■ほぼノーマル仕様で電気自動車レースへ参戦! それでも「問題なし」
2019年6月9日に「全日本EVレース選手権」の第2戦「筑波50kmレース」が行われました。
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電気自動車のレースとなれば、強いのは高出力モーターに大容量電池を組み合わせたテスラ「モデルS」でしょう。実際、筆者である私(国沢光宏)も2017年は772馬力というパワフルなモーターを搭載するモデルSに乗り、参戦したレース全てで優勝。シリーズチャンピオンになっています。
今回の筑波50kmレースで私が乗る日産から借りた「リーフe+」は、電池搭載量を増やし、モーター出力を218馬力に上げたタイプ。スペックで比べればテスラに届かないものの、袖ケ浦サーキットで試乗したらけっこう速かったのが印象的でした。
しかも、バッテリーの温度だって上がりにくい。これならテスラに迫れるんじゃないか、と考えた次第です。勝負はやってみないとわかりません。
レース出場にあたって変更したのは、サスペンションとブレーキパッド、タイヤのみです。標準装着されている乗り心地重視のサスペンションと転がり抵抗優先のタイヤ、耐久性をメインに考えたブレーキパッドはサーキット向きではありません。
予算不足ということで、事前のテストなども出来ず。もっといえば、サスペンションもブレーキも前日に完成しました。
ということでレースは文字通りぶっつけ本番で、いきなり予選です。走り出すと「ありゃま」というくらい全く問題無し。サスペンションは市販品が無いため「サンコーワークス」で作った一品モノです。
ブレーキパッドも市販品なく「BRIG」が経験だけで作った一品モノ。タイヤのみ、定評あるヨコハマの「アドバン A052」というスペックです。
けっこうな手応えを感じたのだけれど、タイムを見てビックリ。1分11秒186を記録しました。テスラ勢にこそ届かなかったものの、クルマ好きなら驚いて頂けるタイムだと思う。
今回は間に合わなかったバケットシートで身体を安定させ、もう少しセットアップしていけば10秒台前半だって可能か、ということで予選は3番手。上々です。
■テスラ車2台を追い越し! パワフルな走りを見せた「リーフe+」
迎えたレース本番、果たしてどうなるか全く予想出来ず。スタートすると、さすがにテスラ車は速いです。前方の「モデルS」は4WDで、ポールポジションの「ロードスター」も282馬力のモーターを軽いボディにミッドシップするため、218馬力のFFリーフより速いです。
ところが、1コーナーに入るとコーナリングスピードで負けておらず。むしろ追いつくほどです。
立ち上がり加速も引き離されるものの、コーナーの突っ込みとコーナリングでカバー出来る。こうなればプッシュするのみ。全開で追いかけます。
まずは、最終コーナーでモデルSのイン側に飛び込んで抜く。すると続いてはロードスターがターゲット。驚くことに十分についていけます。これまた第2ヘアピンのブレーキ勝負で、インに入って抜きます。
あれほど強いと思っていたテスラ勢をあっという間に追い抜いてしまいました。これで余裕のレースかと思いきや、今までトラブル続きだった改造クラスのトヨタ「86」が真後ろにピタリとついてきます。超困ったことに絶好調の様子です。
この「86改」、ドライバーの金沢選手もベテランのため手強い。86改を知り尽くしているし、ミスだってしないです。
テスラを抜いたらバッテリー温存走行に切り換えようと思っていたのに、そうもいかなくなりました。というのも2017年にテスラ車でレースをやっていたため、弱点を十分知っています。短い距離なら速いテスラ車ですが、ハイペースで走り続けると30kmあたりからバッテリー温度が上がり、パワーを自動的に落とすモードに入ってしまいます。
一方、86改のポテンシャルはわかりません。もし追い抜かされたら、引き離されそうです。ということで常に後ろを見ながら走り、抜かしに掛かってきたらアクセル踏んで対抗しようという作戦へ切り換えます。
恐れていたことは20周目にやってきました。相手がテスラ車なら十分対応出来ると思っていたバッテリーの温度上昇ですが、レース用に作った86改が相手だと厳しい。
25周のレースのうち、ついに21周目でリーフもバッテリー温度が上昇し、セーブモードに入ってしまいました。もはや絶対絶命だと観念しましたが、86改が抜きに来ません。後でわかったのだけれど、86改も厳しい状況になっていたようです。
そして迎えた最終ラップ、86改もパワーダウン。デビューレースでTOPチェッカーであります。
素晴らしい、と思っていたら好事魔多し。電気自動車レース、終盤は電池切れでスローダウン走行車や、止まってしまうクルマがたくさん出てくるため、イエローフラッグは出ない傾向です。しかも全てのクルマの平均速度が下がるため、安全性は上がっていきます。
いつものように走っていたら、黄旗(追い越し禁止区間)を見逃しました。
私と真後ろにいた金沢選手も見逃し、2台共に1ラップ減算のペナルティで3位ということになりました。いいたいことはあるけれど、競技は審判が判定するものです。ベテランの主催者ですし、だからこそ電気自動車レースは誰でも安心して走ることができます。
むしろデビューレースで優勝なんてライフスタイルに合わない。しかし困ったことに86改は、次はさらに手を加えるといいます。
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