新世代群の登場やネーミングの変更など、変革期の途上にあると言っていいマツダ。その流れの中にあって、「デザイン」はマツダ車の根幹をなすものの一つだ。
今回はそんなマツダの主要モデルを10のカテゴリーに分け、国産車の同カテゴリー内のなかで、デザインNo.1に輝くマツダ車はいくつあるのかを検証してみたい。デザインにこだわるマツダだからこそ、そこはシビアに考えたい。
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10カテゴリーでデザインNo.1に選ばれるマツダ車は果たしていくつ? 判定は自動車評論家 清水草一氏。
■カテゴリーとそのカテゴリー内のマツダ車
・Cセグメントハッチバック(マツダ3 ファストバック)
・Cセグメントセダン(マツダ3 セダン)
・コンパクトカー(マツダ2)
・Dセグメントセダン(マツダ6 セダン)
・Dセグメントワゴン(マツダ6 ワゴン)
・コンパクトSUV(CX-3)
・ミドルSUV(CX-5)
・ラージSUV(CX-8)
・クーペタイプSUV(CX-30)
・2ドアクーペ&オープン(ロードスター)
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※本稿は2019年10月のものです
文:清水草一/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年11月10日号
■Cセグメントハッチバック(マツダ3 ファストバック)
このクラスの国産競合車はカローラスポーツ、プリウス、リーフ、シビックハッチバック、インプレッサスポーツなど。マツダ3の美しさは一歩抜けているか?
マツダ マツダ3 ファストバック
* * *
このクラスはぶっちぎりでマツダ3が1位。国産ライバルたちとはレベルが違う。
マツダ マツダ3 ファストバック
ゴルフと比べたって断然上だ。マツダ3の超絶シンプルにしてインプレッシブな造形はすごい。特に低く構えた逆スラント気味のフロントフェイスは超精悍!
サイドのエッジラインを排した、1枚削り出し的なパネル面の造りこみもすさまじいし、それがリアピラーまでつながってるのがまた凄い。
マツダ3のデザインは、現在このCセグメントクラスで世界ナンバーワンだろう。まともに戦えるのはアウディA3くらいじゃないだろうか。
■Cセグメントセダン(マツダ3 セダン)
Cセグメントセダンの注目は新型カローラ。ほかにシビックセダン、インプレッサG4、WRX S4なども存在するが、マツダ3の優位は動かずか?
マツダ マツダ3 セダン
* * *
ファストバックに比べると、ぐっと地味でフツーな感じのマツダ3セダンだけど、相手が国産同クラスであるかぎり、ぶっちぎりの首位の座はゆるがない。
マツダ マツダ3 セダン
大人と子供の戦いって感じで、ライバルと呼べるのは新型カローラだけ! でもやっぱりマツダ3セダンのほうが一枚格上だろうなぁ。
デザインにかける執念みたいなものが違う。マツダ3セダンと戦えるのは、世界を見回してもアウディA3セダンくらいか? セダンだとさすがにアウディが上ですね。
このクラスは、世界的に退潮著しいっていうのもありますし。
■コンパクトカー(マツダ2)
コンパクトクラスは売れ筋の激戦区。各社意欲作が揃っており、ヴィッツ、アクア、フィット、スイフト、イグニスなどがマツダ2のライバルとなる。果たしてカテゴリー内ナンバー1のスタイルは?
マツダ マツダ2(デミオ)
* * *
スズキ イグニス
マツダ2(旧デミオ)は、マツダの現行ラインナップのなかでは一番デザインの完成度が低くて魅力に乏しい。それでも、ほかの国産ライバルたちのレベルが低いので、首位争いには絡んでくる。マツダ2と戦えるデザインは、スズキのスイフトとイグニスのみだろう。
で、熟慮の末、イグニスを1位にしました。イグニスはリアビューの煩雑さが弱点で、絶賛できるほどじゃないけれど、それでも1位。
2位はスイフト、僅差の3位がマツダ2です。マツダ2のデザインは、もっとサイズの大きいクルマ向きで、締まりが足りないんじゃないかと感じます。
■Dセグメントセダン(マツダ6 セダン)
マツダ6(旧アテンザ)セダンもすでに登場から7年。さすがに魅力も薄れたが? 国産競合車はレガシィB4のみだ。
マツダ マツダ6 セダン
* * *
それでも国産セダン勢ではトップ集団にいる。ただ、1位には最ものびのびおおらかなレガシィB4を選びました。
スバル レガシィB4
■Dセグメントワゴン(マツダ6 ワゴン)
国産競合車はレガシィアウトバックのみ。どうなる?
マツダ マツダ6 ワゴン
* * *
このクラスの国産ワゴンはほかにアウトバックのみ。アウトバックはワゴンといってもSUVの要素で魅力的に見えるってこともありますね。でも2台ともデザインレベルは高い。ヨーロピアン対緻密なアメリカンで。
スバル レガシィアウトバック
■コンパクトSUV(CX-3)
激戦中の激戦カテゴリー、コンパクトSUV。CX-3の国産ライバルはヴェゼル、RVR、SX4 Sクロス、ジムニーシエラなどとなるが…。
マツダ CX-3
* * *
商品性抜きで、あくまでデザインだけを比べた話ですが、それにしてもジムニーシエラは超カッコエエ。カッコよさでは他を寄せつけない。完璧に機能に徹しているので誰も太刀打ちできない。
CX-3はぶっちぎりの2番手だな。ほかははるか下界にいる。あくまでデザインだけの話ですけどね。
スズキ ジムニーシエラ
■ミドルSUV(CX-5)
こちらも激戦区のミドルSUVカテゴリー。CX-5の国産ライバルはRAV4、ハリアー、レクサスUXなど多数。ランクルプラドも入る。
マツダ CX-5
* * *
これまた国産勢のなかではぶっちぎりですな……。造形やパネルの質感のレベルが違う。CX-5は本質に訴えている。
マツダ CX-5
バカ売れ中のRAV4あたりとはクラ~スが違う。質感が高すぎて遊びが弱くて息苦しい面もあるでしょうけど。クルマって、デザインの質が高けりゃいいってもんじゃないから。
■ラージSUV(CX-8)
ラージSUVカテゴリー、CX-8の国産ライバルはランクル200、レクサスRX、パジェロなど。
マツダ CX-8
* * *
CX-8もいいんだけど、このクラスだともうちょいゴージャス感も欲しいじゃないですか。RXにはそれがある。
RXはフォルムもいいし、Cピラーの処理が個性的でインプレッシブ。その点CX-8は愚直で、このクラスとしては「道具」って感じになりまする。ランクル系はデザイン番外地。
レクサス RX
■クーペタイプSUV(CX-30)
クーペSUVは今注目のカテゴリー。国産競合車はC-HR、ジューク、エクリプスクロス、XVが挙がる。CX-30はナンバーワンの座を射止められるか?
マツダ CX-30
* * *
デザインの比較と言いながら、スバルXVを選んだのは多少総合的な判断で、このクラスだと、デザインにも気楽さや楽しさが優先されるかなぁという思いがあるのです。
スバル XV
XVって気楽に魅力的なんだよね……。CX-30はマツダ3がベースだけに、デザインの本質ではトップだけど、SUVのデザインとしては首位じゃない。
C-HRのデザインもとっても魅力的でカッコいいし、ジュークだって世界に影響を与えた。このクラスは世界的に大激戦なのですよ。
そんななか、マツダデザインの生真面目すぎるところは弱点だね。
■2ドアクーペ&オープン(ロードスター)
ボディの大きさを問わず、すべての2ドア車をノミネート。スープラ、86/BRZ、フェアレディZ、GT-R、NSXのなかでロードスターはいかに?
マツダ ロードスター
* * *
これは文句なしにロードスターが1位。国産勢はまったくぜんぜん勝負にならない。
マツダ ロードスター
ロードスターとデザインで戦えるのは、アストンマーティンDB11とかポルシェ911とか、そのあたり? ロードスターは神々の戦いに割って入れるだけのタマだと確信しております。
ほかの国産勢は、デザイン以外の部分を総合すると、86/BRZやGT-Rがぐーんと伸びてくるけれど、デザインだけを見たらまったく圏外だ。
ロードスターのデザインは神がかってる。神が降りてきてる。本当に美しいし、魅力的だし、セクシーであります。
■まとめ
マツダのデザインは大変スバラシイ。ただ、デザインの質が高いレベルで揃うと同時に、原理主義的な息苦しさも漂いつつある。あまりにも本質を追うがゆえに緊張が高まり、崩しや遊びの不足が感じられるようになってきた。
いや、崩しや遊びは基礎がしっかりでき上がってこそ生きてくるはずなので、現在のマツダの本質を追う姿勢は正しいと思うのですが、このままひたすら突っ走ってしまうと、「雲上界の退屈」みたいな世界に行ってしまうんじゃないか。その気配はすでに見えている。
アウディのデザインは十数年前に天上界の退屈に到達し、シングルフレームグリルでそれを打ち破ろうとした。マツダにも早晩それが必要になる時がくるでしょう。
願わくば、いまひとつの多様性も期待したいところです。企業規模を考えると難しいかもしれないけど。1台くらい力を抜いてはっちゃけてください!
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