フェラーリの新型クーペ「ローマ」に、松本葉がイタリアはピエモンテ州のアルバで試乗した。Vol.2では公道を試乗した印象をリポートする。
コクピットはデジタル・ワールド
なぜフェラーリ・ローマのデザインは美しいのか? 公道試乗記Vol.1
走り出す前に整然とした配置に赤を効かせた、これまた美しいエンジンルームを見せてもらい、ダブル・コクピットの室内へ滑り込んだ。
【なぜフェラーリ・ローマのデザインは美しいのか? 公道試乗記Vol.1】
シートは柔らかめで、暖かく迎えられた気分になるが、外観のミニマリズムとは対照的に多くのグラフィックが押し合いへし合い、真っ黒のスクリーンにもぎょっとした。
この気持ちを鎮めるのはクリーム色のレザーとアルカンターラとボディカラーと同色のパイピングの見事な使い分けだろうか。品がいい。操作類は基本的にタッチ式、と、気づかずエンジンスタートの文字をぐーっと抑えたら、いきなりボワンとV8が目覚めて驚いてしまった。もとい。まず、軽く押すと、スクリーンに跳ね馬がホワーンと浮かび、続いて光が入った。ようこそデジタル・ワールドへ。
そして、もう1度タッチすると、V8に火が点く。ボワン!と吠えたあとストンと静かになった。2度寝してしまったかと焦った。
ステアリング裏のバトルを引いて1速に入れ準備完了。それではいよいよ、おなじイタリア産ながら我が愛車(フィアット・パンダ)の3倍の排気量と10倍の馬力と40倍のプライスのローマでツーリングに出かけよう。
GTでは初めてレース、ウェット、コンフォート、スポーツ、ESCオフ、と5つのモードが与えられたかのマネッティーノは、しばらくのあいだウェットに合わせるよう指示を受けた。この辺りはトラクターが多く走り、裏面が削られているため、滑りやすいからだった。
試乗地として選ばれたのはローマではなく、スローフード誕生の地であり、チョコレート・スプレッドの「ヌテラ」とイタリア名産のワイン「バローロ」の故郷にして、秋に白いトリュフが採れるのは世界でもこのあたりだけ、というグルメの地。まさに“ラクジュアリーな田舎”である。
今回はCovid-19 の影響でパッセンジャー・シートの住人不在の単独試乗だった。誰にも見られていない安心感からかっ飛ばすのではなく、風光明媚な道をゆるゆる走った。考えてみたらコクーン・エフェクトと呼ばれる、繭に包まれているようなコクピットは独立型だから、横に人が乗っていたとしても同乗者の存在はあまり感じられないのかもしれない。
かつてのローマ(街の方)だったら助手席に座るのは女性で、ドライバーにしなだれかかることもあっただろう。ローマ(クルマの方)ではそういう淫らな行為をした日には体がツリそうだ。肉体で、ではなく情報で、時間と空間を共有する今の時代を象徴している気がするシート・アレンジメントだった。
“ローマよ、ありがとう”
最初に驚いたのは、見事なぶどう畑とたくさんのヘーゼルナッツの木々に彩られた素晴らしい景色、そしてクルマの静粛性と乗り心地のよさ。「グランツーリングとは何か」をこの3つが語るようだった。
緩やかなカーブが始まる手前でマネッティーノを(スポーツにする勇気はなかったから)コンフォートに変えた。正直なところ卓球に喩えるなら温泉ピンポン並みの腕しか持たない私にウェットとの感触の違いやコンフォートで享受するものを理解することは難しい。それでも運転のしやすさと安定感、クイックにぴたっと決まるステアリング・フィールには感激する。加速感も素晴らしかった。3000rpmあたりで太めに変化するサウンドのトーンも。フェラーリ保有者の女性占有率は5%と聞いたが、ローマはこのクルマを運転したいという意欲さえあれば、女性にも門戸を開いてくれることを確信した。
強く感じたのはブレンボ製セラミックカーボン・ブレーキへの信頼感だ。最初はとくに低速でセンシティブな印象を持ったが、慣れるとその応答の良さ、素早さに魅せられた。
感謝したのは電子制御デバイスたち。カーブの進入時や脱出時に彼らが助けてくれているのは確かであるが、どこでどう手を差し伸べてくれているのかは私にはまったくわからない。ただ感謝あるのみ。みんな、ありがとう。なにより「ローマよ、ありがとう」と私は言いたい。素晴らしい時間をもらった。
と、思ったところで、ふと、こんな欲に駆られた。自分が時を分かち合ったのは着衣を纏ったローマではなかったか。だとすれば素顔のローマを見てみたい。タキシードを脱ぎ捨てた男はどんなふうに加速し、どんな声で吠えるのか。前述の通り、今回の試乗会は感染防止に万全の配慮がはかられていた。
単独試乗もその一環だが、同乗撮影や緊急事態を想定してフェラーリでは、イタリアでもっとも感染防止度の高い医療用マスクを持ち込んだことを偶然小耳に挟んだ。試乗会には操作類のレクチャー担当としてマラネロからテストドライバーが派遣されている。このマスクをつけて彼のドライビングに同乗させてもらうことはできないか? ドライバーの素顔に迫れたらもっといい。
ダメ元で頼んでみることにした。広報部スタッフのあいだでヒソヒソ話が続き、やはり無理なリクエストだったかと諦めかけたとき、吉報が届いた、オッケー!
こうして私はキャリア20年の素晴らしい腕と素晴らしい心の持ち主、フェラーリ社のテストドライバー、ルイージの横に載せてもらうことになったのだった(続く)。
文・松本葉
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