度肝を抜いた走行性能と価格価値
最新の6代目が登場したスバル・インプレッサだが、初代から30年余り、少々ややこしいバリエーション展開が繰り広げられてきた。しかし1992年に登場した初代は、まだシンプル。1994年に発売された英国仕様も、単にインプレッサ 2000ターボだった。
【画像】速さとコスパに度肝! スバル・インプレッサ 初代と2代目 ランエボと最新P25も 全103枚
その頃既に、日本仕様にはWRXとSTiというスポーティな特別仕様が存在していた。ここを掘り下げ始めると、スバル・マニアの領域へ踏み込んでしまう。今回は、そこまでシリアスではない、ベーシックなインプレッサを中心に振り返ってみたい。
その頃AUTOCARに在籍していた筆者は、インプレッサ 2000ターボが長期テスト車へ加わった時の事をはっきり覚えている。以前から関心を抱いていたが、走行性能と価格価値の高さに、度肝を抜いたからだ。
英国仕様のインプレッサ 2000ターボが積んだエンジンは、210psを発揮する2.0L水平対向4気筒。驚くような馬力ではないかもしれないが、車重は1213kgと軽く、四輪駆動システムを装備し、0-100km/h加速を5.8秒でこなした。
当時の価格は、1万8000ポンド以下。それでいて、圧巻の動力性能を秘めていた。ちなみに、当時の欧州でのライバル、ランチア・デルタ・インテグラーレは2万5000ポンド、フォード・エスコート・コスワースでも2万2500ポンドした。
耐久性の高いプラスティック製内装
最近の高性能モデルは、人工的に威勢のいい排気音へチューニングされているが、初代インプレッサは低回転域からドロドロと個性的。3500rpmを超えた辺りから、刺激的なサウンドが放たれる。
多くのアマチュア・ドライバーを受け入れるように、旋回時のライン取りは確実。ただしステアリングは軽く、サスペンションは硬め。連続するタイトコーナーでは、僅かな不安定さも垣間見せた。
プラスティックそのままの内装は、新車当時の評価を下げた部分の1つ。しかし20年以上が経過した今では、耐久性の高さで喜ばせてくれる。リアシートは分割して倒せ、車内空間は見た目以上に広く、実用性も悪くない。
装備は充実し、運転席側のエアバッグとパワーウインドウ、集中ドアロックなどが標準。アルミホイールと大きなフォグライトが、見た目を引き締めた。
インプレッサ 2000ターボは、英国では捌ききれない注文を集め、スバルUKは派生モデルの展開をスタート。手始めに、241psエンジンと16インチのスピードライン・ホイール、レカロ・シートで強化した、シリーズ・マクレーが1995年に登場している。
英国では多数の特別仕様が登場 人気は堅調
1997年には、同じくプロドライブ社が改良を加えた、インプレッサ・カタルーニャが発売される。翌1998年にフェイスリフトを受け、標準のインプレッサでも最高出力は10ps上昇し、ターボラグが短くなった。
その年の後半には、ゴールドのホイールと強化ボディで武装したテルッツォ仕様がリリース。さらに、ワイドな2ドアボディへ280psエンジンを積んだ限定仕様、22B STiが英国にも上陸した。これは、現在では驚くほどの高額で取り引きされている。
1999年には、ラリードライバーのリチャード・バーンズ氏へちなんだ、240psのRB5が登場。最終年式の2000年には、280psの2ドアモデル、P1をプロドライブ社が提供している。今振り返ってみても、初代インプレッサのモデルライフはなんとも華々しい。
英国でも高い人気を築いた初代インプレッサだが、旧車になった現在もそれは変わらない。加えて、当時のライバルよりお手頃でもある。必要な予算は、修理が必要な例で8000ポンド(約151万円)、状態の良い例では1万8500ポンド(約350万円)程度だ。
新車時代のAUTOCARの評価は
ライバルのフォード・エスコート・コスワースや、ランチア・デルタ・インテグラーレほどの訴求力はないかもしれない。それでも、小さなスバルのロケット級な走りには驚かずにいられない。
これまで、1万8000ポンド以下の予算で、エスコート・コスワース水準の動力性能と、洗練された四輪駆動システムのシャシーを手にすることは叶わなかった。インプレッサ 2000ターボが登場する以前は。 (1994年4月6日)
オーナーの意見を聞いてみる
ロン・エブス氏
「5年前に、走行距離5万9500kmの1997年式インプレッサを買いました。これまで殆どガレージで保管されていた車両で、わたしも同様に大切にしています」
「錆びてしまったエグゾースト系は新調し、リアストラット・ブレースバーを追加しましたが、それ以外はオリジナル状態です。ボディにサビはなく、シャシーは引き締まった感じが残っていますよ」
「数年前にタイミングベルトを交換。下回りのコーティングも施しました。ガレージ保管ということもありますが、しっかり手入れすれば、耐久性も高いことを証明していると思います」
購入時に気をつけたいポイント
ボディ
既に30年前のクルマだから、ガレージで風雨を避けてきた例を除いて、ホイールアーチやサイドシルなどにサビが出ていて不思議ではない。日本から輸入された中古車は、比較的サビが少ない例が多い。
深刻になりがちなのが、リア・ストラットタワー部分のサビ。1度完全に切り取って、全体を置換しない限り、本質的な修理にはならない。費用は安くない。
エンジン
定評のあるチューニングガレージ以外で手を加えられたエンジンには、過度のストレスがかかっている可能性がある。酷い場合には、ピストンへ損傷が出ていることも。
ビッグエンド・ベアリングやピストンからの異音がないか、しっかり調べたい。可能なら、圧縮比のチェックもしたいところ。ヘッドカバーやカムカバー・ガスケットからのオイル漏れば、珍しくない症状だ。
トランスミッション
新車の時から、急ぐと変速しにくくなることがあった。特にフェイスリフト前では、シフトレバーの動きに引っかかるような感触を伴う。走行時に5速から抜けてしまう場合は、トランスミッション後端のナットを増し締めすると治る場合がある。
サスペンションとブレーキ、ステアリング
ブレーキキャリパーの固着は珍しくない。サスペンションは、ローダウンされているのが通例。傷んだブッシュ類は、ポリウレタン製への交換で、印象を引き締められる。
大きめのステアリングホイールと相まって、操舵は不自然に軽い。少なくとも、反応は正確で緻密だから、許容の範囲内だろう。
インテリア
プラスティック製の内装は、経年劣化に強い様子。標準仕様の内装部品は、比較的簡単に見つかる。限定モデルの部品は、入手困難と考えたい。
知っておくべきこと
日本から輸入される中古車は、お買い得な例が多いが、英国仕様と異なる部分は多い。エンジンの最高出力のほか、タイヤの空気圧表記やサンバイザー裏の注記ラベルまで、細かな違いは多い。
日本仕様の場合、リアクォーター部分にラジオアンテナが装備され、リアパイパーも備わる。英国仕様のアンテナは、フロントピラー部分。リアワイパーは省かれている。
フェイスリフトの前後を見分ける違いは、ボンネットとフロントバンパー。ただし、見た目の違いは限定的。トランスミッションは、TY752ユニットから強固なケースのTY754ユニットへ置換されている。
英国ではいくら払うべき?
6000ポンド(約113万円)~8999ポンド(約169万円)
ベーシックなインプレッサが、英国では出てくる価格帯。スポーツワゴンとも呼ばれたハッチバックの方が、サルーンより安価。年式より状態を優先して選びたい。
9000ポンド(約170万円)~1万4999ポンド(約283万円)
日本から輸入された中古車が含まれる価格帯。チューニングされた例も多いが、内容はしっかり確かめたい。
1万5000ポンド(約284万円)以上
オリジナル状態が保たれた、状態の良い初代インプレッサをお探しなら、英国ではこの価格帯から。
英国で掘り出し物を発見
スバル・インプレッサ・ターボ RB5 登録:1999年 走行距離:22万2000km 価格:8995ポンド(約169万円)
世界ラリー選手権のドライバーにちなんだ、英国の特別仕様。走行距離は長いが、多くの整備記録とその請求書が残されており、調子は良いようだ。インテリアもオリジナル状態が維持されているという。
通常のインプレッサ・ターボより、BR5は走りが良い。多くの特別仕様より、まだ手頃な価格で売買されているようだ。
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人生で最も後悔した買い物だったな。