SUBARU(スバル)BRZといえば、同社のコアテクノロジーでもある水平対向エンジンを使ったFRスポーツクーペで、トヨタと共同開発したモデル。すなわちトヨタ86の兄弟車として知られている。
しかし、単にエンブレム違いというわけではなく、それぞれ独自の商品企画で進化するという切磋琢磨しあう兄弟車という関係でもある。
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たとえば、BRZだけの商品ラインナップといえるのが、カスタマイズのベース車とすることを前提とした「Rカスタマイズパッケージ」。スチールホイールにするなど装備を抑えることで税込メーカー希望小売価格243万円という価格を実現している。
その一方でスバルの走りを突き詰め、BRZで表現することも忘れてはいない。そうして生まれたのが「BRZ STI Sport」だ。
すでにレヴォーグにも登場している「STI Sport」は、スバルのモータースポーツ部門でありワークスチューン部門ともいえるSTIのノウハウを活かした量産の最上級スポーティグレードといった位置付け。
パワートレインには手を入れていないが、サスペンションやボディ周りに手を入れることで、ハンドリングでスポーツを表現することを狙っている。
そして、できたてホヤホヤのBRZ STI Sportに乗ることができた。しかも、試乗ステージは、こちらも完成したばかりという同社の美深テストコース(北海道)。
自動運転の技術開発用に作られたハイウェイを模した高速周回路を使って、日本の法定速度を大きく超える高速走行やパイロンスラロームなどを味わうことができたのだ。
外観ではフォグランプ・レスの専用バンパー(もちろんSTI Sportのエンブレム付き)や、18インチアルミホイール(タイヤサイズは215/40R18)などが特徴。基本はGTグレードをベースとしているので、ブレンボの対向ブレーキキャリパーや空力を追求したアルミ製リアスポイラーなどは備わっている。
肝心のハンドリングを鍛えるための専用アイテムとなっているのは、エンジンルームで視認できる「フレキシブルVバー」とクロスメンバーと車体をつなぐ「フレキシブルドロースティフナー」の2つ。いずれもフロント周りに追加された装備だが、前者は「剛性といなし」という相反する要素をバランスさせたもので、後者はステアリング操作に対するリニアリティを増すというのが目的。果たして、その効果はいかほどだろうか。
まず高速道路を模したコースを、メーター読み120km/h以上で走行してみる。ストレートだけでなく高速コーナーにも、そのままの速度で進入しても横Gに負ける感じはなく、しっかりと思ったラインをトレースすることができる。18インチ化されたとはいえタイヤ幅はけっして広くなっていないが、タイヤ自体のグリップが高まっていることが、こうした安定感につながっているのだろう。
そのままブレーキを踏んでいく。ブレンボのブレーキはGTグレード同様にコントロール性重視のキャラクターで、ガツンと効くというよりも、シューンと減速を感じるもの。タイヤに合わせてリセッティングされたスプリング(STI)とダンパー(ZFザックス)は、けっして派手にノーズダイブすることなく、後輪の接地感を失わない。
もっとも変化を感じたのは低速でのステアリングに対する応答性だ。パイロンスラロームは2速で走行するような速度域の設定だったが、振り回してよし、パイロンぎりぎりを狙ってよし、といった具合。ピンポイントで優れたハンドリング性能ではなく、ドライバーファーストの気持ちに寄り添うハンドリング性能を実現しているのが印象的だった。
BRZ STI Sportのメーカー希望小売価格はMTが353万1600円、ATが359万1000円。前述したカスタマイズのベースグレードとは100万円以上高くなっているが、そのハンドリングや装備を考えれば価格差を大きく超える価値を感じるのも、また事実だ。
(文:山本晋也)
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