーチ、実は丸目基調のヘッドライトなど、本当は「細部に凝った」デザインなのである。近年のSUVは空力性能を考慮し、角が取れたデザインのモデルが多い。つまり画一的になりがちだ。となれば、このカタチこそがユーザーに支持される、とツェッチェは読んだのだ。

デザイン力は販売台数におおむねリンクするもので、この読みは当たった。コマンダーのプラットフォームはプランニングの段階では、3列シートゆえにかなりホイールベースが長かった。しかしこの案は採用されなかった。

理由は「ジープ」としての機動性、悪路走破性がロングホイールベースだとスポイルされるからという。なのでシャシはグランドチェロキーと同じで、クォドラドライブIIと呼称する4×4システムも同一。車体サイズはグランドチェロキー比で長さが35mm、高さが80mmアップにとどまる。

7人乗り3列シートに対応した角張ったボディは2列目シートの上部から80mmほど高くなっている。いわゆるハイルーフなのだが、この持ち上がった部分はルーフラックレールがうまくカモフラージュし、「段付き」が気にならない。

2列目のシートは運転席より124mm高く、3列目は2列目より128mm高い。ちょうどスタジアムでスポーツ観戦するような感じ。後席の乗員は前方視界がいいので閉塞感がない。おまけに前席上に電動式、2列目シートに固定式のガラスサンルーフが装備されているので、室内はことのほか明るい。

湧き上がる底力がある5.7L HEMIエンジン
コマンダーに搭載されるエンジンはクライスラー300Cに初採用された可変シリンダーシステム(MDS)を持つV8のOHV(5.7L HEMI)とV8 SOHC(4.7L)の2種類。

まず5.7Lエンジン搭載車に乗ってみる。MDSとは軽負荷時になると8気筒から4気筒へシームレスに切り替えるシステムで、ドライバーはまったく気づかない。動弁機構はOHVで伝統的なアメリカンV8を彷彿とさせるが、実は現代流ハイテクエンジンなのだ。排出ガスレベルはユーロ4の基準を満たしているから立派。

出力は326ps、トルクは500Nmもあるから、まさしく余裕たっぷりで頼もしい。トランスミッションは5速ATで、Dレンジから左右にシフトレバーを動かすとマニュアル操作が可能。これは先代Sクラスで採用されたティップシフト型だが、私はこの「左右シフト」が気に入っている。

スクエアなボディ、高い着座位置のため、前方視界が良くリラックスしてドライブできるが、問題は3列目に乗員を乗せた場合、ルームミラーを通しての後方視界がほとんど確保されないことだ。3列目を倒しておけばノープロブレムなのだが。

輸出用(日本、欧州向け)のコマンダーはオーストリアのマグナシュタイア工場から出荷され、本国用はデトロイト製となる。サスペンションのセッティングは日本と欧州向けは本国仕様に比べてやや硬めになっているという。それでも舗装路のみを走った感じでは案外ソフトだった。ジープ本来の走行フィールド=オフロードランを重視すれば、このあたりのチューニングが妥当なのかもしれないが、他の欧州製SUVと比較するとロールはいくぶん大きめだ。

231psの4.7L版に乗ると、これがさほど気にならなくなる。ダイナミックバランス的にはこちらのほうがいいということになるが、アクセル一発ドン、と踏んだ時の快感はいわずもがな、5.7Lだ。

私はコマンダーのカクカクしたボディスタイルが好きだ。カッコいいと思う。それで「サスペンションをもう少しオンロードセッティングにして、2列シートにした、スポーツモデルがあればいいんだけど」とダイムラークライスラーのセニアマネージャー、ケヴィン・ターナー氏に問いかけた。氏は「うーむ」と笑って語らず。

3列シートがいらないユーザーも多いはず。弟分のチェロキーは。私には「丸すぎる」ので。(文:御田昌輝/Motor Magazine 2006年7月号より)



ジープ コマンダー リミテッド 5.7 HEMI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4795×1900×1830mm
●ホイールベース:2780mm
●車両重量:2360kg
●エンジン:V8 OHV
●排気量:5654cc
●最高出力:326ps/5000pm
●最大トルク:500Nm/4000pm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:673万0500円(2006年)

ジープ コマンダー リミテッド 4.7 主要諸元
●全長×全幅×全高:4795×1900×1830mm
●ホイールベース:2780mm
●車両重量:2310kg
●エンジン:V6 SOHC
●排気量:4700cc
●最高出力:231ps/4500pm
●最大トルク:410Nm/3600pm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:599万5500円(2006年)

[ アルバム : ジープ コマンダー はオリジナルサイトでご覧ください ]

こんな記事も読まれています

佐藤琢磨が3度目の制覇に挑むインディ500をNHK BSで完全放送。琢磨優勝の2020年大会を振り返る特集も
佐藤琢磨が3度目の制覇に挑むインディ500をNHK BSで完全放送。琢磨優勝の2020年大会を振り返る特集も
AUTOSPORT web
【カワサキ】Ninja ZX-25R オーナーのためのレーシングスクール「Ninja Team Green Trial in SPA直入」のレポートを公開
【カワサキ】Ninja ZX-25R オーナーのためのレーシングスクール「Ninja Team Green Trial in SPA直入」のレポートを公開
バイクブロス
2回のテストを行ったアントネッリの適応能力をメルセデスが高く評価「長い間F1に乗っていたかのような走りを見せた」
2回のテストを行ったアントネッリの適応能力をメルセデスが高く評価「長い間F1に乗っていたかのような走りを見せた」
AUTOSPORT web
苦戦続くBMW Mハイブリッド V8が2戦目で得た自信。三味線は「一目瞭然でバレる」とレネ・ラスト
苦戦続くBMW Mハイブリッド V8が2戦目で得た自信。三味線は「一目瞭然でバレる」とレネ・ラスト
AUTOSPORT web
【カワサキ】映える!遊べる! 新しいKCBM「カワサキコーヒーブレイクミーティング in とっとり花回廊」が6/23に開催
【カワサキ】映える!遊べる! 新しいKCBM「カワサキコーヒーブレイクミーティング in とっとり花回廊」が6/23に開催
バイクブロス
フェラーリがレッドブルに勝てないのは、エンジンパワーで劣っているから? “完敗”したイモラ戦を終えて考察
フェラーリがレッドブルに勝てないのは、エンジンパワーで劣っているから? “完敗”したイモラ戦を終えて考察
motorsport.com 日本版
ホンダ「新型プレリュード」25年頃に登場へ “22年ぶり復活”する「スペシャリティモデル」 そもそもどんなクルマだった? 5世代に渡る歴史とは
ホンダ「新型プレリュード」25年頃に登場へ “22年ぶり復活”する「スペシャリティモデル」 そもそもどんなクルマだった? 5世代に渡る歴史とは
くるまのニュース
いまやミニ「1275GT」が300万円オーバーに! かつての不人気車はビミョーなスタイリングと台数の少なさから価格上昇中です
いまやミニ「1275GT」が300万円オーバーに! かつての不人気車はビミョーなスタイリングと台数の少なさから価格上昇中です
Auto Messe Web
メルセデスF1のラッセルがバンディーニ賞を受賞。100年前のタルガ・フローリオ優勝マシンでのドライブも楽しむ
メルセデスF1のラッセルがバンディーニ賞を受賞。100年前のタルガ・フローリオ優勝マシンでのドライブも楽しむ
AUTOSPORT web
【ベンテイガに次ぐ稼ぎ頭】 ベントレー新型コンチネンタルGTを予告 第四世代はハイブリッドへ
【ベンテイガに次ぐ稼ぎ頭】 ベントレー新型コンチネンタルGTを予告 第四世代はハイブリッドへ
AUTOCAR JAPAN
ボタンがポイントの新コスチュームも注目度抜群!! 今年もサーキットに「ZENT Sweeties」の花が咲く!!!
ボタンがポイントの新コスチュームも注目度抜群!! 今年もサーキットに「ZENT Sweeties」の花が咲く!!!
ベストカーWeb
テスラが社名変更、エネルギー事業拡大へ
テスラが社名変更、エネルギー事業拡大へ
レスポンス
脇道を出るときに忘れがちな「歩行者保護」|長山先生の「危険予知」よもやま話 第26回
脇道を出るときに忘れがちな「歩行者保護」|長山先生の「危険予知」よもやま話 第26回
くるくら
全国に5台のみ!! ミニバンなのに3ドアを採用!? 個性派すぎる[アヴァンタイム]
全国に5台のみ!! ミニバンなのに3ドアを採用!? 個性派すぎる[アヴァンタイム]
ベストカーWeb
BYDがカスタムカーや旧車イベントに出展する意義とは?「シール」の導入でセダンの復権なるか!?
BYDがカスタムカーや旧車イベントに出展する意義とは?「シール」の導入でセダンの復権なるか!?
Auto Messe Web
【ドゥカティ】「ディアベルV4」が2024 レッド・ドット・アワードのプロダクトデザイン部門で最高評価を獲得
【ドゥカティ】「ディアベルV4」が2024 レッド・ドット・アワードのプロダクトデザイン部門で最高評価を獲得
バイクブロス
国道140号 大滝トンネル貫通で、秩父の観光地へのアクセス向上に期待! 現道は死亡率の高い恐怖のくねくね道。
国道140号 大滝トンネル貫通で、秩父の観光地へのアクセス向上に期待! 現道は死亡率の高い恐怖のくねくね道。
くるくら
アンダー200万円! トヨタの「快適小型SUV」何が良い? デビュー“4年”でも売れまくり! 「ヤリスクロス」の魅力は?
アンダー200万円! トヨタの「快適小型SUV」何が良い? デビュー“4年”でも売れまくり! 「ヤリスクロス」の魅力は?
くるまのニュース

みんなのコメント

3件
  • でも本当に人気があったら一代こっきりで終わっていないよね。兄弟車のクライスラー・アスペンも然り。確か、発売されてから間もなくアメリカでのガソリン価格が上がりだして、のっけからセールスが大コケしちゃったんだよね。時の運に恵まれなかったとも、ダイムラー・クライスラーの読みが甘かったとも言えるね。
  • ワゴニアとグランドワゴニアが来年発表になるみたい
    ラム1500をベースにした本格SUVで
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

547.0634.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

65.0632.5万円

中古車を検索
コマンダーの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

547.0634.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

65.0632.5万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村