もともとは、メルセデス・ベンツにおけるエントリーモデルという任を担っていたのがCクラス。現在では、よりコンパクトなシリーズが登場したことによって立ち位置は変化したものの、そのフォーマルかつプレミアムな存在意義は現在でも基本的に変わっていない。そこで今回はセダン、ステーションワゴンに加えて登場した新たなる「オールテレイン」の価値観に注目する。(Motor Magazine 2022年7月号より)
SUVとしての安心感とディーゼルMHEVの妙味
歴史あるフランクフルトでの開催に終止符を打ち、会場をミュンヘンへと移したドイツでのモーターショー。2021年9月に開催されたその会場で公開されたのが、Cクラスファミリーに追加されたオールテレインだ。
【写真蔵】メルセデス・ベンツ Cクラスに3番目のボディタイプとして追加された、クロスオーバーの「オールテレイン」
端的に言ってしまえばそれは、Cクラス ステーションワゴンのボディをベースにSUV流儀のドレスアップを施し、4WDシャシの採用やサスペンションのチューニング、大径タイヤ&ホイールを装着することなどによって、実際の踏破性も向上させたモデルだ。
古くはスバル レガシィの「グランドワゴン」にそうしたアイディアの先例を見つけられるし、現在ではより直接的なライバルとして「オールロードクワトロ」を名乗るアウディ A4が存在する。
メルセデス流儀のネーミングルールに明るい人なら「C220d 4マティック オールテレイン」という名称から、ディーゼルエンジンを搭載した4WDシステムの持ち主と察しが付くはず。
パワートレーンをより詳しく紹介すれば、200psの最高出力と440Nmの最大トルクを発する2L直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジンに、最高出力15kW(20.4ps)を発揮するスタータージェネレーターによるマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたパワーユニットをさらに、9速ATとマッチングさせたもの。
発生したトルクは、45:55とやや後輪寄りのバイアスで伝えられる4WDシステムを介して路面に伝達されるメカニズムを持つ。
Eクラスに続く第二弾専用ボディのオールテレイン
「オールテレイン」なるサブネームが与えられるものとしては、日本では2017年9月に「メルセデス・ベンツ初のクロスオーバーモデル」という謳い文句とともに、当時Eクラスで唯一の4WDモデルとして発売が開始された「Eクラス オールテレイン」に次ぐ第二弾モデル。
サスペンションのチューニングとタイヤ径のアップでボディ全体を持ち上げ、よりたくましい印象を放つ専用デザインのボディキットを装着といった手法は両モデルに共通するものの、エアサスペンションの採用はEクラスのみで、新型Cクラスオールテレインには設定されていない。
つまり、いざというシーンでさらに地上高を高めて難所を凌ぐ、という戦法はこちらでは採れない理屈。全高が1495mmに留められたことで日本では多くのパレット式立体駐車場にすんなり進入することができるというメリットを享受する一方で、ベースのステーションワゴンより40mm高く設定されながらも150mmという、SUVキャラクターの持ち主と見れば決して高いとは言えない最低地上高のスペックに、やや不安を覚えるという人もいるかもしれない。
実際、ドライバーズシートへと腰を下ろした時点では、本格的なSUVで味わえるような視界の見下ろし感は皆無。その点では、SUVならではのありがたみに欠けるという見方もできる。だが同時に、オーソドックスなステーションワゴンからの乗り換えでも何ら違和感を抱かないことにポジティブな受け取り方をすることも可能だ。
加えれば、そうした「高過ぎず低過ぎず」のシート高がもたらす乗降性の良さは、すこぶる良好。これだけで、通常のCクラスよりもオールテレインを選びたい、というユーザーも存在するだろう。
物理的なスイッチは整理されてすっきりしたインターフェイスに
前後バンパーやフェンダーアーチの造形、フロントグリルの装飾などで、たくましく堂々とした「ラギッド」な雰囲気を主張するオールテレインだが、インテリアの雰囲気に関しては、ベースとなったCクラスとの共用感が強い。
ダッシュボードまわりでは、ドライバー前面とセンターパネル部分にレイアウトされた2面の大型ディスプレイ、角丸でなかなか自己主張が強いデザインのフェイスレベルのエアアウトレットが特徴的だろう。
ADASの高度化を筆頭に、増加の一途を辿る機能に対応した物理スイッチ数の増加を嫌い、このモデルでも多くの項目のプリセットなどをセンターディスプレイ内のアイコンを呼び出して行う仕組みになっている。また大型ディスプレイゆえアイコンサイズやその並びの間隔に余裕が大きく、この種のアイテムの中では扱いが容易な方であるのは幸いだ。
ちょっと戸惑ったのは、前席の調整方法だ。ドアトリム前方に座席のサイドビューを模したスイッチを配するのはメルセデス・ベンツの伝統と言える方式だが、以前のようにスイッチの該当部を動かす操作ができなくなり、該当箇所をタッチするだけのスイッチとしてしまった点は、せっかくのアイデアも半減という印象で惜しい。
満足できる動力性能と納得の行くフットワーク
4WDシステムの採用もあって、本革シートとパノラミックスライディングから成る「レザーエクスクルーシブパッケージ」をオプション装着したテスト車の重量は、ちょうど1.9トンとそれなりの重量級。
しかし、実際にはすでに1800rpmから440Nmの最大トルクを発するエンジンとワイドなレンジをカバーする9速AT、さらにスタータージェネレーターによるトルクサポートのお陰で、動きが緩慢という印象は微塵も受けることはない。
中でも、あくまで黒子的な働き具合でありながらスタータージェネレーターによるアシストパワーは意外に効果的だ。まず、静かでスムーズなアイドリングストップ状態からのエンジン再始動時の挙動が、いかにもプレミアムブランドに相応しいものである。
加えて、「そろそろキックダウンしてしまうのでは」と予想されるシーンでも、高いギアのまま思いのほか力強く速度を回復してくれるなど、違和感に繋がらない範囲で積極的に助っ人役を買って出てくれる感触を得られた場面が多かった。
ただ、兄貴分のEクラスオールテレインが実現させる秀逸な乗り味に、エアサスペンション採用の効果が少なからず表れているはずだと理解する人は、Cクラス オールテレインでその設定がない点に不安と不満を抱くかもしれない。
後編で記したように、確かにベースとなったステーションワゴンと子細に比較すれば、本来の「理想形」として設計されたであろうそちらに対して、オールテレインではより地上高を上げ、より大径で重いタイヤ&ホイールを履くことによる、言ってみれば「好ましからざる影響」が皆無であるとまでは言い切れない。
しかしそうした相対評価を別とすれば、十分に満足のできる動力性能と、こちらもメルセデス・ベンツの作品として大いに納得するに足るフットワークの仕上がりを備えている、というのもまた事実である。
得も言われぬ心地よき安定感と信頼感の高さ
そしてもちろん、現在のところステーションワゴンボディを備えたCクラスでは唯一の4WDシステムの持ち主であることや、対障害角を増したことによって得られる踏破性の高さといった実利面もまた、Cクラスシリーズ内で随一の走りのメリットとして特筆できるということになる。
たとえば、ステアリングホイールに軽く手を添えておくだけで微修正の要もなく、満タン状態で軽く1000kmを超えそうな航続距離を、どこまでも一気に進んで行く気にさえなれそうな高速道路クルージング時の安定感と信頼感の高さは、得も言われぬものだ。
風切り音の小ささに代表される静粛性の高さにも、車高面などで不利なクロスオーバーモデルながらエアロダイナミクスにも十分に配慮して構築されたという仕上がりぶりを実感することができる。
4WDシャシを備えるCクラスのステーションワゴンが欲しいとなれば、現在のところオールテレインが唯一の選択肢となる。
また、たとえば別荘などに向かう未舗装のアプローチ箇所などでベーシックなCクラスを超える悪路踏破性が必要といったユーザーや、本格的なSUVまでの大仰さは不要だがよりタフな雰囲気を放つエクステリアデザインが好ましい、という思考を持つ人に対しても、それらの要望に応えてくれるのがC220d 4マティック オールテレインだ。このモデルが、Cクラスファミリーに興味を抱く人の間口を広げてくれる存在であることは、間違いなさそうだ。(文:河村康彦/写真:村西一海)
メルセデス・ベンツCクラス ラインナップ
オールテレイン)
・C220d 4マティック オールテレイン(2L直4ディーゼルターボ+モーター<ISG>/4WD):769万円
ステーションワゴン)
・C180アバンギャルド(1.5L直4ターボ+モーター<ISG>:625万円
・C200アバンギャルド(1.5L直4ターボ+モーター<ISG>:677万円
・C220dアバンギャルド(2L直4ディーゼルターボ+モーター<ISG>:705万円
セダン)
・C180アバンギャルド(1.5L直4ターボ+モーター<ISG>:599万円
・C200アバンギャルド(1.5L直4ターボ+モーター<ISG>:651万円
・C200 4マティック アバンギャルド(1.5L直4ターボ+モーター<ISG>/4WD:681万円
・C220dアバンギャルド(2L直4ディーゼルターボ+モーター<ISG>:679万円
メルセデス・ベンツC220d 4マティック オールテレイン主要諸元
●全長×全幅×全高:4760×1840×1495mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:1870kg(取材車はOPパノラミックスライディングルーフ装着1900kg)
●エンジン:直4 DOHCディーゼルターボ+モーター(ISG)
●総排気量:1992cc
●最高出力:147kW(200ps)/3600rpm
●最大トルク:440Nm/1800-2800rpm
●モーター最高出力:15kW
●モーター最大トルク:208Nm
●トランスミッション:9速AT
●WLTCモード燃費:17.9km/L
●燃料・タンク容量:66L
●タイヤサイズ:245/45R18
●車両価格(税込):796万円
[ アルバム : メルセデス・ベンツC220d 4マティック オールテレイン はオリジナルサイトでご覧ください ]
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