「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、マツダ ロードスター(3代目)だ。
マツダ ロードスター(2012年:3代目 一部改良)
3代目のNC型ロードスターも登場から早7年(編集部註:2012年)。すでにモデル末期に差しかかっているが、2008年のビッグマイナーチェンジに続いて再び一部改良を受けることとなった。デザイン変更されたフロントバンパーをはじめ、新設計された部分に軽量化の焦点をあてたのだという。
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それでもアクティブボンネットの採用などでトータルでは4.1kg重くなっているが、それがどれぐらい走りに影響があるかは微妙なところ。だが、新たな設計をする時には、最新の素材と技術を持ち置いてキチンと軽量化に取り組むという姿勢が大切なのだと、商品本部主査(編集部註:2012年当時)の山本修弘氏は語る。
アクティブボンネットの増量で、ロールモーメントは大きくなる。それはロールセンターは高い方が外輪への荷重のかかり方が良くなるということであり、今回のわずかな重量増は動きの質にとってはポジティブに捉えることができる。また、人馬一体感を高めるため、感覚性能ともいうべきスロットルとブレーキの特性を改良している。これは、次期モデルのための基礎研究の中から先取りされたものだという。
試乗車はRHT(リトラクタブル ハードトップ)のRS。低速域からサスペンションが抵抗感なくスムーズに動く感覚はソフトトップとは明らかに違って快適だ。日常の足に使ったり、ユッタリとドライブを楽しむのに向いているだろう。
RHTのサスペンションはソフトトップとスプリングレートこそ同一だが、ダンパーの減衰力は半分ぐらいに抑えている。つまり、ストロークやロールの量はほぼ一緒だが、そこに至るまでのスピードは早くなる。これは、サーキットのように激しい走りをしない状況では荷重移動がしやすくかえって乗りやすい。適度なスピードで気持ち良く走ることに向いているのだ。
細やかな改良の成果をワインディングロードで試す
逆に、このセッティングでハードに攻め込んでいくと、ドライバーは荷重移動のコントロールをより繊細に行う必要がある。そこで注目なのが、今回のスロットルとブレーキの戻し側の特性改善だ。
これを初期型のNCと比べると、スロットルの特性にはちょっとした変化が感じられた。初期型では、ある程度アクセルを踏みこんだところでもそれなりに力が出るが、そこから「いざ、全開!」とさらにアクセルを踏み込んでも期待したほど盛り上がりがない。これは普段使いからキビキビ感をもたらす反面、悪く言うと大雑把な感覚でもある。
ところが新型はリニアな特性でコントロールが楽になった。劇的に変わったというほどではないが、リアタイヤのグリップと相談しながらコーナーを立ち上がるようなシーンで、開度の浅いところで極細かいアクセルワークが強いられるのではなく、それなりに踏み込んだところで微調整できるのがいい。アクセルペダルのストローク量が増えたような感覚だ。
一方、ブレーキの戻し側もリニアにされているが、正直なところワインディングロードをそこそこのペースで走った限りでは効果がわかりづらかった。初期型から新型に乗り換えたとしても運転のアジャストが変わるだけで走りは同じ感覚になってくる。ただ、新型の方が無意識に運転しても乗りやすいのは確かだ。
また、サーキットなどでもっとハードなブレーキングを多用する場面ではブレーキの戻り遅れが気になるので効果が大きくなってくるはず。周回を重ねてヒート気味になるとさらに恩恵を感じるかもしれない。
マツダ ロードスター RS RHT<ソフトトップ RS> 主要諸元
●全長×全幅×全高:4020×1720×1255<1245>mm
●ホイールベース:2330mm
●車両重量:1160kg<1120>
●エンジン:直4 DOHC
●総排気量:1998cc
●最高出力:125kW(170ps)/7000rpm
●最大トルク:189Nm(19.3kgm)/5000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・62L
●10・15モード燃費:11.8km/L
●タイヤサイズ:205/45R17
●当時の車両価格(税込):286万円<260万円>
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