1990年代、ダントツ人気だったレガシィツーリングワゴンを筆頭に、ホンダアコードワゴン、トヨタカルディナ、日産アベニール、三菱レグナムなどの名車が続々と登場し、一大ブームを巻き起こした、ステーションワゴン。このワゴンにハイパワーエンジンを積んだスポーツワゴンカテゴリも、当時は盛り上がりをみせており、なかでも、日産が1996年10月に発表したスカイライン譲りの走りを備えたラージワゴン「初代ステージア(WC34型)」は、語りつがれる名車のひとつ。その初代ステージアに、1997年10月に追加されたのが、あのGT-Rのツインターボエンジンを搭載したことで一世風靡した「オーテックバージョン260RS」だ。
文:吉川賢一
写真:NISSAN
中古で400万円超!?? 国産最強のステージアオーテックバージョン260RSはなぜ一世風靡した?
ステーションワゴンながら、中身はほぼ「GT-R」
オーテックバージョン260RS(以下260RS)のベースとなっているのは、初代ステージアの2.5L直6ターボの25tRS FOUR V(これだって280psで相当に速かった)。名称にある「260」は排気量(2.6L)のことで、BCNR33のスカイラインGT-Rと同じ「RB26DETT」を積んでいることを示している。
エンジンの最高出力はGT-Rと同じく280ps、最大トルクは37.5kgf・m。クーペボディよりも不利なワゴンボディでも車体剛性が維持できるよう、車体およびシャシーには大幅補強が施され、GT-R譲りの電動SUPER HICASや電子制御トルクスプリット4WD、ブレーキにはブレンボ、BBS製17インチ×7JJの鍛造アルミホイール、タイヤはパフォーマンスなBSポテンザRE010など、搭載されたアイテムをみれば260RSはほぼ「GT-Rのワゴン」。見た目は地味であったが、日産史上、最強・最速のツーリングワゴンといっても過言ではなく、当時のクルマ好きの心をくすぐるモデルだった。
オーテック260RSのベースは、2.5リッター直6ターボの25tRS FOUR V。トランスミッションは5速マニュアルミッションのみを設定していた
BCNR33のスカイラインGT-Rと同じ「RB26DETT」を搭載、名称を260RSとした
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外装は地味だったが、内装にはこだわりが
見た目は地味だった260RSだが、インテリアはかなりこだわってつくられていた。専用開発したスポーツシートは、ホールド性、サポート性を向上させながら、シフト操作時に肘とシートが干渉しないよう、サイドサポート形状を工夫。また本革巻ステアリングホイールやシフトノブ、パーキングブレーキには、手のひらに無用な刺激を与えないよう、グリップ部材に溝を彫り込み、糸が表面で交差しないように縫製したという。
また、インストルメントパネルとパワーウインドウスイッチのフィニッシャーは、高級感かつスポーティな雰囲気のメタル風ダークトーンでカラーリング。コンビメーターは、スポーツマインドを掻き立てる10,000rpmスケールの専用タコメーターかつオレンジ照明とし、センターコンソールには、フロントトルク計、油圧計、ターボブースト計をしこんだ小径3連メーターをレイアウト。90年代の日産車はこのようなインテリアのクルマが多かったが、いま見ても古臭さを感じず、いい味が出ているように感じる。
その後ステージアは、2001年にV35スカイラインがベースの2代目(M35型)へと切り替わり、ワゴンブームがすっかり下火となった2007年まで販売された。
コンビメーターは10,000rpmスケールの専用タコメーターかつオレンジ照明を採用。センターコンソールには、フロントトルク計、油圧計、ターボブースト計の3連メーターをインストールした
専用開発したスポーツシートには、ホールド性、サポート性を向上させながら、シフト操作時の肘とシートの干渉がないよう、サイドサポート形状を工夫しているそう
1998年式が北米の「25 年ルール」をクリア 根こそぎ輸出されてしまう可能性も
2023年9月上旬現在の中古車市場において、260RSオーテックバージョンは、(某中古車サイトでは)掲載台数3台と少なく、走行距離も10万km超だが、相場は470万円~625万円。ここまで高価になっている理由のひとつは、1998年式までがアメリカの「25 年ルール(「アメリカ合衆国の安全基準を満たさないクルマは輸出できない」というルールの例外として、製造から25 年を超えたクルマは規制の対象外となるもの。2023 年は、1998 年式が製造年 25 年を超える)」をクリアしたことだ。
既にバイヤーの間では、「あのGT-Rのワゴン版がある」ということは知られている上に、日本の旧車を愛するJDM(Japan Domestic Market、直訳すると日本国内市場だが、アメリカ人が古い日本車を所有・カスタムをする文化のことをさす)文化は、アメリカの若者の中でいまだに熱いようで、根こそぎ持っていかれる可能性もある。超希少なステージア260RSオーテックバージョン、欲しいと思うならば、いますぐ動いたほうがいいだろう。
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