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これ以上が思い浮かばない アストン マーティンDBSヴォランテに試乗

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これ以上が思い浮かばない アストン マーティンDBSヴォランテに試乗

339km/h、725psのコンバーチブル

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)このクルマの特徴のひとつでもあるのが、少々やり過ぎなところ。何しろ700psを超えるコンバーチブルのグランドツアラーを体感できるのだ。アストン マーティン風にいうなら、「グランドツーリング・コンバーチブル」だろうか。

【画像】アストン マーティンDBS 全91枚

クーペボディのDBSスーパーレジェーラは通常のグランドツアラーというより、スーパー・グランドツアラーと呼ぶにふさわしい性能を備えている。DB11が目指す性格よりもスポーティという点で、ずば抜けた性能を持つクルマと一般的なグランドツアラーとは、区別する必要があると思う。

だが両者はだいぶ接近してきており、V12エンジンを獲得したDB11 AMRは高い運動神経を備え、スーパーな領域に踏み込んでいることも事実。先代のモデルラインナップではその区別は難しいところがあったが、よりモデル間での性格を鮮明にするには、SUVとミドシップ・モデルが登場するのを待つ必要がありそうだ。

ソフトトップを羽織るコンバーチブルとなると、DB11ならメルセデス-AMG由来のV8エンジンのみ。V型12気筒を選択できるのはDBSだけだ。フェラーリ812スーパーファストから固定式の屋根をなくしたら、どんなクルマができあがるだろうか。

そんなイメージをアストン マーティンでかたちにしたのがDBSヴォランテといえるだろう。

超軽量とうたいつつ車重は1863kg

アストン マーティン製の5.2L V型12気筒はツインターボで過給。DB11のものとは異なる、過剰なトルクにも対応できる8速ATを介して後輪を駆動する。スペックは華々しい。

725psという最高出力は6500rpmで発生させるが、91.4kg-mの望外に太いトルクが湧き出るのはわずか1800rpm。速く走るのに、ドライバーはアクセルペダルを一生懸命操作する必要はない。

もし右足を深く踏み込めば、静止状態から100km/hに達する時間は3.6秒。そのまま踏んでいると、339km/hという最高速度にオープン状態であっても到達する。オーナーなら一度は体験したいと思うかもしれない。なお走行中でも48km/hまでなら電動ソフトトップの開閉は可能となっている。

DBSのボンネットやトランクリッドを開くと、カーボンファイバー製だということがわかる。素材にもこだわった軽量版「スーパーレジェーラ」でありながら、車重は1863kg。ボディサイズはかなり大きい。価格もオプションを付けない素の状態で24万7500ポンド(3217万円)となっている。

インテリアを見渡すと、DB11ヴォランテとの大きな違いは感じられない。8万7000ポンド(1131万円)もの価格差があることを考えると、これで良いのか少し心配してしまう。上質なレザーが張り巡らされたインテリアは素晴らしい雰囲気なのだが、インストゥルメントの画質はシャープさに欠けるし、エアコンの送風口もプラスティックっぽさが拭えない。

インフォテインメント・システムも、メルセデス・ベンツ製のものがベースながら、1世代前の印象。使いやすいが、スマートフォンと接続するには少し手間がかかる。

オープン状態でV12のサウンドを享受する

+2とはいえリアシートも付いているから、今回はDBSに大人4名を座らせてみた。ドライバーがステアリングホイールに近い位置に座れば、リアシートに大人が座ることもできるようだ。オープン状態なら頭上空間はもちろん問題ない。

握りの良いステアリングホイール上から、サスペンションの硬さやエンジン、トランスミッション、エグゾーストの性格付けを選択できる。サスペンションは、衝撃吸収性も良くボディコントロール性にも優れた、最も柔らかい状態が一般道にピッタリだった。

DBSスーパーレジェーラはスーパー・グランドツアラーだが、コンバーチブルだと、常にハイスピードを求める必要性も感じられない。ステアリングへ振動が伝わってくることはないが、フロントガラス上部のリアミラーは、時々小さな振動を起こしてしまう。

一方でエンジンの設定は、ドライバーがパドルを弾いて変速している限り、最も荒々しい状態が望ましいようだ。トランスミッションはAT任せだと、サーキットでラップタイム計測をしているかのように、迷惑に感じるほど低い段数を選んでしまう。

楽しさを最も享受できる状態は、オープンの状態でV型12気筒の発する中回転域のノイズを直接味わうとき。余剰なガソリンが発する低音は、聞いていて満足感が高い。気温の温かい夜に、郊外の空いた道でのドライブは特別なものに違いない。

日常利用できつつ週末旅行も楽しめる

もちろんハンドリングも良い。DBSヴォランテをサーキットで走らせるドライバーはいないだろうが、落ち着きとバランス性に優れており、正確なステアリングは重さもレシオも適正。FRのクルマとして、ベストと呼べる振る舞いを示してくれる。

アストン マーティンDBSスーパーレジェーラ・ヴォランテの客観的な評価はなかなか難しい。コンパクト・ハッチバックを何台か集めて、価格と車内の広を比較するのなら、結果は簡単に出る。しかし、DBSの場合はもっと主観的に楽しむクルマだ。

この価格帯なら、たとえばV型12気筒の音響を楽しみたいという理由で選んでも良いし、FRの磨き込まれたシャシー性能で欲しても良い。モデル・ラインナップの中で一番高いという理由で選ばれるクルマでもある。理由は問わず、DBSならハイスピードでのクルージングと、聞き惚れるエグゾーストノートが確実に手に入る。

それ以上に2人でラグジュアリーな週末旅行を楽しめつつ、日常的に乗れる最高のクルマを選べと問われたら、ディーラーで手に入るモデルの中では、アストン マーティンDBSスーパーレジェーラ・ヴォランテ以上は思い浮かばない。これなら客観的な評価といえるだろうか。

アストン マーティンDBSスーパーレジェーラ・ヴォランテのスペック

価格:24万7500ポンド(3217万円)
全長:4712mm
全幅:1968mm
全高:1280mm(クーペボディ)
最高速度:339km/h
0-100km/h加速:6.8秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:295g/km
乾燥重量:1863kg
パワートレイン:V型12気筒5204ccツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:725ps/6500rpm
最大トルク:91.4kg-m/1800-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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