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【ヒットの法則387】ボルボV70とライバルを徹底比較、派手さはないが実直な使いやすさがあった

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【ヒットの法則387】ボルボV70とライバルを徹底比較、派手さはないが実直な使いやすさがあった

2007年にフルモデルチェンジされたボルボV70。Motor Magazine誌では特別企画を組んで、その動向に注目している。その企画のなかでは、ライバルとなるBMW5シリーズ/アウディA6/アルファ159をまじえて、実用性、走り味、キャラクターまで含めた総合的な検証も行っているので、ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年12月号より)

ワゴンに求められるもの、それをどう表現しているか
セダンと同等の動力性能を有しながら、いざとなればモノスペースの利を生かして大荷物の輸送も可能なステーションワゴン。そんなマルチな才能と、セダンにはないアクティブな雰囲気が好きで、輸入ワゴン車に乗り始めて10年以上になる。国産のアッパーミドルワゴンは絶滅状態、僕にとってボルボV70はまさにうってつけだった。Dセグメントよりちょっと大ぶりで、ボルボの伝統に則った荷室はスクエアで収納力十分。このブランドが有する安全技術や、ドイツ車とは異なる北欧風の清楚な雰囲気も大きな魅力だった。

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そのV70が新型に移行したわけだが、今回のモデルは明らかに上級クラスを意識している。まず挙げられるのが全長で+105mm、全幅で+85mmと大型化されたボディ。全長4825mm、全幅1890mmはEセグメント入りの資格十分だ。

全高は1545mmで、これも先代から55mmの拡大。ピークはルーフ後方のアンテナのようだが、ルーフレールを廃してなお、これだけハイトが上がったのも、全体の大型化によるものだ。ちなみに、先にドイツで試乗したV70はルーフレールが標準装備だったから、これは日本の駐車場事情に配慮してのことだろう。

また、単にサイズだけではなく、大型セダンのS80からほぼそのまま譲り受けたコクピットを中心とするインテリアは、質感が先代からひとクラス以上向上した感じ。エンジンも3.2L NA/3Lターボの2タイプを新世代の直列6気筒で揃えるなど、2.5Lの5気筒ターボを上限としていた先代から確実にアップグレードしている。

つまりサイズだけでなく内容も、もはやドイツのEセグメントプレミアムワゴンと肩を並べるのだ。今回はこの上級志向を強めた大型ワゴンのV70を、ライバルと想定されるモデル3台と共に試乗へ連れ出した。

Eセグメントの代表として登場願ったのは、BMW5シリーズ ツーリングとアウディA6アバント。本来ならEクラスワゴンも連れて行きたかったが、今回は都合がつかず欠席。だがこれもクラスを代表する1台だから常に念頭に置いて話を進めよう。

さらに、D/Eセグメントの狭間と言う微妙な立場にいるV70の同族として、アルファロメオのアルファ159スポーツワゴンも同行する。

この中から性格もサイズ面でも独自性を見せているのが、アルファ159スポーツワゴンだ。156の後継車種としてクラス的にやや上級を狙って登場した経緯はV70と似るが、サイズアップはさほど顕著ではなく、今もDセグメントプラスの範囲にある。それに何より「アルファロメオの手に掛かると、ワゴンでもここまでやってしまうか」と思わせるほど159はワゴンっぽくない。

ルーフエンドをあまり後方まで引き延ばさず、リアクオーターウインドウも小ぶりにまとめたスタイリングは、ワゴンというよりも5ドアハッチバック的だ。そのわりにラゲッジスペースは意外に大きく取れている。フロアが低く屋根からの荷室高に余裕があり、奥行きも長いのだ。

ただしリアゲート開口部が小さいのはスタイリング上、いかんともし難く、ローディングハイト(地上からゲート間口までの高さ)は4車中最も高く、かつ開口部とフロアの段差も大きい。それに何より、ワゴンの決まりごととも言うべきリアゲートのドアハンドルも、アルファ159スポーツワゴンは備えていない。

アルファ159スポーツワゴンを除く他の3台は、いずれもEセグメントと称して不足のない豊かなサイズのボディとなっている。ラゲッジルームの大きさも各車若干の違いはあるものの、実用ワゴンとして十分に通用する広さがある。

V70は元々ユーティリティに定評があったが、新型はサイズアップに伴い荷室容積をさらに55Lも拡大してきた。しかしEセグメントとなるとこの余裕を持ってしても安穏としてはいられない。特にA6アバントはこのセグメント最大級のボディサイズを生かして、ラゲッジフロア長で他を圧倒している。一方の5シリーズは、後端を絞り込まなかったことが幸いして、ゲートの開口面積に余裕があるという具合に、各車広さに関しては一長一短なのだ。

そんな中でV70の特色と言えるのは、フロアの縦横方向に相応の余裕がある上、形状がスクエアでデッドスペースが少ないことだ。ドイツ勢は、いずれも荷室内をスッキリと見せるために側壁をタイヤハウスの張り出しに合わせてフラットトリム化することが多い。これは確かにスマートだが、積載性にはけっこう影響を与える。Eクラスのステーションワゴンなどは、ゲートの開口間口より側壁トリムが内側に張り出しているほどだし、A6アバントも5シリーズ ツーリングもこれほどではないにせよ、同様の傾向が見受けられた。

その点、V70は有効面積が広く寸法以上に多くの物が収納できる。しかも新型はリアシートを40:20:40の3分割式としており、乗員と荷物の量/形状によって、荷室形状をフレキシブルに変えることができる。これは、ワゴンのパワーユーザーにとって大きな魅力だ。

どれほど洗練されているか、実用性だけが魅力ではない
とは言え、僕のようにワゴンにそこまでの実用性を求めるのは、もはや少数派だろう。特に最近のEセグメントワゴンは、積んでナンボの実用性よりも、どれだけ簡便に、かつスマートに使えるかが重要なテーマなのだ。例えばトノカバーだが、5シリーズ ツーリングには電動式リアゲートの開閉に呼応して自動で巻き取りと展開を行うパワー式が、電動リアゲートとのセットオプションで用意されているし、Eクラス ステーションワゴンは、同様の機構を全車が標準装備する。また電動開閉式リアゲートは、A6アバントはオプション設定、V70は全車標準装備となる。さらに5シリーズ ツーリングは、ガラスハッチゲートまで備えている。

また、ラゲッジルーム内に荷物を固定するアタッチメント類に関しても、各車積極的に展開中であり、V70もご多分に漏れず、この種の機構をかなり充実させてきた。

では、走りのキャラクターはどうだろう。アルファロメオはクイックなステアリングと情緒面に強く訴えかけるエンジンフィールなど、何かと個性が際立っている。やたらに高回転を維持したがるATも含め、快活に走らせることを主眼としたその成り立ちは、スポーティなルックスと見事なほど整合性が取れている。

BMWも趣きは異なるが、やはり走りを楽しむクルマだ。今回の試乗車はアクティブステアリングを備える550iで、パワーとキビキビ感がことさらに強調されていたが、本来はしっとりとした身のこなしと共に、正確なフットワークを堪能できるクルマである。こうした個性はV8モデルより、直6の525iや530iでより顕著となる。またこれらでは、BMWの優れた持ち味である官能的な直列6気筒エンジンのフィールも、心ゆくまで堪能できる。

A6アバントは、2.4のFFモデル以外は4WDとなるので、クワトロシステムによる路面を選ばぬ安定性も大きな武器だ。そのサイズや車格から想像される以上にステアリングのタッチは軽く、ハンドリングもキビキビとしている。クルマの成り立ちとしては本来アンダーステアが強いはずで、追い込むとそうした側面が顔を出すあたりは若干気になるが、常用域でキビキビと軽快な味わいは、それはそれで魅力。さらに、最新の2.8FSIエンジンは下からトルクフルで、かつ高回転の伸びも良く、6速ATとのコンビネーションをかなり深く楽しめた。

進化させるべき方向をしっかりと見据える力
このように、走りのキャラクターが立った3車に較べると、V70は意外に薄味だ。ステアリングは相変わらずどっしりとしており敏感さとはほど遠いし、3.2Lの直6NAエンジンは低速域のトルクがしっかり出ており扱いやすいものの、高回転域での伸びやパンチは意外に控えめ。スプリンター的な走りよりもロングラン時のストレス低減に重きを置いたそのキャラクターは、Eクラス ステーションワゴンに近い性格と言っても良いのかも知れない。

ボルボは、元々スポーティさやパワフルさで押すキャラクターのブランドではない。それよりもどっしりと重厚な乗り心地や、鷹揚だが外乱に強いしたたかな走りが魅力だった。そしてそれは、冬に路面状況が厳しくなる北欧の環境と無関係ではないはずである。

新型V70はこうした基本を守りながら、実は相当に洗練されている。ステアリングフィールは曖昧さが消えて格段にソリッドな感触になっているし、舵を入れたときの反応も軽快さを増した。それに何より、コーナリング中に起きる4輪の接地荷重の変化がつかみやすくなっている。

これらは、新型プラットフォームの高い剛性によるもので、スポーティさを基軸とするライバル達と較べると派手さは薄いものの、ボルボもキチンと進化しているのだ。

このことは3LターボのT-6に乗るとより明確にわかる。過給により増したパワーを、この車体は余裕でこなしている。ダンピングを3モードに切り替える「FOUR-C」スイッチを、もっともハードなアドバンスドモードにセットしても乗り心地は許容レベルにあるし、このモードでの旋回姿勢はフラットで、かなり思い切った走りもこなす。

とは言え、ボルボの基本はやはり、乗る人を低ストレスで優しく移動させるところに尽きる。その意味では、居住性と積載性をよりいっそう向上させ、インテリアの質感も格段に上がって快適性を増した新型V70は、進む道にブレのない正常進化型だ。

相応に上がった価格や、サイズアップによる取り回しなど気になる要素もなくはないが、自らが持つ魅力を十分にわきまえた新型移行は、再び国内ベストセラーワゴンの地位を盤石にしたと思う。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2007年12月号より)



ボルボV70 T-6 TE AWD 主要諸元
●全長×全幅×全高:4825×1890×1545mm
●ホイールベース:2815mm
●車両重量:1900kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●排気量:2953cc
●最高出力:285ps/5600rpm
●最大トルク:400Nm/1500-4800rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:750万円(2007年)

BMW 550iツーリングM-Sportパッケージ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4855×1845×1475m
●ホイールベース:2885mm
●車両重量:1920kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4798cc
●最高出力:367ps/6300rpm
●最大トルク:490Nm/3400rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:1044万5000円(2007年)

アウディA6アバント 2.8FSI クワトロ エアサスペンション装着車 主要諸元
●全長×全幅×全高:4935×1855×1475mm
●ホイールベース:2845mm
●車両重量:1860kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2772cc
●最高出力:210ps/5500-6800rpm
●最大トルク:280Nm/3000-5000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:686万円(2007年)

アルファロメオ アルファ159スポーツワゴン 3.2JTS Q4 Qトロニック ディスティンクティブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1830×1465mm
●ホイールベース:2705mm
●車両重量:1830kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3195cc
●最高出力:260ps/6300rpm
●最大トルク:322Nm/4500rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:600万円(2007年)

[ アルバム : ボルボV70とD/Eセグメントのライバル はオリジナルサイトでご覧ください ]

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